日本経済を殲滅せよ/エドワード・ミラー著/金子宣子/新潮社/2010
日米改正直前のアメリカ政府、特に対日強硬派の動きについて、公開資料を読み解きまとめた、この時代の歴史書としては、あの「裏切られた自由」に続く名著。
この本の凄さは、著者の歴史家としての調査分析力だけではない。翻訳者の翻訳力そして歴史洞察力もなかなかなのだ。
翻訳書というと、日本語訳がこなれていない、読みにくいものが続出しているが、本書はそんなことはない。まえがき、あとがき、訳者あとがきから読み始め、後は細部に移行。
ルーズベルトは操られていた狂人とされているが、戦争モデルとして経済金融戦争を前提とする南北戦争モデルの積み重ねがあり、対日参戦を前提とするオレンジ計画がアメリカ海軍にて策定され、日本の経済的弱点を品目別に調べ上げ、そのそれぞれについて執拗な報復的処置をくり返す。当時のアメリカ財務省は、国際常識をわきまえない狂った組織としか言いようがない。
おかしいのはハルノートだけではないことが、この本を読めばわかる。アメリカ政府全体で、日本に対し経済戦争を仕掛けた証拠がこの本に書かれていると言っても過言ではない。
その点において、この本は、日本の近現代史研究者が読み、参照すべき本であると思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます