北京オリンピックに初出場して、個人総合で
いきなり銀メダルを獲得した時、
内村航平はまだ寡黙だったように思う。
というより、自分の演技に対して、饒舌ではなかったし
訥々としていた。
ずっと、常に見つづけていたわけではないから、
それが正しい認識ではないかもしれないが、
テレビで見る内村航平の印象はそのようなものであった。
内村が自分の技について、競技について、饒舌になったのは
最近のことと感じる。
特にリオオリンピックで2連覇してから、
或いはプロになってからであろうか。
責任というものを感じるようになってからであろうか。
内村の中で何かが変わったような気がした。
彼は発言でも積極的に自己を主張し始めた。
北京の時のような、黙々と自分の演技のみに集中している
印象は変わった。
個人総合という種目に専念して、
そこに選手生命を懸けるようになって、プライドを隠さないようになり、
それからは、言語でもはっきりと自己を語るようになった。
ベテランとなり、経験がそうさせたということもあるだろう。
羽生結弦は国別対抗戦の時、自己紹介として、
憧れの選手を内村航平とした。
羽生はきっとすべての内村の試合を見ているだろう。
内村のドキュメントすら見ていたほどだ。
内村の発言もチェックしているはずだ。
互いに意識し合っていることは確かだろう。
スポニチの記事に、内村航平と羽生を絡めた記事が出た。
もう滅多に泣くことなどなくなっていた、
感情も乏しくなって来た自分が、
図らずもその記事に目頭が熱くなる思いがした。
内村氏の羽生へのエールが…とても、とても
温かかったからである…
その全文

スポニチ
https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2021/04/21/kiji/20210421s00049000390000c.html
H難度習得、内村航平の「言と知と」
4回転半に挑む羽生結弦のヒントになるか
[ 2021年4月21日 17:00 ]
上下の軸で横に回る。体操では「ひねり」となり、
フィギュアスケートではジャンプなどの「回転」となる。
体操で現在、「ひねり」の回数がもっとも多いのは、
床運動で白井健三(日体大助教)の名がつく、
「シライ/ニュエン」(後方伸身宙返り4回ひねり)。
フィギュア男子で五輪連覇の羽生結弦(ANA)が成功を目指している
クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)は、
単純な回転数では体操界の上をいく。
内村航平(ジョイカル)は、フィギュアの超大技をこう表現した。
「体操より、ひねってますから。4回転半ですからね。
ありえないっすよね」
個人的に気になっていた羽生の言葉がある。
3月28日、世界選手権を終えた後のオンライン取材。
「アクセルを練習していく中で『ああ、跳べないな』とか
絶望感を味わった時に、どうやって乗り越えていくか。
どうやって自分に頑張っているっていう報酬を与えてあげるか」。
4回転半に挑み続けるであろう、オフを見据えてのコメントだった。
五輪連覇の個人総合ではなく、
鉄棒に専念して東京五輪の金メダルを狙う内村は、
30歳を過ぎてH難度「ブレトシュナイダー」を習得した。
その過程は、いばらの道だったのではないか。
そう思ったから、先の羽生の言葉を内村に伝えた上で、聞いた。
「思い通りにいかない時、どうやって乗り越えたのか」と。
腕を組んで少し考えた内村は、
「できない方が面白いんすよね、自分」と話した。
「欲しいものがあって実際に買ったら
『う~ん』ってなることってあるじゃないですか。
買うまでが楽しい、みたいな」。
長いキャリアの中で、
試合で投入すると想定よりも魅力に欠けた技があったのだろう。
では、執念を燃やした「ブレトシュナイダー」はどうか。
「ブレトシュナイダーはできるようになったら、
めっちゃ嬉しかったですよ。うん、めっちゃ嬉しかったな」。
欲しいものをゲットし、気に入って手放さない。
そんな子供のような、無邪気な笑みがそこにはあった。
これは羽生へのアドバイスではない、
と個人的には感じている。
かつて内村は羽生について、
「こうした方がいい、とかは思わない」と話していた。
シンプルに自らが経験して学んだこと、知っていることを口にするのみ。
自身のコメントが羽生に伝わったとしても、その解釈は羽生に委ねる。
何かのヒントになればいいし、ならなければ、それもまたいい。
そのスタンスは、リスペクトと同義だろう。
内村から、何か言えることがあるとすれば。
「ケガには気をつけてほしい。やっぱり調子が悪かったりすると、
早く足も降りちゃうと思うので」とした上で、こう続けた。
「羽生君なら、僕はできると思っている。
成功したら、めっちゃ見てみたい」
4月。内村は「ブレトシュナイダー」を決めた全日本選手権で
高得点を連発し、東京五輪代表選考を好発進した。
羽生は世界国別対抗戦でシーズンを締めくくり、
4回転半の実戦投入を見据えて、また汗を流す。
それぞれの究極の目標へ。
「夏の王」と「冬の王」の情熱は交錯しながら、季節は巡っていく。
(杉本 亮輔)
---------------------


「ケガには気をつけてほしい。やっぱり調子が悪かったりすると、
早く足も降りちゃうと思うので」
という、まず健康に気をつけて欲しいという優しいアドバイスも温かい。
「羽生君なら、僕はできると思っている。
成功したら、めっちゃ見てみたい」
羽生君なら、僕はできると思っている。…
これは内村航平が言うからこそ、説得力がある。
内村氏も羽生の試合を、演技を、おそらく見ているのだろう。
二人は互いにどこか共鳴する部分があるのだろう。
いや、部分というより、もっと多くの面で
「似ている」のに違いない。
この記事を取材した杉本亮輔という人も、
ふたりに共通点を見ているからこそ、内村に尋ねたに違いない。
「夏の王」と「冬の王」…
誰が始めに名付けたものか、いつの間にか浸透して来たこの名称、
採点競技という、
不利な世界で前人未到の技の成功に執念を燃やす「冬の王」に
内村のエールが届くことを願って止まない。
内村のH難度技の成功が、羽生により一層奮起する、
前へ進む材料になってくれることを願って止まない。
画像
TVガイド特別編集 KISS&CRY
氷上の美しき勇者たち
国別対抗戦2021&世界選手権2021総力特集号~Road To GOLD!!!
(仮) (表紙・巻頭特集/羽生結弦選手) (KISS & CRYシリーズVol.38)
2021年05月17日
¥1,540
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いきなり銀メダルを獲得した時、
内村航平はまだ寡黙だったように思う。
というより、自分の演技に対して、饒舌ではなかったし
訥々としていた。
ずっと、常に見つづけていたわけではないから、
それが正しい認識ではないかもしれないが、
テレビで見る内村航平の印象はそのようなものであった。
内村が自分の技について、競技について、饒舌になったのは
最近のことと感じる。
特にリオオリンピックで2連覇してから、
或いはプロになってからであろうか。
責任というものを感じるようになってからであろうか。
内村の中で何かが変わったような気がした。
彼は発言でも積極的に自己を主張し始めた。
北京の時のような、黙々と自分の演技のみに集中している
印象は変わった。
個人総合という種目に専念して、
そこに選手生命を懸けるようになって、プライドを隠さないようになり、
それからは、言語でもはっきりと自己を語るようになった。
ベテランとなり、経験がそうさせたということもあるだろう。
羽生結弦は国別対抗戦の時、自己紹介として、
憧れの選手を内村航平とした。
羽生はきっとすべての内村の試合を見ているだろう。
内村のドキュメントすら見ていたほどだ。
内村の発言もチェックしているはずだ。
互いに意識し合っていることは確かだろう。
スポニチの記事に、内村航平と羽生を絡めた記事が出た。
もう滅多に泣くことなどなくなっていた、
感情も乏しくなって来た自分が、
図らずもその記事に目頭が熱くなる思いがした。
内村氏の羽生へのエールが…とても、とても
温かかったからである…
その全文

スポニチ
https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2021/04/21/kiji/20210421s00049000390000c.html
H難度習得、内村航平の「言と知と」
4回転半に挑む羽生結弦のヒントになるか
[ 2021年4月21日 17:00 ]
上下の軸で横に回る。体操では「ひねり」となり、
フィギュアスケートではジャンプなどの「回転」となる。
体操で現在、「ひねり」の回数がもっとも多いのは、
床運動で白井健三(日体大助教)の名がつく、
「シライ/ニュエン」(後方伸身宙返り4回ひねり)。
フィギュア男子で五輪連覇の羽生結弦(ANA)が成功を目指している
クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)は、
単純な回転数では体操界の上をいく。
内村航平(ジョイカル)は、フィギュアの超大技をこう表現した。
「体操より、ひねってますから。4回転半ですからね。
ありえないっすよね」
個人的に気になっていた羽生の言葉がある。
3月28日、世界選手権を終えた後のオンライン取材。
「アクセルを練習していく中で『ああ、跳べないな』とか
絶望感を味わった時に、どうやって乗り越えていくか。
どうやって自分に頑張っているっていう報酬を与えてあげるか」。
4回転半に挑み続けるであろう、オフを見据えてのコメントだった。
五輪連覇の個人総合ではなく、
鉄棒に専念して東京五輪の金メダルを狙う内村は、
30歳を過ぎてH難度「ブレトシュナイダー」を習得した。
その過程は、いばらの道だったのではないか。
そう思ったから、先の羽生の言葉を内村に伝えた上で、聞いた。
「思い通りにいかない時、どうやって乗り越えたのか」と。
腕を組んで少し考えた内村は、
「できない方が面白いんすよね、自分」と話した。
「欲しいものがあって実際に買ったら
『う~ん』ってなることってあるじゃないですか。
買うまでが楽しい、みたいな」。
長いキャリアの中で、
試合で投入すると想定よりも魅力に欠けた技があったのだろう。
では、執念を燃やした「ブレトシュナイダー」はどうか。
「ブレトシュナイダーはできるようになったら、
めっちゃ嬉しかったですよ。うん、めっちゃ嬉しかったな」。
欲しいものをゲットし、気に入って手放さない。
そんな子供のような、無邪気な笑みがそこにはあった。
これは羽生へのアドバイスではない、
と個人的には感じている。
かつて内村は羽生について、
「こうした方がいい、とかは思わない」と話していた。
シンプルに自らが経験して学んだこと、知っていることを口にするのみ。
自身のコメントが羽生に伝わったとしても、その解釈は羽生に委ねる。
何かのヒントになればいいし、ならなければ、それもまたいい。
そのスタンスは、リスペクトと同義だろう。
内村から、何か言えることがあるとすれば。
「ケガには気をつけてほしい。やっぱり調子が悪かったりすると、
早く足も降りちゃうと思うので」とした上で、こう続けた。
「羽生君なら、僕はできると思っている。
成功したら、めっちゃ見てみたい」
4月。内村は「ブレトシュナイダー」を決めた全日本選手権で
高得点を連発し、東京五輪代表選考を好発進した。
羽生は世界国別対抗戦でシーズンを締めくくり、
4回転半の実戦投入を見据えて、また汗を流す。
それぞれの究極の目標へ。
「夏の王」と「冬の王」の情熱は交錯しながら、季節は巡っていく。
(杉本 亮輔)
---------------------


「ケガには気をつけてほしい。やっぱり調子が悪かったりすると、
早く足も降りちゃうと思うので」
という、まず健康に気をつけて欲しいという優しいアドバイスも温かい。
「羽生君なら、僕はできると思っている。
成功したら、めっちゃ見てみたい」
羽生君なら、僕はできると思っている。…
これは内村航平が言うからこそ、説得力がある。
内村氏も羽生の試合を、演技を、おそらく見ているのだろう。
二人は互いにどこか共鳴する部分があるのだろう。
いや、部分というより、もっと多くの面で
「似ている」のに違いない。
この記事を取材した杉本亮輔という人も、
ふたりに共通点を見ているからこそ、内村に尋ねたに違いない。
「夏の王」と「冬の王」…
誰が始めに名付けたものか、いつの間にか浸透して来たこの名称、
採点競技という、
不利な世界で前人未到の技の成功に執念を燃やす「冬の王」に
内村のエールが届くことを願って止まない。
内村のH難度技の成功が、羽生により一層奮起する、
前へ進む材料になってくれることを願って止まない。
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