『nursery』
11. 日本は『一億総活躍社会』を実現する。
⇒ 安倍首相のスローガンの一つである。
ではいつものように考える。
『一億総~』とは何か? 戦争の時は玉砕(!?)やら、テレビ全盛となってきて『一億総白痴化』と評論家の故・大宅壮一氏が言ったりした『一億総~』であるが、要するに『全員、みんな』ということなので、everyone である。もしくは all ~ 等である。
では『活躍』とはどういうことか。
ネットの翻訳では 『一億総活躍社会』は one hundred million people active society と出た。 面白い。『活躍』は active である。そうなのだが、いまひとつ大事なところが伝わらない。
こういうキャッチフレーズは、内容が深いので、よく考えないと良い英訳は出ない。やはり言ったご本人のつもりになって考えるのがよい。安倍首相のつもりになって『一億総活躍社会』を考えてみよう。
なぜ『一億総活躍社会』という政策を打ち出す必要があるのか。
アベノミクスという観点から見ると、経済成長が最優先課題である。しかし一方で日本の現状はというと、高齢化社会の到来である。出生率は低い。ということは労働力が乏しいということになる。労働力は経済成長の要であろう。乏しい労働力でどうやって経済成長を実現するのか。厳しいものがある。労働力をいかにして確保するか。そのために『一億総活躍社会』という発想になる。パートの扶養控除(103万円の壁)も廃止の方向で政府で検討されたり、これなども育児中のお母さんであれ、どんどん働いてもらうという動きだろう。退職年齢も引き上げ、シニアにもより長く働いてもらう。要は、みんな残らず働いてもらう、というのが『一億総活躍社会』であろう。Everybody, Dance Now! という歌をもじって、
・Everybody, Work Now! なんて英訳もありだろうか。意味的にはそういうこと。
さらに考える。
『一億総』とはどういうことか。少数だけではない。一部だけの話ではなく、全員が関わる問題である。『一億総』ということで、全員の参加を促している。オリンピックなどでは、普段スポーツを観ない人でも、その時はどのスポーツであれ、日の丸を背負った選手に熱い声援を送る。一丸となって応援をする時、実際の競技をする選手と声援を送る観客は共に一体となって戦う。選手のみならず、応援する一人ひとりがチームの一員である。
『一億総活躍社会』とは、一人一人が決して傍観者としてではなく、選手として戦え、というメッセージを含んでいる。言い換えれば『チームJapan』ということである。全員の力を結集しなければ戦いに勝利することはできない。
アメリカの大統領候補であるヒラリークリントンさんの著書に It takes a village. というのがある。 元々アフリカのことわざで、 It takes a village to raise a child. というのがあり、親が単独で育てるのではなく、育児は村全体で行う、要するに教育はみんなで行う、という意味。この take は 必要であるという意味。 村全体が必要だ、ということ。これを応用して
・It takes everyone. (みんなの力が必要だ) などどうだろうか。
・Japan is a team. It takes everyone to win. (日本はチームだ。勝つにはみんなの力がいる)
チーム全体の勝利のために、個々の選手が努力する必要がある。member や player を用いて
・Japan is a team. You are a team member.
・Japan is a team, and you are the player.
・Japan is a team. Everyone is the player. (日本は1つのチーム。一人ひとりがプレーヤー)
・Japan is a team. You are a part of the team. (君はチームの一員だ)
私がやらなくても誰かがやるだろう。他人任せの社会からは真のダイナミズム(活力)は失われる。
アメリカ合衆国第35代大統領である、暗殺されたジョン・F・ケネディー(John Fitzgerald Kennedy)は就任演説で次のような言葉を残している。
My fellow Americans, ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.
(みなさん、国がみなさんに何をしてくれるかを期待するのではなく、皆さん一人ひとりが国のために何ができるかを問うてください)
恐らく『一億総活躍社会』と、停滞した当時のアメリカ社会に活力を取り戻すきっかけとなったケネディーの熱い想いは、言葉は違えど意味するところ、向かう方向は同じであろう。
全員が活躍する社会。活躍するとは、単に働くということではない。国に頼まれなくても貧乏なら家族全員働く。単純に全員働く、というなら共産主義なら、向き不向き関係なく一律全員働くことになっているだろう。活躍とは単純に働くというのでもない。それぞれに持って生まれた性格や能力を生かして社会に貢献することである。ちなみに、天職という言葉がある。英語で vocation という。語源的には 声の voice と同じ語源である。 天職とは 天の声(voice)により決まる、というところからできた言葉である。
見た目も華やか、才能を生かしてバリバリ働くことだけが『活躍』ではない。目立たないが大事な仕事がある。縁の下の力持ち、内助の功。育児や介護なども極めて大事な仕事である。見えない仕事の方が往々にして大事である。目立たなくても、それぞれの役割をしっかり果たすことは立派に『活躍』することである。自分を見つめ、自分の役割を認識することで真に『活躍』することができる。『役割』をロールプレイなどの role を使い、
・What is your role?
・Find your role.
・Everyone has a role.
・Everyone has a role to play.
・Play your role.
・Play your part.
・Each one of you has an important role to play.
『活躍』をするためには、自分に問う必要がある。自分は何のためにこの世に生を享けたか。言い換えれば自分の使命を問うことである。使命はミッション mission である。
・What is your mission?
・Find your mission.
・Everyone has a mission. (誰しも使命がある)
・Fulfill your mission. (使命を果たす)
家出のドリッピー( Drippy. The Runaway Raindrop)というストーリーがある。英語教材の アカデミー出版が出しているもので、シドニーシェルダンが書いたもの。ナレーションは重低音で渋い声のオーソンウェルズ。私が子供の時分、英語が好きな父親から、日々の義務としてDrippy の朗読をすることを課せられた。かつての寺子屋で行われた、論語等の音読と同じように、意味も分からず、ひたすらオーソンウェルズの声を『シャドイング』をさせられていた時期があった。それはさておき、Drippy とは主人公の雨だれの名前。子供のドリッピーはある時、家出をする。蝶々、蜂、鳥、蟻など色々な生き物と出会い、命も狙われながらも、興味の赴くままに風に乗って世界を旅をする。その中で、ドリッピーと蜜蜂とのやりとりがある。
She had some honey with her and she gave Drippy a tiny taste.
"That's delicious! Will you show me how to make honey?"
"Only bees can make honey. You see, everything is put on this earth for a special purpose. Each one has his own job to do."
"What's my job?"
"Oh, don't you know, little raindrop?"
"No."
"You have a very important job. Without you, there would be no life on this earth."
親切な蜜蜂はドリッピーに蜂蜜の味見をさせてあげる。あまりにおいしいので、ドリッピーは自分で作りたくなる。しかしミツを作るのは蜜蜂である。
Everything is put on this earth for a special purpose. (誰でもみんな理由があってこの世に生まれてきた)
Each one has his own job to do. (それぞれみんな、やるべきことがあるのよ)
You have a very important job. Without you, there would be no life on this earth. (あなたには大事な仕事があるのですよ。あなた(水)がいなかったら、誰も生きていけないんだから)
こうやって、元が水である雨だれのドリッピーは自分の存在意義への自覚が促される。
存在意義。存在理由。フランス語でレゾンデートル (raison d'être )。
Each one has his own job to do.
一億総活躍社会とは、各々が自分に与えられた使命、役割を認識することから始まる。
・Each one has his or her own job to do. (みんなやるべき事がある)
『一億総活躍社会』とは非常に考えされられるテーマである。文脈により英語も色々あるだろう。そしてそれだけ考えるに値する言葉でもある。一億総活躍社会とは、考えると、ほぼ理想郷に近いものがある。本当に一人ひとりが自分の本質に目覚め、本当の能力に気づき、自分の役割を認める時、それは個人にとっても社会にとっても本当に幸せな状態であろう。
考えは尽きない。きりがないのでこの辺で。
各々英訳ならびに『一億総活躍社会』とは何か、その本質的意味の考察を深められたい。
以上。
11. 日本は『一億総活躍社会』を実現する。
⇒ 安倍首相のスローガンの一つである。
ではいつものように考える。
『一億総~』とは何か? 戦争の時は玉砕(!?)やら、テレビ全盛となってきて『一億総白痴化』と評論家の故・大宅壮一氏が言ったりした『一億総~』であるが、要するに『全員、みんな』ということなので、everyone である。もしくは all ~ 等である。
では『活躍』とはどういうことか。
ネットの翻訳では 『一億総活躍社会』は one hundred million people active society と出た。 面白い。『活躍』は active である。そうなのだが、いまひとつ大事なところが伝わらない。
こういうキャッチフレーズは、内容が深いので、よく考えないと良い英訳は出ない。やはり言ったご本人のつもりになって考えるのがよい。安倍首相のつもりになって『一億総活躍社会』を考えてみよう。
なぜ『一億総活躍社会』という政策を打ち出す必要があるのか。
アベノミクスという観点から見ると、経済成長が最優先課題である。しかし一方で日本の現状はというと、高齢化社会の到来である。出生率は低い。ということは労働力が乏しいということになる。労働力は経済成長の要であろう。乏しい労働力でどうやって経済成長を実現するのか。厳しいものがある。労働力をいかにして確保するか。そのために『一億総活躍社会』という発想になる。パートの扶養控除(103万円の壁)も廃止の方向で政府で検討されたり、これなども育児中のお母さんであれ、どんどん働いてもらうという動きだろう。退職年齢も引き上げ、シニアにもより長く働いてもらう。要は、みんな残らず働いてもらう、というのが『一億総活躍社会』であろう。Everybody, Dance Now! という歌をもじって、
・Everybody, Work Now! なんて英訳もありだろうか。意味的にはそういうこと。
さらに考える。
『一億総』とはどういうことか。少数だけではない。一部だけの話ではなく、全員が関わる問題である。『一億総』ということで、全員の参加を促している。オリンピックなどでは、普段スポーツを観ない人でも、その時はどのスポーツであれ、日の丸を背負った選手に熱い声援を送る。一丸となって応援をする時、実際の競技をする選手と声援を送る観客は共に一体となって戦う。選手のみならず、応援する一人ひとりがチームの一員である。
『一億総活躍社会』とは、一人一人が決して傍観者としてではなく、選手として戦え、というメッセージを含んでいる。言い換えれば『チームJapan』ということである。全員の力を結集しなければ戦いに勝利することはできない。
アメリカの大統領候補であるヒラリークリントンさんの著書に It takes a village. というのがある。 元々アフリカのことわざで、 It takes a village to raise a child. というのがあり、親が単独で育てるのではなく、育児は村全体で行う、要するに教育はみんなで行う、という意味。この take は 必要であるという意味。 村全体が必要だ、ということ。これを応用して
・It takes everyone. (みんなの力が必要だ) などどうだろうか。
・Japan is a team. It takes everyone to win. (日本はチームだ。勝つにはみんなの力がいる)
チーム全体の勝利のために、個々の選手が努力する必要がある。member や player を用いて
・Japan is a team. You are a team member.
・Japan is a team, and you are the player.
・Japan is a team. Everyone is the player. (日本は1つのチーム。一人ひとりがプレーヤー)
・Japan is a team. You are a part of the team. (君はチームの一員だ)
私がやらなくても誰かがやるだろう。他人任せの社会からは真のダイナミズム(活力)は失われる。
アメリカ合衆国第35代大統領である、暗殺されたジョン・F・ケネディー(John Fitzgerald Kennedy)は就任演説で次のような言葉を残している。
My fellow Americans, ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.
(みなさん、国がみなさんに何をしてくれるかを期待するのではなく、皆さん一人ひとりが国のために何ができるかを問うてください)
恐らく『一億総活躍社会』と、停滞した当時のアメリカ社会に活力を取り戻すきっかけとなったケネディーの熱い想いは、言葉は違えど意味するところ、向かう方向は同じであろう。
全員が活躍する社会。活躍するとは、単に働くということではない。国に頼まれなくても貧乏なら家族全員働く。単純に全員働く、というなら共産主義なら、向き不向き関係なく一律全員働くことになっているだろう。活躍とは単純に働くというのでもない。それぞれに持って生まれた性格や能力を生かして社会に貢献することである。ちなみに、天職という言葉がある。英語で vocation という。語源的には 声の voice と同じ語源である。 天職とは 天の声(voice)により決まる、というところからできた言葉である。
見た目も華やか、才能を生かしてバリバリ働くことだけが『活躍』ではない。目立たないが大事な仕事がある。縁の下の力持ち、内助の功。育児や介護なども極めて大事な仕事である。見えない仕事の方が往々にして大事である。目立たなくても、それぞれの役割をしっかり果たすことは立派に『活躍』することである。自分を見つめ、自分の役割を認識することで真に『活躍』することができる。『役割』をロールプレイなどの role を使い、
・What is your role?
・Find your role.
・Everyone has a role.
・Everyone has a role to play.
・Play your role.
・Play your part.
・Each one of you has an important role to play.
『活躍』をするためには、自分に問う必要がある。自分は何のためにこの世に生を享けたか。言い換えれば自分の使命を問うことである。使命はミッション mission である。
・What is your mission?
・Find your mission.
・Everyone has a mission. (誰しも使命がある)
・Fulfill your mission. (使命を果たす)
家出のドリッピー( Drippy. The Runaway Raindrop)というストーリーがある。英語教材の アカデミー出版が出しているもので、シドニーシェルダンが書いたもの。ナレーションは重低音で渋い声のオーソンウェルズ。私が子供の時分、英語が好きな父親から、日々の義務としてDrippy の朗読をすることを課せられた。かつての寺子屋で行われた、論語等の音読と同じように、意味も分からず、ひたすらオーソンウェルズの声を『シャドイング』をさせられていた時期があった。それはさておき、Drippy とは主人公の雨だれの名前。子供のドリッピーはある時、家出をする。蝶々、蜂、鳥、蟻など色々な生き物と出会い、命も狙われながらも、興味の赴くままに風に乗って世界を旅をする。その中で、ドリッピーと蜜蜂とのやりとりがある。
She had some honey with her and she gave Drippy a tiny taste.
"That's delicious! Will you show me how to make honey?"
"Only bees can make honey. You see, everything is put on this earth for a special purpose. Each one has his own job to do."
"What's my job?"
"Oh, don't you know, little raindrop?"
"No."
"You have a very important job. Without you, there would be no life on this earth."
親切な蜜蜂はドリッピーに蜂蜜の味見をさせてあげる。あまりにおいしいので、ドリッピーは自分で作りたくなる。しかしミツを作るのは蜜蜂である。
Everything is put on this earth for a special purpose. (誰でもみんな理由があってこの世に生まれてきた)
Each one has his own job to do. (それぞれみんな、やるべきことがあるのよ)
You have a very important job. Without you, there would be no life on this earth. (あなたには大事な仕事があるのですよ。あなた(水)がいなかったら、誰も生きていけないんだから)
こうやって、元が水である雨だれのドリッピーは自分の存在意義への自覚が促される。
存在意義。存在理由。フランス語でレゾンデートル (raison d'être )。
Each one has his own job to do.
一億総活躍社会とは、各々が自分に与えられた使命、役割を認識することから始まる。
・Each one has his or her own job to do. (みんなやるべき事がある)
『一億総活躍社会』とは非常に考えされられるテーマである。文脈により英語も色々あるだろう。そしてそれだけ考えるに値する言葉でもある。一億総活躍社会とは、考えると、ほぼ理想郷に近いものがある。本当に一人ひとりが自分の本質に目覚め、本当の能力に気づき、自分の役割を認める時、それは個人にとっても社会にとっても本当に幸せな状態であろう。
考えは尽きない。きりがないのでこの辺で。
各々英訳ならびに『一億総活躍社会』とは何か、その本質的意味の考察を深められたい。
以上。