ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

ジェロモー・サンド著『ユダヤ人の起源』

2010-06-14 15:48:19 | ときのまにまに
今朝の朝日新聞グローブ版にジェロモー・サンド氏の『ユダヤ人の起源』の著者ジェロモー・サンド氏のインタビュー記事が掲載されていました。私自身はこの著書を読んでいませんし、著者についてここに記されている以上のことは何も知りません。しかし、本日の朝日新聞に書かれていることだけでもかなり重要なことなので、一言書いておきたいと思います。
先ず、著者は明解に「(現在の)ユダヤ人は聖書のユダヤの民とつながる起源はない」と述べます。このこと自体、私にとってとてもショックなことです。ショックという意味は、これまで私が思っていたことと大きく離れるからです。それほど、強く確信していた訳ではありませんが、何となく現在、「ユダヤ人」と呼ばれている人たちは、聖書で言うユダヤ人とつながっている思っているからです。ところが彼は先ずそこの「曖昧さ」を突き通します。そう言われてみて、それに反論する根拠が私にはないことを先ず告白しておかねばならないでしょう。
そのことの重要さから考えると、ダビデやソロモンの「王国」が存在しなかったということ、その頃のエルサレムは「小さな村」にすぎなかったということもそれほど驚くべきことではありません。あるいは、モーセによる「出エジプト」という出来事も考古学的根拠がなかったと言われれば、「そうかも知れない」と受け流すほかはありません。それは「紅海が二つ割れて、その間を歩いた」という出来事が神話であるということと、それほど大差はありません。
サンド氏の主張の重要なポイントは、ロ-マによるユダヤ人のパレスチナからの追放という出来事が、実は「追放ではなく破壊に伴う移民だ」という点です。しかも、この「移民」ということさえ資料的には曖昧だと言います。当時のユダヤ人の大半は農民で、農民は土地に縛られており、そのままそこに留まったと思われます。従って、現在そこに住んでいる「パレスチナ人」は当時のユダヤ人の末裔であるとします。さらに、7世紀のイスラムの征服により、ユダヤ人が追放されたといわれていますが、実態はほとんどが「ユダヤ教からイスラム教へ」改宗したのだと言います。このあたりの歴史ということになりますと、もうほとんど私の手に及びません。わからないというのが本音です。
ところで、この本の著者ジェロモー・サンド氏は、1946年にオーストリアの難民キャンプで生まれ、2歳のときに両親とともにイスラエルに移住し、現在はテルアビブ大学の歴史学の教授です。彼の主張の中心点は「ユダヤ人とは、シオニズムはによって、ユダヤ人国家を正当化するために、聖書につながる民族として作り出されたのだ」と批判します。その上で「イスラエルという国家」を過去によって正当化するのではなく、この国が民主国家に生まれ変わるという将来によって正当化すべきだと主張します。そこにパレスチナ人とイスラエル国民とを一体化する根拠を築こうとしているようです。すばらしい。

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