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【動物実験】エクオールは関節炎を抑制する

2019-04-01 | 医学・医療・健康
たまたま見つけた論文。
Lin IC et al
Equol suppresses inflammatory response and bone erosion due to rheumatoid arthritis in mice.
J Nutr Biochem. 2016 Jun;32:101-6. doi: 10.1016/j.jnutbio.2016.02.012. Epub 2016 Mar 21.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27142742
イソフラボンの一種、ダイゼインが腸内細菌で代謝されることによってできる「エクオール」は、これまでに骨粗鬆症の予防や抗酸化作用などを示すことが報告されており、細胞実験のレベルでは炎症により生ずるTNFを低下させるという報告もありますが、関節リウマチへの効果は不明です。
今回、九州大学のグループから、コラーゲン関節炎モデルマウスを用いて、エクオールの関節炎に対する効果をみたという論文があったので見てみました。
コラーゲン投与による関節炎マウス(ヒトの関節リウマチのモデルマウス)と、対照群のマウスを用いて、それぞれにエクオール溶液または対照(溶媒のみ;DMSO)を1日1回投与(day 26-60)、関節炎スコアと骨密度を測定し、炎症性サイトカインや骨代謝に関わる遺伝子の発現をPCR法によって解析したというものです。
その結果、
エクオール投与マウスでは、対照マウスと比べて、コラーゲン投与によって起こる関節炎の発症が遅く(関節炎症状発症まで、対照マウスでは37.2日、エクオール投与マウスでは46.5日)、また関節炎の重症度(関節炎スコア)も軽度でした。
骨密度について:対照マウスは関節炎を起こしていないマウスと比べて骨密度が低下していたのに対し、エクオールを投与したマウスでは関節炎のないマウスと同程度以上の骨密度が保たれていたということです。
また、今回の関節炎モデルでは、血清中の炎症性サイトカインは検出されなかったとのことですが、病変部でのIL-6の発現はエクオール投与マウスでやや低下していました。そのほか、炎症や骨・軟骨破壊に関わる遺伝子についても解析されていました。
あくまでも今回は特殊なモデルを用いた動物実験であり、使用されている「エクオール」はヒトに対して販売されているものとは違う試薬ですので、これをもって「エクオールを飲むとリウマチに効く!」というものではありません。ですが、イソフラボンによる骨代謝調節と、リウマチ病態への関与の可能性については、今後も興味を持って見ていきたいと思います。