■対米従属から脱却するために、いま日本がやるべき「3つのこと」
~これができない政治家は退場せよ!~
週刊現代(講談社)2019.5.19
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64558
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・安保条約はアメリカの軍部が書いた
まず、問題は大きく2つに分かれる。
(1)なぜ、これほど異常な状況が生まれたのか
(2)なぜ、これほど異常な状況が続いてしまったのか
この(1)の問題をあっけなく説明してしまうのが、この人物だ。
カーター・B・マグルーダー陸軍少将。
彼が日本の戦後史における第1の盲点である。
おそらく彼の名前を聞いたことがある人は、ほとんどいないだろう。
だが「戦後日本」という国家にとって、実はこれほど重要な人物もいない。
というのはこのマグルーダーこそが、現在まで続く、日米安保条約と日米地位協定の本当の執筆者だからである。
ではなぜ他国との条約を、本来の担当であるアメリカ国務省ではなく、軍人が書くことになったのか。
その理由は旧安保条約が調印された1951年の、前年(1950年)6月に起きた朝鮮戦争にあった。
この突如始まった戦争で米軍は当初、北朝鮮軍に連戦連敗する。
その後も苦戦が続くなか米軍は、それまで一貫して拒否していた日本の独立(=占領終結)を認める代わりに、独立後の日本との軍事上の取り決め(安保条約)については、本体の平和条約から切り離して軍部自身が書いていい、朝鮮戦争への協力を約束させるような条文を書いていいという、凄腕外交官ジョン・フォスター・ダレスの提案に合意したのだった。
なので先の(1)への答えは非常に簡単だ。
日米安保条約や地位協定は、もともとアメリカの軍部自身が書いたものだった。
しかも平時に書いたのではなく、戦争中に書いた。
だから米軍にとって徹底的に都合の良い内容になっているのは、極めて当然の話なのだ。
その取り決めの本質は、下の旧安保条約・第1条のなかにすべて表現されている。
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旧安保条約・第1条(1951年9月8日調印)(要約)
「アメリカは米軍を、日本およびその周辺①に配備する②権利を持つ」
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この②の部分が日本の国土の「自由使用」、①の部分が「自由出撃」(日本の国境を自由に越えて行う他国への攻撃)を意味している。
その2つの権利を米軍は持つということだ。
そしてこの短い条文が意味する具体的な内容を、さまざまな状況別に条文化したものが、安保条約と地位協定(当時は行政協定)、そして無数の密約なのである。
いうまでもなく、そうした国家の主権を完全に他国に明け渡すような条約を結んでいる国は、現在地球上で日本以外にない。
つい最近、21世紀になってからアメリカに戦争で負けたイラクやアフガニスタンでさえ、米軍がそれらの国の許可なく、国土の「自由使用」や「自由出撃」をおこなうことなど絶対にできない。
いくら戦争でボロ負けしようと、占領が終われば国際法上の主権国家なのだから、それが当然なのである。
・インチキだった安保改定
ところが日本だけはそうなっていない。
その理由もまた、ひとことで説明することができる。
安保改定がインチキだったからだ。
1960年に「対等な日米新時代」をスローガンにして岸首相がおこなった安保改定により、旧安保時代のような事実上の占領状態はなくなったと日本人はみんな思っている。
ところが岸は安保改定交渉が始まる前年、訪米しておこなったアイゼンハワーとの首脳会談で、次の内容に合意していたのである。
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「日本国内の米軍の配備と使用については、アメリカが実行可能な場合はいつでも協議する」(部分)(会談後の共同声明 1957年6月21日)
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前ページの旧安保条約・第1条に書かれた、「日本の国土の自由使用」と「自由出撃」という植民地同然の権利。
それが安保改定後もそのまま存続することが、このとき確定した。
というのも岸による安保改定の目玉は、米軍の自由な軍事行動に日本側が制約をかける「事前協議制度」の創設にあったのだが、その「事前協議」の本質が「米軍がやりたくない場合はやらなくていい」ものだということが、ここで合意されてしまったからである。
その後結ばれた新安保条約、日米地位協定と、その他無数の密約は、やはりこの共同声明の1行を、細かく条文化する形で生まれたものといってよい。
そしてその過程で、日本の戦後史における2つ目の盲点が生まれる。
下の漫画の2コマ目にある「討議の記録」という名の「密約中の密約」である。
フォト
これはいわば先の共同声明の内容(事前協議制度の空洞化)を、ABCD4つの具体的な密約条項に書き換えたものといえる。
漫画にあるように、AとCが日本の国土の自由使用、BとDが日本の国土からの自由出撃についての密約である。
新安保条約調印の約2週間前(1960年1月6日)に藤山外務大臣によってサインされている。
冒頭の「(2)なぜ、これほど異常な状況が続いてしまったのか」という問いへの答えは、この密約文書ひとつですんでしまう。
ひとことでいうとこの密約は、旧安保時代の米軍の権利は、ほぼすべてそのまま引き継がれるという内容の密約だからだ。
ところがこの「日米密約の王様」ともいうべき最重要文書のことを、やはり日本の官僚もジャーナリストも、ほとんど知らない。
その理由は外務省が長らくこの文書の存在を否定し続け、2010年にようやくその存在を認めたあとも、一貫して文書の効力を否定し続けているからだ。
(中略)
・輝ける未来のためにすべきこと
このような構造を知ると、せっかく盛り上がりつつある地位協定の改定運動に水をかけるようで大変申し訳ないのだが、いくら地位協定の条文を変えても、新安保条約・第6条後半の「及び、合意される他の取り決め(で決定する)」という部分を削除しないかぎり、なんの意味もないことがわかる。
この短い文言のなかにはすでにご説明したとおり、日米合同委員会だけでも(安保改定以前と以後をあわせて)1600回を超える、密室での秘密合意の内容がすべて含まれているからだ。
だから地位協定を本気で改定しようとするなら、必ず新安保条約・第6条から上の下線部分を削除したうえで、改定をおこなう必要がある。
つまりそれは非常にミニマムな形ではあるが「安保再改定」にならざるをえないということだ。
「いや、地位協定の改定だけでもハードルが高いのに、安保再改定なんて絶対無理だよ」
とあなたは思うかもしれない。
けれどもそんなことは、まったくないのだ。
国会で正式に批准された「日米地位協定の条文」と、過去70年にわたって密室で蓄積された秘密合意が、法的に同じ効力をもつことを定めたこのメチャクチャな条文。
まともな親米政権をつくって「ここだけは占領期の取り決めが継続してしまったものなので、変えることに同意してほしい」といえば、断ることのできるアメリカの官僚も政治家も絶対に存在しない。
いま東アジアでは、世界史レベルの変化が起こりつつある。
昨年(2018年)3月から韓国の文在寅大統領がスタートさせた入念かつ大胆な平和外交が、その巨大な変化を生んでいるのだ。
それに比べて日本の解決すべき課題は、なんとちっぽけなことだろう。
「新安保条約・第6条の一部削除」
「日米地位協定の改定」
「日米安保の問題については憲法判断しないとした砂川裁判・最高裁判決の無効化」
この3つさえおこなえば、在日米軍を日本の国内法のコントロール下におくことが可能となり、現在の歪んだ日米関係は必ず劇的に改善する。
だからこの「最小限の安保再改定」と「地位協定改定」と「砂川裁判・最高裁判決の無効化」の3つで、まず野党の指導者が合意し、それに自民党の良識派も足並みをそろえてみてはどうか。
そして国家主権の喪失という大問題を解決したあと、またそれぞれの政治的立場に帰って議論を戦わせればいい。
逆に、ここまで私が説明してきた法的構造を理解した上で、それでもなお、上の3つに怖くて手をつけられないという政治家は、日本という国の政治指導者の座から、すぐに退場させるべきだ。
この本当に小さな変更さえおこなえば、その先に、われわれ日本人が望んでやまない、
「みずからが主権をもち、憲法によって国民の人権が守られる、本当の意味での平和国家としての日本」
という輝ける未来が、訪れることになる。
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■対米従属から脱却するために、いま日本がやるべき「3つのこと」
~これができない政治家は退場せよ!~
週刊現代(講談社)2019.5.19
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