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■異次元緩和、円安が招く消費悪化リスク NIKKEI STYLE(日経新聞)2019/5/13 加藤出(東短リサーチ社長チーフエコノミスト)

2022-04-03 05:50:12 | 日記


■異次元緩和、円安が招く消費悪化リスク

NIKKEI STYLE(日経新聞)2019/5/13 加藤出(東短リサーチ社長チーフエコノミスト)

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44558330Z00C19A5000000/


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日銀が異次元緩和を打ち出してから2019年4月で7年目に入った。

円相場は異次元緩和開始前の1ドル=95円程度から円安が進み、足元では110円前後で推移している。


日銀は公式には金融政策の目的は物価の安定であって為替相場ではないとの立場だが、大幅な金融緩和が結果的に円相場の下落につながることを意識しながら政策を運営しているといえるだろう。


こうした実質的な円安誘導策が輸出企業を中心に企業収益を支え日本株の上昇要因となった面はあるが、デメリットがあることも指摘しておきたい。

 

・変化した物価への意識


「消費動向調査」(内閣府)に物価の見通しを尋ねる質問がある。

「上昇する」との回答から「低下する」を差し引いたDIがグラフの赤い線である。


これをみると、16年秋以降上昇傾向が続いている。

同調査で「1年後の物価は上昇する」と回答した世帯に物価上昇率の予想を尋ね、上昇率ごとの回答比率をまとめた表をみてみよう。


16年8月から19年3月にかけて全般に数値が高い方向へシフトしているのが見てとれる。

年率2%のインフレ目標を達成するには人々のインフレ予想の上昇が不可欠と考えている日銀にとっては、これは喜ばしい変化といえる。


このインフレ予想の背景には、日銀の事実上の円安誘導による生活コストの上昇が存在していると考えられる。

国際通貨基金(IMF)が推計する購買力平価のドル円レートは18年が1ドル=98.14円で、19年は97.02円だ。


これは日米で物価がおおよそ同水準になる理論上の為替レートを示すが、近年の実際のレートは大幅な円安で推移してきたといえる。

これによる食品価格などの顕著な上昇の印象が、国民のインフレ予想に影響を及ぼしている。

 

・消費心理は振るわず


しかしながら前掲グラフの「消費者態度指数」(青い線)と「暮らし向き指数」(黄色い線)はここ最近悪化の一途をたどっている。


日銀はインフレ予想が高まれば国民は消費を拡大するはずと考えてきたが、皮肉なことに消費マインドは全く逆の動きを見せている。

収入の伸びが緩慢で家計の値上げ許容度が高まりにくい中で生活必需品の価格が円安などで上昇すると、それ以外の消費に節約が生じかねない。


これではインフレ率の上昇に弾みはつかないことになる。

変動が大きい生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価総合指数(コアコアCPI)の前年同月比は直近3カ月連続で0.4%にとどまっている。


2%のインフレ目標は相変わらず遠い状態だ。

政府は現時点で19年10月1日に消費税率を8%から10%へ引き上げる方針だ。


財政収支は人口減少と高齢化によって今後の大幅な悪化が予想されることを踏まえると、よほどの経済ショックがない限りは消費税率引き上げは延期せずに実施しておくべきだと筆者は考えている。

前回14年4月の引き上げ時は、その後に消費の悪化が長く続いた。


今回は前回ほどの打撃にはならないだろうという見方が一般的には多い。

主な理由としては(1)増税による家計の負担増をある程度和らげる措置が今回は用意されている、(2)駆け込み需要およびその反動は前回ほど大きくならない見通し、(3)前回は社会保障費負担の増加も重なっていた、などが挙げられている。


ただし、今後注意が必要なのが為替レートの動向だ。

黒田東彦・日銀総裁の異次元緩和策が開始される直前の13年3月を100とした物価水準の変化を示したグラフをみてみよう。


日銀が重視するコアコアCPIは14年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際、103前後に上昇した。

その後は非常に緩やかなペースの上昇が続いている。

 

・生活必需品の価格が上昇


一方で食料価格はコアコアCPIよりも早いペースで上昇し、14年秋に107近くに達した。

その後も上昇トレンドは続いている。


14年夏まではガソリン価格も顕著な上昇をみせていた。

つまり生活必需品が消費税率引き上げだけでなく、円安や原油価格上昇の影響も受けて急騰していたのである。


賃金の伸びが緩慢な中で生活コストが急上昇すると消費は強い打撃を受けやすい。

日銀の円安誘導は裏目に出たと考えられる。


リフレ派エコノミストは14年後半以降の原油価格下落がなければインフレ目標は達成されていた」とよく主張するが、仮に原油価格が低下していなかったら当時の消費はより悪化していたと推測される。

食料価格は最近、111~112近辺にある。コアコアCPIは105前後だ。


多くの生活者が実感してきたインフレはコアコアCPIが示しているものより高めに推移してきたといえるだろう。

米国の食料価格の推移と比べると、この6年間の日本の食料の値上げがいかに急だったかが実感できるだろう。


19年秋にかけてもし円安が進んだら、それによる生活コストの上昇が日本国民の消費マインドを萎縮させる可能性がある。

そこに10月の消費税率引き上げが重なると消費はさきに述べた一般的な想定よりも悪くなるリスクがある。


逆に円高方向に進んだら、株価の下落による逆資産効果で富裕層の消費は沈滞し得るものの、他方で大多数の消費者は生活コスト低下の恩恵を受ける可能性がある。

 

・加藤出
1965年生まれ。88年横浜国立大学経済学部卒、同年4月東京短資入社。短期市場のブローカーとエコノミストを兼務後、2002年2月に東短リサーチ取締役、13年2月より現職。マーケットの現場の視点から日銀、FRB、ECB、中国人民銀行などの金融政策を分析する。著書に「日銀、『出口』なし!」(朝日新聞出版、14年)など。


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異次元緩和、円安が招く消費悪化リスク
NIKKEI STYLE(日経新聞)2019/5/13 加藤出(東短リサーチ社長チーフエコノミスト)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44558330Z00C19A5000000/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


■アベノミクスの目玉、異次元緩和政策の問題点~喜べない「雇用増」の実体と、日銀政策委員会という「非科学」組織~

論座 2018年04月16日 小島寛之(帝京大学経済学部教授)

https://webronza.asahi.com/science/articles/2018041200002.html

 

 

 

 


■「異次元緩和は机上の空論だった」それでも日銀が"失敗"を認めない本当の理由

PRESIDENT Online 2021/08/30 山本謙三(オフィス金融経済イニシアティブ代表、日本銀行元理事)

https://president.jp/articles/-/49291?page=1


【消費税は大企業や富裕層の減税の財源】政府やメディアが刷り込んだ“消費税の目的”の嘘 論座(朝日新聞)2019年09月20日 斎藤貴男

2022-04-03 05:48:42 | 日記

 

■政府やメディアが刷り込んだ“消費税の目的”の嘘~“社会保障の充実と安定化”のための増税という謳い文句とは正反対の現実~

論座(朝日新聞)2019年09月20日 斎藤貴男

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019091900001.html

 


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・全世代型社会保障改革を掲げた新内閣


「新しい社会保障制度のあり方を大胆に構想してまいります」と安倍晋三首相は胸を張った。

9月12日、第4次再改造内閣発足に臨む記者会見。


「全世代型社会保障改革」を新内閣の“旗”に掲げ、その担当を兼務する西村康稔経済再生相(56)を中心に、「70歳までの就労機会の確保や年金受給年齢の選択肢の拡大」などの“改革”を進めるという。


いわゆる年金カット法(年金制度改革法)に基づくマクロ経済スライド方式の強化をはじめ、医療費や介護費用の自己負担比率増大、介護保険制度の利用者制限、生活保護の生活扶助費や住宅扶助費の減額等々、過去数年にわたって重ねられてきた社会保障の縮小あるいは削減に、よりいっそうの大ナタが振るわれていく。


側近の衛藤晟一氏が担当相に起用された「1億総活躍」の国策と合わせれば、権力に近くない人間は死ぬまで働くしかない時代が見えてくる。


ちなみに西村氏は内閣官房副長官だった2018年7月5日夜、安倍首相とその取り巻きたちによるどんちゃん騒ぎの大宴会「赤坂自民亭」の模様を、「いいなあ自民党」のコメントとともにツイートし、問題になった人物だ。


翌日にオウム真理教事件の死刑囚7人の死刑執行が予定され、また中国・四国・九州地方で200人以上の死者を出すことになる西日本大豪雨がすでにその予兆を示していたそのタイミングが、今も記憶に生々しい。

 

・社会保障の充実と安定化のための増税だったが……


“大胆”な社会保障“改革”の実相も、それを担う人々の資質も、しかし、マスメディアは特に報じも、論じもしなかった。


新閣僚の首相との距離感や、派閥の内幕については過剰なほど詳しい新聞は、国民生活を左右する政策の意図や意味には関心がないらしく、政権側の言い分をおおむねそのまま垂れ流す。


「全天候型社会保障改革」に批判的な報道が皆無だったとまでは言わないが、その場合でも、なぜか、この“改革”と、ある要素との関係だけは、とことん避けて通られているようだ。


「ある要素」とは何か。

消費税増税の問題だ。


来たる10月1日に、消費税率は8%から10%に引き上げられることになっている。

そして、政府とマスメディアはこの間ずっと、“社会保障の充実と安定化”のための増税なのだと謳(うた)い続けてきた。


それが、どうだ。

現実は、まるで正反対の姿にしかなっていないではないか。

 

・尻すぼみに終わった「老後2000万円問題」


例の「2000万円問題」を、改めて考えてみよう。

さる6月、政府の審議会が公表した報告書に、“今後の日本社会で高齢夫婦が老後を暮らすには、支給される公的年金の他に約2000万円が必要になる”旨が書かれていて、日本中が大騒ぎになった、あの問題だ。


だからどうするべきなのか、という問題提起ではない。

金融庁長官の諮問を受ける「金融審議会」の「市場ワーキンググループ」が、あくまでも金融サービス事業者向けに、だからこういう金融商品を作って売ったら儲かりまっせ、と“啓蒙”するのが狙いの文書であり、2000万円うんぬんは、その前提となるデータとして提示されていたのにすぎない。


目的はどうあれ、それでも多くの国民は反発しかけた。

官邸前の抗議集会や、デモがあった。野党も結束して追及した……かに見えた。


だが、やがて尻すぼみになり、7月の参院選でも、さしたる争点にはならなかった。

原因は明確でない。


野党のだらしなさ、権力になびく一方のマスメディアといろいろあるが、それだけでは説明できない。

しかし、そうなった決定的な背景が、私にはわかるような気がする。

 

・消費税率は上がれど悪化する社会保障


1988年のことである。

ある不動産会社が、自社商品の宣伝本を出版した。


題して『パートナーシップ』。

一言に要約すると、こんな内容だった。


日本銀行の試算によれば、現役を退いた高齢夫妻の老後は公的年金だけでは賄えず、平均でざっと1500万円の貯蓄が必要です。

だから皆さん、当社のワンルームマンションに投資して、安心な老後に備えましょう。


時はまさに金ピカ・バブル経済の真っ盛り。

週刊誌の記者だった私は、その本を地上げ絡みのネタ元にさせてもらっていた同社幹部にプレゼントされ、思うところあって、大切に保管してきた。


消費税が導入されたのは翌89年。

“高齢化社会への対応”が前面に打ち出され、紆余曲折を経てのスタートだったが、その後も同じ理由が繰り返し掲げられ、税率が3から5、8%へと引き上げられて、ついには2桁の大台に乗ろうとしている。


考えてももらいたい。

いくらなんでも、おかしすぎはしないか。


消費税の導入前は1500万円の不足。

税率10%を目前にした現在は2000万円の不足。


何も変わっていない、どころか、事態はかえって悪化している。

いったい何のための消費税だったのか。

 

・消費税は大企業や富裕層の減税の財源


……などと吠えてみせるのもカマトトではある。

財務省の資料「法人税率の推移」によれば、88年度に42%だった法人税の基本税率は、翌年に消費税が導入されてからは減税に次ぐ減税で、現在は半減に近い23・2%だ。


また、これも財務省のデータ「一般会計税収の推移」は、税収全体に占める税目別の割合が、消費税と法人税がほぼ反比例している様子を示している。

この間には所得税の累進性もかなり緩んだ。


99年からの8年間は累進の上限が年間所得1800万円超の37%。

少し大きな会社の部長さんも、大財閥のオーナーも、同じ税率だった。


財政健全化の財源にすると強調された局面もしばしばだった。

けれども、この点にしたところで、消費税が導入されて以降も、財政赤字は膨らむ一方であり続けてきた。


税収が増えると、増えた分だけ“土建屋政治”や“軍拡”に勤(いそ)しんできたからに他ならない。

要するに、消費税は社会保障の充実や安定化、財政健全化のために導入されたわけでも、増税されてきたわけでもない。


敢えて単純化してしまえば、それはただ、大企業や富裕層の減税の財源になった。

すなわち、この間に政府やマスメディアが国民に刷り込んできた“消費税の目的”なるものは、何もかも嘘(うそ)だったと断じて差し支えないのである。

 

・自己責任論が強調される社会保障


もっとも、ことの善悪の一切をさて置く限り、とりわけ近年における状況は、いわば必然的な結果でもあった。


民主党政権と自民、公明両党との「3党合意」で、国策「社会保障と税の一体改革」の目玉としての消費税増税が決められた2012年の冬、「社会保障制度改革推進法」が可決・成立している。


その第2条の1が、社会保障を、こう定義していた。

――自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。


一般の認識とは、天と地ほどもかけ離れてはいないだろうか。

社会保障と言えば、普通は社会保険や公的扶助、公衆衛生、医療、社会福祉などの概念をまとめたものと理解されている。


1950年に当時の「社会保障審議会」が打ち出した「狭義の社会保障」の定義が、多くの人々には、なお生き続けているのだ。 

いずれにせよ、今風の表現では「公助」のイメージだ。


「社会保障制度改革推進法」の定義と対比されたい。

そして、消費税率が8%に引き上げられる4カ月前の2013年12月、今度は「推進法」を具体化していくための「社会保障制度改革プログラム法」が可決・成立。同法では社会保障における政府の役割が規定されているのだが、こちらはもっと凄まじい。


――政府は、住民相互の助け合いの重要性を認識し、自助・自立のための環境整備等の推進を図るものとする。

徹底的な自己責任論であり、政府は努力義務しか持たないと定めている。


書籍や雑誌の記事、講演会などの場で、私が幾度も幾度も書き、語り、批判してきたことである。

こう書くと確実に返ってくるのは、“消費税がなければ、社会保障そのものが解体していた”などといった反論だろう。


制度の“持続可能性”を錦の御旗とする政府やマスメディアが近年多用したがるロジックだが、これほどの本末転倒もない。

制度だけが持続しても、国民生活を支えることができない制度なら無意味だ。


「社会保障は国民生活に必優なものであるから、財源が足りなければ、どこからか財源を工面して、社会保障の充実に充てるのが、政治家の仕事ではないか」と、鹿児島大学の伊藤周平教授(社会保障法)は喝破してのけている(『社会保障入門』ちくま新書、2018年)。


生存権を規定した憲法25条を持ち出すまでもなく、消費税は上げるが社会保障の水準は下落の一途、などという“政策”は、本来、許されてよいはずがないのである。


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政府やメディアが刷り込んだ“消費税の目的”の嘘~“社会保障の充実と安定化”のための増税という謳い文句とは正反対の現実~
論座(朝日新聞)2019年09月20日 斎藤貴男
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019091900001.html

 

 

 

 

 


■『消費税が社会保障を破壊する』

著者/編集: 伊藤周平
出版社: KADOKAWA
発売日: 2016年06月08日頃

https://a.r10.to/hadVkt


○内容紹介(「BOOK」データベースより)

社会保障の充実が目的とされる消費税。だが、現実は充実どころか削減が続く。日本の消費税は実は貧困と格差を拡大する欠陥税制なのだ。真実を明らかにしつつ、社会保障改革と税制改革のあるべき姿を提示する。


○目次(「BOOK」データベースより)

序章 悲鳴続出!消費税増税と社会保障削減/第1章 消費税が増税されたのに、なぜ社会保障が削減されているのか?/第2章 少子化対策ー解消されない待機児童、保育料の値上がり、深刻化する子どもの貧困/第3章 医療・介護制度改革ー給付抑制と負担増で、介護離職ゼロどころか激増の危機/第4章 生活保護制度改革と年金制度改革ー遠のく生活の安心、高まる老後の不安/第5章 消費税ーその本質と問題点/第6章 憲法にもとづく公平な税制で、社会保障の充実を!/終章 課題と展望ー対案の実現のために


○著者情報(「BOOK」データベースより)

伊藤周平(イトウシュウヘイ)

1960年山口県生まれ。鹿児島大学法科大学院教授(社会保障法専攻)。東京大学大学院修了。労働省(現厚生労働省)、社会保障研究所(現国立社会保障・人口問題研究所)、法政大学助教授、九州大学大学院助教授を経て、2004年より現職。主な著書に、『介護保険法と権利保障』(法律文化社、日本社会福祉学会学術賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


・楽天ブックス『消費税が社会保障を破壊する』
https://a.r10.to/hadVkt

 


■異次元緩和が日本に与えた「二つの深刻な副作用」~元日銀理事が語る「経済の急所」~ 毎日新聞 2021年11月19日 山本謙三・元日銀理事、金融経済イニシアティブ代表

2022-04-03 05:47:48 | 日記


■異次元緩和が日本に与えた「二つの深刻な副作用」~元日銀理事が語る「経済の急所」~

毎日新聞 2021年11月19日 山本謙三・元日銀理事、金融経済イニシアティブ代表

https://mainichi.jp/premier/business/articles/20211110/biz/00m/020/001000c

 


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金融政策の罪と罰(2)


異次元緩和の副作用を巡る議論は、高インフレが起きるかどうかに力点が偏りがちだ。

「8年半やっても物価が上がらないのに、将来の高インフレを心配するのはばかげている」といった議論である。


しかし、副作用は物価だけではない。

土地や株式といった資産価格から、金融システムや実体経済まで広範に及ぶ。


副作用が広範に及ぶのは、考えてみれば当たり前だ。

異次元緩和とは、巨額の資金供給と超低金利を通じて経済に働きかけるものだ。


現在日本銀行は「短期金利マイナス0.1%、長期金利ゼロ%」という政策金利を掲げている。

これだけの超緩和的な金利を長期にわたって続ければ、副作用も当然大きくなる。


以下、私がとくに深刻と考える副作用を二つ指摘する。

一般の国民には目に見えにくい副作用と、目に見えやすい副作用だ。

 

・第一の副作用「生産性の低下」


まず、目に見えにくい副作用から説明する。

経済の生産性に与える悪影響である。


大量の資金供給と超低金利の継続は、企業の資金繰りを緩和すると同時に、成長性の低い企業の延命にもつながる。

長く続ければ、新陳代謝が遅れ、経済の活性化が妨げられる。


金融緩和は、もともと将来予定している消費や投資を現在に「前借り」してくる政策である。

企業で言えば、投資案件を前倒しして行うといったことだ。


ところが、金融緩和の当初は、高い生産性が見込める投資を前倒しで行ったが、金融緩和が長く続く間に、次第に生産性の低い投資案件が中心になった。

「前借り」の効果が限界に近づいたのだ。


2010年代の後半に日本の生産性低下が加速した主な理由の一つは、長く続けてきた異次元金融緩和ではないか。

異次元緩和が生産性を低下させるリスクは財政面にも波及している。


日銀による国債の大量購入は、いつでも資金調達できる安心感を政府にもたらし、財政規律を弛緩(しかん)させかねない。

規律が失われれば、非効率な支出に歯止めがかからなくなる。


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異次元緩和が日本に与えた「二つの深刻な副作用」~元日銀理事が語る「経済の急所」~
毎日新聞 2021年11月19日 山本謙三・元日銀理事、金融経済イニシアティブ代表
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20211110/biz/00m/020/001000c