■アフターコロナに「IT後進国」~日本の国際競争力が失墜する理由~
ダイヤモンド・オンライン(週刊ダイヤモンド)2020.5.12
真壁昭夫:法政大学大学院教授
https://diamond.jp/articles/-/236862
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・IT分野で発展した国とそうでない国に競争力の格差
最近、今年1~3月期の主要企業の業績が発表され、コロナ禍の渦中での各国の主要企業の収益状況が明らかになりつつある。
その中で、わが国と欧州の主要企業の業績が前年同期比で7割から8割減と大きく落ち込む一方、5Gや通信分野に強みを持つ米国や中国では企業の純利益が前年同期比で4割程度減少と健闘していることが注目される。
現在、世界的にテレワークや巣ごもり消費の増大から、多くの主要国で通信量が顕著に増加している。
それに伴い、米・中のサーバー需要獲得競争が一段と激化している。
米国GAFA、中国BATHのようにIT先端企業の収益力は、経済の落ち込みをカバーすると同時に、アフターコロナの変化に対応するために一段と重要性が増している。
一方、自動車、汎用機械、素材などに相対的な優位性を持つわが国では、企業の利益が同78%減だった。
世界的に見て日本経済はかなり厳しい状況にある。
わが国は“ものづくり”に強みを持つが、5Gやスマホ分野などでの競争力は十分ではない。
加えて、感染対策が後手に回り、GDPの60%程度を占める個人消費が落ち込んでいる。
コロナショックの発生によって、世界全体で人の動線が遮断され、経済は大きく混乱している。
回復にはかなり時間がかかるだろう。
4~6月期、米国の経済成長率はマイナス20%超に落ち込むとみられ、その後も世界経済の停滞は避けられないだろう。
今後、IT先端分野を中心に力を発揮してきた経済と、そうではない国の差がこれまで以上に明確化するはずだ。
今後、5G通信関連を中心にIT先端分野の需要は徐々に高まるとの見方は多い。
わが国はそうした変化に対応するために、産業構造を転換することを考える必要がある。
(中略)
・今後、わが国が目指すべき改革の道
コロナショックによって世界全体で人の動線が遮断・寸断された影響は非常に大きい。
それによって、人々が外出しなくてもできるだけ快適に過ごすことを重視し始めている。
言い換えれば、わが国が強みを発揮してきた自動車、各種部品や素材産業の回復には時間がかかる。
これまでの産業構造を維持し続けた場合、わが国の経済は米中を中心とするIT先端分野などでの新しい取り組み、それによる変化に取り残されてしまう恐れがある。
仮にその展開が現実のものとなれば、内需の低迷には拍車がかかり、経済と社会全体でかなりの閉塞感が広がるだろう。
歴史を振り返ると、疫病との戦いは世界経済を大きく変えた。
14世紀に世界を襲ったペストは、欧州における封建制度の崩壊を通して教会の影響力を低下させ、ルネサンスにつながった。
1918年に発生したスペイン風邪は、第1次世界大戦の終結を早めたとの見方がある。
コロナショックを受け、米国では産学連携などを起点に、大学が開発したフェースシールドを自動車メーカーが生産するなど、部分的にオープンイノベーションが起きている。
中国では、国家資本主義体制の下で経済活動だけでなく医療などのデジタル化が進んでいる。
ある意味、わが国はコロナショックをチャンスに変えなければならない。
これまでの発想や価値観にとらわれずに、新しい取り組みを積極的に進めなければ世界全体の構造変化に遅れてしまう。
感染を早期に食い止めた韓国でさえ、鉄鋼、金融、石油化学、航空など在来分野の業況は悪化している。
感染対策が後手に回ってしまったわが国は、内需、外需の両面においてそれ以上に厳しい状況を迎えていることを直視しなければならない。
わが国の政府は今後の経済運営をどう進めるか、国としての基本方針を固めるべき時を迎えている。
5Gやデータセンター関連の新しい機器や基盤などの部材開発と生産に向け、産学連携の強化や専門知識と技術を持つ人材が活躍できる環境の整備は急務だ。
政府は基礎分野での新しい取り組み推進に向けて、規制緩和や構造改革を大胆に進める必要がある。
今後、わが国がそうした課題をいかに乗り越えることができるか、今、大きな岐路に立たされている。
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アフターコロナに「IT後進国」~日本の国際競争力が失墜する理由~
ダイヤモンド・オンライン(週刊ダイヤモンド)2020.5.12
真壁昭夫:法政大学大学院教授
https://diamond.jp/articles/-/236862