■なぜ日本はアメリカの「いいなり」なのか?
~知ってはいけないウラの掟~
「日本の空は、すべてアメリカに支配されている」
「日本の国土は、すべて米軍の治外法権下にある」
「国のトップは“米軍+官僚”である」
「自衛隊は米軍の指揮のもとで戦う」
週刊現代 2017.08.05 矢部宏治
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52466
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・事実か、それとも「特大の妄想」か
それほどしょっちゅうではないのですが、私がテレビやラジオに出演して話をすると、すぐにネット上で、「また陰謀論か」「妄想もいいかげんにしろ」「どうしてそんな偏った物の見方しかできないんだ」などと批判されることが、よくあります。
あまりいい気持ちはしませんが、だからといって腹は立ちません。
自分が調べて本に書いている内容について、いちばん「本当か?」と驚いているのは、じつは私自身だからです。
「これが自分の妄想なら、どんなに幸せだろう」いつもそう思っているのです。
けれども、8月17日発売の新刊『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』をお読みになればわかるとおり、残念ながらそれらはすべて、複数の公文書によって裏付けられた、疑いようのない事実ばかりなのです。
ひとつ、簡単な例をあげましょう。
以前、田原総一朗さんのラジオ番組(文化放送「田原総一朗 オフレコ!」)に出演し、米軍基地問題について話したとき、こんなことがありました。
ラジオを聞いていたリスナーのひとりから、放送終了後すぐ、大手ネット書店の「読者投稿欄」に次のような書き込みがされたのです。
<★☆☆☆☆〔星1つ〕 UFO博士か?
なんだか、UFOを見たとか言って騒いでいる妄想ですね。
先ほど、ご本人が出演したラジオ番組を聞きましたが(略)なぜ、米軍に〔日本から〕出て行って欲しいというのかも全く理解できないし、〔米軍〕基地を勝手にどこでも作れるという特大の妄想が正しいのなら、(略)東京のど真ん中に米軍基地がないのが不思議〔なのでは〕?>
もし私の本を読まずにラジオだけを聞いていたら、こう思われるのは、まったく当然の話だと思います。
私自身、たった7年前にはこのリスナーとほとんど同じようなことを考えていたので、こうして文句をいいたくなる人の気持ちはとてもよくわかるのです。
けれども、私がこれまでに書いた本を1冊でも読んだことのある人なら、東京のまさしく「ど真ん中」である六本木と南麻布に、それぞれ非常に重要な米軍基地(「六本木ヘリポート」と「ニューサンノー米軍センター」)があることをみなさんよくご存じだと思います。
そしてこのあと詳しく見ていくように、日本の首都・東京が、じつは沖縄と並ぶほど米軍支配の激しい、世界でも例のない場所だということも。
さらにもうひとつ、アメリカが米軍基地を日本じゅう「どこにでも作れる」というのも、残念ながら私の脳が生みだした「特大の妄想」などではありません。
なぜなら、外務省がつくった高級官僚向けの極秘マニュアル(「日米地位協定の考え方 増補版」1983年12月)のなかに、
○ アメリカは日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる。
○ 日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難な場合以外、アメリカの要求に同意しないケースは想定されていない。
という見解が、明確に書かれているからです。
つまり、日米安全保障条約を結んでいる以上、日本政府の独自の政策判断で、アメリカ側の基地提供要求に「NO」ということはできない。
そう日本の外務省がはっきりと認めているのです。
北方領土問題が解決できない理由
さらにこの話にはもっとひどい続きがあって、この極秘マニュアルによれば、そうした法的権利をアメリカが持っている以上、たとえば日本とロシア(当時ソ連)との外交交渉には、次のような大原則が存在するというのです。
○ だから北方領土の交渉をするときも、返還された島に米軍基地を置かないというような約束をしてはならない。
こんな条件をロシアが呑むはずないことは、小学生でもわかるでしょう。
そしてこの極秘マニュアルにこうした具体的な記述があるということは、ほぼ間違いなく日米のあいだに、この問題について文書で合意した非公開議事録(事実上の密約)があることを意味しています。
したがって、現在の日米間の軍事的関係が根本的に変化しない限り、ロシアとの領土問題が解決する可能性は、じつはゼロ。ロシアとの平和条約が結ばれる可能性もまた、ゼロなのです。
たとえ日本の首相が何か大きな決断をし、担当部局が頑張って素晴らしい条約案をつくったとしても、最終的にはこの日米合意を根拠として、その案が外務省主流派の手で握り潰されてしまうことは確実です。
2016年、安倍晋三首相による「北方領土返還交渉」は、大きな注目を集めました。
なにしろ、長年の懸案である北方領土問題が、ついに解決に向けて大きく動き出すのではないかと報道されたのですから、人々が期待を抱いたのも当然でしょう。
ところが、日本での首脳会談(同年12月15日・16日)が近づくにつれ、事前交渉は停滞し、結局なんの成果もあげられませんでした。
その理由は、まさに先の大原則にあったのです。
官邸のなかには一時、この北方領土と米軍基地の問題について、アメリカ側と改めて交渉する道を検討した人たちもいたようですが、やはり実現せず、結局11月上旬、モスクワを訪れた元外務次官の谷内正太郎国家安全保障局長から、「返還された島に米軍基地を置かないという約束はできない」という基本方針が、ロシア側に伝えられることになったのです。
その報告を聞いたプーチン大統領は、11月19日、ペルー・リマでの日ロ首脳会談の席上で、安倍首相に対し、「君の側近が『島に米軍基地が置かれる可能性はある』と言ったそうだが、それでは交渉は終わる」と述べたことがわかっています(「朝日新聞」2016年12月26日)。
ほとんどの日本人は知らなかったわけですが、この時点ですでに、1ヵ月後の日本での領土返還交渉がゼロ回答に終わることは、完全に確定していたのです。
もしもこのとき、安倍首相が従来の日米合意に逆らって、「いや、それは違う。私は今回の日ロ首脳会談で、返還された島には米軍基地を置かないと約束するつもりだ」などと返答していたら、彼は、2010年に普天間基地の沖縄県外移設を唱えて失脚した鳩山由紀夫首相(当時)と同じく、すぐに政権の座を追われることになったでしょう。
「戦後日本」に存在する「ウラの掟」
私たちが暮らす「戦後日本」という国には、国民はもちろん、首相でさえもよくわかっていないそうした「ウラの掟」が数多く存在し、社会全体の構造を大きく歪めてしまっています。
そして残念なことに、そういう掟のほとんどは、じつは日米両政府のあいだではなく、米軍と日本のエリート官僚のあいだで直接結ばれた、占領期以来の軍事上の密約を起源としているのです。
私が『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』を執筆したのは、そうした「ウラの掟」の全体像を、「高校生にもわかるように、また外国の人にもわかるように、短く簡単に書いてほしい」という依頼を出版社から受けたからでした。
また、『知ってはいけない』というタイトルをつけたのは、おそらくほとんどの読者にとって、そうした事実を知らないほうが、あと10年ほどは心穏やかに暮らしていけるはずだと思ったからです。
なので大変失礼ですが、もうかなりご高齢で、しかもご自分の人生と日本の現状にほぼ満足しているという方は、この本を読まないほうがいいかもしれません。
けれども若い学生のみなさんや、現役世代の社会人の方々は、そうはいきません。
みなさんが生きている間に、日本は必ず大きな社会変動を経験することになるからです。
私がこの本で明らかにするような9つのウラの掟(全9章)と、その歪みがもたらす日本の「法治国家崩壊状態」は、いま沖縄から本土へ、そして行政の末端から政権の中枢へと、猛烈な勢いで広がり始めています。
今後、その被害にあう人の数が次第に増え、国民の間に大きな不満が蓄積された結果、「戦後日本」というこれまで長くつづいた国のかたちを、否応なく変えざるをえない日が必ずやってきます。
そのとき、自分と家族を守るため、また混乱のなか、それでも価値ある人生を生きるため、さらには無用な争いを避け、多くの人と協力して新しくフェアな社会をいちからつくっていくために、ぜひこの本を読んでみてください。
そしてこれまで明らかにされてこなかった「日米間の隠された法的関係」についての、全体像に触れていただければと思います。
【各章のまとめ】
「日本の空は、すべてアメリカに支配されている」
「日本の国土は、すべて米軍の治外法権下にある」
「日本に国境はない」
「国のトップは“米軍+官僚”である」
「国家は密約と裏マニュアルで運営する」
「政府は憲法にしばられない」
「重要な文書は、最初すべて英語で作成する」
「自衛隊は米軍の指揮のもとで戦う」
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なぜ日本はアメリカの「いいなり」なのか?
~知ってはいけないウラの掟~
週刊現代(講談社)
2017.08.05
矢部宏治
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52466?page=4
■憲法よりも国会よりも強い、日米「秘密会議」の危ない実態~これが日本の現実だった~
週刊現代 2017.10.24(田原総一朗×矢部宏治)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/53252
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田原: 日本が核を持つのに、一番反対したのはアメリカなんだよ。僕はキッシンジャーに、そのことを何度か聞いたことがある。絶対反対だと。
矢部: ところが、いまはむしろ、持たされる可能性が高い。
田原: トランプがそう言ってるじゃない、大統領選挙のとき。
矢部: ですよね。1970年代にヨーロッパで起きたことですが、中距離核ミサイルを持たされて、ソ連とヨーロッパが撃ち合いの状況をつくられてしまった。でもアメリカはその外側にいて、自分たちは絶対安全と。そういう体制が今後、日本・韓国と中国・北朝鮮の間でつくられてしまう可能性があります。
あと、今日はもう一つ、田原さんにどうしてもお話ししておきたいことがあるんです。安倍首相が2015年に安保関連法を成立させて、集団的自衛権の行使が認められるようになりましたよね。もう、あれで自衛隊は海外へ行けるわけですから、米軍側の次の課題っていうのは憲法改正とかじゃなくて、違うフェーズに移っているということを、いま調べているんです。具体的には全自衛隊基地の共同使用なのですが。
田原: どういうこと?
矢部: 要するに、すべての自衛隊基地を米軍と自衛隊が一緒に使って、米軍の指揮の下で共同演習をやるようになるということです。たとえば静岡県にある富士の演習場というのは、もともと旧日本軍の基地で、戦後、米軍基地として使われていました。それが1968年、自衛隊に返還されたのですが、その際、年間270日は米軍が優先的に使うという密約が結ばれていたのです。
田原: いまでもその密約は続いているの?
矢部: ええ。年間270日ですから、日本に返還されたと言ってたら、事実上、米軍基地のままだったわけです。
田原: 本当は米軍基地じゃないんでしょう? 残ってるわけか、少し。
矢部: ちょっとだけ残っているんですよね。全部米軍基地だったのを少しだけ残して、いちおう日本に返したのですが、密約で270日間は自分たちが使うと。そうすれば、基地を管理する経費がかからないし、米軍基地じゃなくて自衛隊基地のほうが周辺住民の反対運動も少ないので、はるかに都合がいいんです。
下手したらね、たとえば辺野古ができたあと、普天間を日本に返して自衛隊の基地にする、でも米軍が優先的に使いますよ、ということだってあり得るわけです。ですからこれから日本では、米軍基地の返還が進み、表向きは自衛隊基地なのにその実態は米軍基地、というかたちがどんどん増えていくかもしれません。
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■憲法よりも国会よりも強い、日米「秘密会議」の危ない実態~これが日本の現実だった~
週刊現代(講談社)2017.10.24(田原総一朗×矢部宏治)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/53252
■「日本はまだ米軍の占領下」は真実だった
日刊ゲンダイ:2016/07/10
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/185415
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・【週末オススメ本ミシュラン】「日本はなぜ、『戦争ができる国』になったのか」矢部宏治著(集英社インターナショナル)
日本はいまだに米軍の占領下にある。
本書を一言で要約すると、そうなる。
「そんなバカな」と思われるかもしれないが、著者はきちんと証拠を示しながら丁寧に論証しているから、これは事実だ。
正直言って、私自身、そんなことじゃないかと思っていた。
経済分野の日米交渉で、日本は一度も勝ったことがないのはなぜなのか。
2012年に航空自衛隊の航空総隊司令部が米軍横田基地に移転されるなど、米軍と自衛隊の統合運用が強化されているのはなぜなのか。
日本がまだ、米軍の支配下にあるのだとしたら、そうした疑問に完全な答えが出るのだ。
著者は、日本において米軍は基地権と指揮権を持っているという。
基地権というのは、米軍基地内で米軍が自由に行動できるだけでなく、基地への自由なアクセス権を持つというものだ。
例えば、米軍関係者は日本が管制権を持たない横田空域を飛んで横田基地に入り、そこから六本木の米軍ヘリポートに軍用ヘリで移動する。
日本に入国するのに手続きもパスポートも要らない。
指揮権というのは、有事の際に自衛隊は米軍の指揮下で活動するということだ。
私はずっと自衛隊は日本を防衛するための組織だと思ってきたのだが、そうではない。
自衛隊は、米軍支援のための部隊だったのだ。
そうした事実が国民の前に明らかになっていないのは、安保条約や地位協定などに書かれているのは、表向きの話だけで、日本国民にとって都合の悪いことは、すべて日米合同委員会で密約として決められるからだという。
この日米合同委員会の出席者は日本政府の代表と米軍の代表だ。
つまり、日米関係というのは、政府間交渉のレベルにも達しておらず、いまだに占領下と同じ、米軍の支配下に置かれているのだ。
それが戦後70年たった日本の現実なのだ。
(選者・森永卓郎)
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「日本はまだ米軍の占領下」は真実だった
日刊ゲンダイ:2016/07/10
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/185415