■安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品<鈴木宣弘氏>
ハーバー・ビジネス・オンライン(扶桑社) 2019.12.22
https://hbol.jp/pc/209175/
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・日本の食と農が崩壊する!
安倍政権はアメリカが要求する農協改革の名のもとに、農業への企業参入、農業の大規模化・効率化を推進してきた。
規制改革推進派の小泉進次郎氏が自民党農林部会長に就き、「農業が産業化し、農協が要らなくなることが理想だ」と公言する奥原正明氏が農水省事務次官に就いた。
諮問会議で農業改革の議論をリードしたのは、農業の専門家ではなく、金丸恭文氏、新浪剛史氏といったグローバリストである。
結果、農業分野への参入に成功したのは、新浪氏が社長を務めていたローソンファームや竹中平蔵氏が社外取締役を務めるオリックスである。
安倍政権が掲げてきた「稼げる農業」というスローガンは、その実態は、グローバル企業やお仲間企業だけが稼げる農業なのである。
こうした中で、農産物の自由化によって日本の農業は弱体化に拍車がかかっている。
『月刊日本 2020年1月号』では、第3特集として「日本の食と農が崩壊する」と銘打ち、日本の食糧自給を巡る危機的な状況に警鐘を鳴らしている。
今回は同特集の中から、東京大学大学院農学生命科学研究科教授である鈴木宣弘氏の論考を転載・紹介したい。
・農業を犠牲にする経産省政権
── 日米貿易協定が2020年1月に発効します。
鈴木宣弘氏(以下、鈴木): この協定について、安倍総理は「ウィン・ウィンだ」などと言っていますが、日本の完敗であることははっきりしています。
自動車に追加関税をかけるというトランプ大統領の脅しに屈して、日本は農業分野を犠牲にしたのです。
日本側の農産品の関税撤廃率は72%ですが、アメリカ側の関税撤廃率はわずか1%に過ぎません。
日本農業は、さらに大きな打撃を受け、食料安全保障の確立や自給率向上の実現を阻むことになります。
安倍政権は、「アメリカは自動車関税の撤廃を約束した」と述べていますが、署名後に開示されたアメリカ側の約束文書には「さらなる交渉次第」と書かれています。
自動車を含まなければ、アメリカ側の関税撤廃率は51%に過ぎません。
これは、少なくとも90%前後の関税撤廃率を求めた世界貿易機関(WTO)ルールに違反することになります。
安倍政権では、経産省の力がかつてないほど強まっており、自分たちの天下り先である自動車、鉄鋼、電力などの業界の利益拡大が最優先されています。
かつて、貿易交渉においては、財務、外務、経産、農林の4省の代表が並んで交渉し、農業分野の交渉では農水省が実権を持っていましたが、今や農水省は発言権が奪われています。
内閣人事局制度によって官邸に人事権を握られた結果、農水官僚たちも抵抗できなくなっているのです。
「農水省が要らなくなることが理想だ」と公言する人物が農水省の次官になるような時代なのです。
・危機に陥る食料自給
── 協定が発効すると、アメリカ産の牛肉や豚肉の関税が一気に下がります。
鈴木:牛肉の関税は、現在の38・5%から26・6%に一気に引き下げられ、2033年度には9%となります。
豚肉も、高級品については関税を段階的に下げ、最終的にゼロとなります。低価格部位については、現状の10分の1まで下がります。
日本は、TPP11で、牛肉を低関税で輸入する限度(セーフガード)数量について、アメリカ分も含めたままの61万トンを設定しました。
ところが今回、アメリカ向けに新たに24万トンを設定したのです。日本にとっては、アメリカ分の限度が「二重」になっているということです。
しかも、付属文書には「セーフガードが発動されたら発動水準を一層高いものに調整するため、協議を開始する」と書かれているのです。
実際にセーフガードを発動することは次第に難しくなるということです。
政府は、牛肉や豚肉の価格が下がった分は補填するので、農家の収入は変わらず、生産量も変わらないと強弁しています。
しかし、生産量が低下し、自給率がさらに下がるのは確実です。
すでに牛肉の自給率は36%、豚肉の自給率は48%まで低下していますが、2035年には、牛肉、豚肉とも10%台にまで落ち込む危険性があります。
農水省は平成25年度の39%だった食料自給率を、令和7年度に45%に上げるなどと言っていますが、それを実現する気などありません。
食料自給で最も深刻なのは酪農です。
所得の低迷によって国内の酪農家の廃業が相次いでいます。
乳価を安定させ、個々の酪農家の利益を守るために機能してきた指定団体が改定畜安法によって廃止されたからです。
これに乳製品の関税引き下げが加わり、酪農家は危機感を高めています。
018年には、北海道のブラックアウトの影響で東京でも牛乳が消えました。
これは決して一過性の問題ではありません。
さらに酪農が弱体化していけば、店頭から牛乳が消えるという事態が実際に起きます。
牛乳を飲みたがっている子供に、お母さんが「ごめんね。今日は牛乳が売っていないの」と言わなければならなくなるのです。
欧米諸国ならば、暴動が起きるような事態です。
ところが、政府は「不測の事態には、バターと脱脂粉乳を追加輸入して水と混ぜて、還元乳を飲めばよい」などと言っています。
安全で新鮮な国産牛乳を確保するために、国産牛乳の増産を図るのが国民の命を守る国の使命のはずです。
ところが、政府はその責任を放棄しているのです。
食料自給は、国家安全保障の要です。
食料を安定的に国民に供給するために、自国の農業を守るのが、国の責任です。
「日本の農業所得は補助金漬け」などと批判されることがありますが、日本は3割程度です。
スイスは100%、フランス、イギリスも90%を越えています。
・日本にだけ輸出される危険な食品
── アメリカ産牛肉は安全性も問題視されています。
鈴木:日本は、BSE(牛海綿状脳症)が問題となったため、アメリカ産の牛肉輸入を「20カ月齢以下」に制限していました。
ところが、野田政権は2011年、TPP交渉への「入場料」として、「20カ月齢以下」から「30カ月齢以下」へ緩和してしまいました。
実は、24カ月齢の牛のBSE発症例も確認されているのです。
しかも、アメリカのBSE検査率は1パーセント程度で、発症していても検査から漏れている牛が相当程度いると疑われます。
また、アメリカの食肉加工場における危険部位の除去が不十分なため、危険部位が付着した輸入牛肉が日本で頻繁に見つかっています。
「20カ月齢以下」は、日本人の命を守るための最低ラインなのです。
しかし、安倍政権はアメリカに配慮して、2019年5月に月齢制限を完全撤廃してしまったのです。
また、アメリカ産の牛肉には、エストロゲンなどの成長ホルモンが使用されています。
札幌の医師が調べたところ、アメリカ産牛肉からエストロゲンが通常の600倍も検出されたのです。
ウナギ養殖のエサにごく微量たらすだけで、オスのウナギがメス化するほどの成長ホルモンなのです。
エストロゲンは乳がんや前立腺がんとの関係が疑われており、日本では牛肉生産への使用は認可されていません。
しかし、アメリカからは、エストロゲンを使用した牛肉が輸入されている疑いがあります。
検査機関は「検出されていない」と言っていますが、40年前の精度の悪い検査機械をわざわざ使用し、検出されないようにしているようです。
EUは、1989年から成長ホルモンを使用したアメリカの牛肉を輸入禁止にしています。
禁輸してから7年で、乳がんの死亡率が顕著に低下したという学会誌データも出てきています。
さらに、アメリカでは、牛や豚の餌に混ぜる成長促進剤ラクトパミンが使用されています。
ラクトパミンは、発がん性だけでなく、人間に直接中毒症状を起こす危険性があり、EUだけではなく、中国やロシアでも国内使用と輸入を禁じています。
日本でも国内使用は認可されていませんが、これまた輸入は素通りになっているのです。
アメリカの乳製品も危険です。
ホルスタインには、モンサントが開発した遺伝子組み換え成長ホルモンが使用されているからです。
この成長ホルモンを注射すると、乳量が2~3割も増えるとされています。
アメリカでは、1994年に認可されましたが、1998年に勇気ある研究者が「数年後には乳がん発症率が7倍、前立腺がん発症率が4倍になる危険性がある」と学会誌に発表したのです。
その結果、アメリカの消費者が不買運動を展開、今ではアメリカのスターバックスやウォルマートが「当社の乳製品には成長ホルモンを使用していません」と宣言せざるを得ない状況になっているのです。
ところが日本では、これほど問題になった成長ホルモンを使用した乳製品の輸入が野放しになっています。
── 安倍政権には、日本の食の安全を守る気がありません。我々は、どのようにして食の安全を守っていけばいいのですか。
鈴木:2019年10月には、ゲノム編集食品の販売が解禁されました。
しかも、表示義務もありません。
2023年には遺伝子組み換えでないという食品表示も実質的にできなくなります。
安倍政権は、世界に逆行するように、発がん性が指摘される除草剤成分「グリホサート」の残留基準値も大幅に緩和しました。
そして、貿易自由化が加速することによって、危険な輸入食品がさらに氾濫し、国産品を駆逐しようとしています。
しかも、表示がなくなれば、安全な食品を選択することも不可能です。
まさに今、日本の食の安全は瀬戸際に来ているのです。
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■安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品<鈴木宣弘氏>
ハーバー・ビジネス・オンライン(扶桑社) 2019.12.22
https://hbol.jp/pc/209175/
■水道事業、種子法、北方領土……。安倍政権が進めた政策から見えてきたもの
ハーバー・ビジネス・オンライン 2019.01.28 適菜収
https://hbol.jp/pc/184439/
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・安倍政権がどうみても「売国」である理由
すでにメッキの皮は剥がれているが、安倍晋三は保守ではなくて、構造改革論者のグローバリストである。
2006年9月26日の第一次政権の総理就任演説では、小泉構造改革路線を「しっかり引き継ぎ」、「むしろ加速させる」と発言。
2013年7月には、シンガポールで「岩盤のように固まった規制を打ち破る」ために、自分は「ドリルの刃」になると述べ、「規制改革のショーケースとなる特区も、総理大臣である私自身が進み具合を監督する『国家戦略特区』として、強い政治力を用いて、進めます」と発言。
同年9月にはニューヨークのウォール街で、自分が規制緩和により、障壁を取り除くから、日本を買うなら今だと訴えた。
2014年1月の世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)では、徹底的に日本の権益を破壊すると宣言。
電力市場の完全自由化、医療の産業化、コメの減反の廃止、法人税率の引き下げ、雇用市場の改革、外国人労働者の受け入れ、会社法の改正などを並べ立て、「そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう」と言い放った。
この“ファミコン脳”の言葉通り、戦後わが国が積み上げてきたものは、わずか6年で完全にリセットされた。
左翼も麻原彰晃も、安倍の足下にも及ばなかった。
仕舞いには安倍は「我が国がTPPを承認すれば、保護主義の蔓延を食い止める力になる」などと言いだした。
外国勢力が放送を乗っ取るようにお膳立てしたのも安倍だった。
放送法4条の撤廃を目指した放送制度改革で、安倍は、外資が放送局の株式を20%以上保有することを制限する規定の撤廃を目論んでいた。
水道事業を売り飛ばそうとしたり、種子法廃止を押し通したり。
ロシアにカネを貢いだ上、北方領土の主権を棚上げ、日韓基本条約を蒸し返して韓国に10億円を横流しした。
「移民政策はとらない」と大嘘をつきながら、国の形を完全に変えてしまう移民政策を推し進めた。
結果、日本はすでに世界第4位の移民大国になっている。
安倍がやっていることは、一昔前の「保守論壇」が厳しく非難してきたものばかりだ。
その妥当性はともかく、村山談話・河野談話を踏襲し、 憲法九条第一、二項を残しながら、第三項を新たに設け、自衛隊の存在を明記するという意味不明の加憲論により、改憲派が積み上げてきた議論を全部ぶち壊した。
さらには、震災の被災者の方々に寄り添う天皇陛下のものまねをして、茶化して見せた。
安倍は、ポツダム宣言を受諾した経緯も、立憲主義も、総理大臣の権限もまったく理解しないまま、「新しい国」をつくるという。
そもそも、「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」などという「保守」がいるはずがない。
安倍信者の中では国益や国辱にこだわる時代も過ぎ去ったのだろうか?
国会でも外交の場でも安倍は平気な顔で嘘をつく。
漢字も読めなければ、政治の基本もわからない。
自衛隊の日報隠蔽、裁量労働制のデータ捏造、森友事件における公文書改竄……。
政策立案などに使われる「基幹統計」もデタラメだった。
「消費や人口、学校など、いずれも私たちの生活と密接に関わる56の『基幹統計』のうち点検の結果、約4割にあたる22で間違いがあった」(「ロイター」1月25日)。
財務大臣の麻生太郎は「日本という国の信頼が、そういった小さなところから崩れていくのは避けなければいかん」と言っていたが、なにが「小さなところ」なのか?
要するに、国家の根幹がデタラメなのである。
状況を嘆いているだけでは仕方ないので、なぜこのような政権が続いているのかについて述べておく。
一つは現実を見たくない人が多いからだろう。
「日本を破壊したい」という悪意をもって安倍政権を支持している人間はごく一部であり、ほとんどは無知で愚鈍だから支持している。
左翼が誤解しているように安倍を支持しているのは右翼でも「保守」でもない。
そもそも右翼が4割もいるわけがない。
安倍を支持しているのは思考停止した大衆である。
大事なことは、安倍にすら悪意がないことだ。
安倍には記憶力もモラルもない。
善悪の区別がつかない人間に悪意は発生しない。
歴史を知らないから戦前に回帰しようもない。
恥を知らない。
言っていることは支離滅裂だが、整合性がないことは気にならない。
中心は空っぽ。
そこが安倍の最大の強さだろう。
たこ八郎のノーガード戦法みたいなものだ。
そして、中身がない人間は担がれやすい。
ナチスにも一貫したイデオロギーはなかった。
情報機関は常に攻撃の対象を用意し、社会に鬱積する不満やルサンチマンをコントロールする。
大衆と権力機構の直結。
20世紀以降の「悪」は純粋な大衆運動として発生する。
空気を醸成するためのテンプレートはあらかじめ用意される。
「安倍さん以外に誰がいるのか」「野党よりはマシ」「批判するなら対案を示せ」「上から目線だ」。
ネトウヨがこれに飛びつき拡散させる。
ちなみにネトウヨは「右翼」ではない。
単に日々の生活の不満を解消するために、あらかじめ用意された「敵」を叩くことで充足している情報弱者にすぎない。
安倍政権が引き起こした一連の惨状を、日本特有の政治の脆弱性の問題と捉えるか、近代大衆社会が必然的に行き着く崩壊への過程と捉えるかは重要だが、私が見る限りその両方だと思う。
前者は戦前戦中戦後を貫く日本人の「改革幻想」や選挙制度についての議論で説明できるし、後者は国際社会が近代の建前を放棄し、露骨な生存競争に突入したことで理解できる。
いずれにせよ、こうした中で、わが国は食いものにされている。
対米、対ロシア、対韓国、対中国、対北朝鮮……。
すべて外交で失敗しているのに、安倍信者の脳内では「外交の安倍」ということになっているらしい。
たしかに海外では安倍の評価は高い。
当たり前だ。安倍の存在によって利益を得ている国がケチをつけるわけがない。
プーチンにとってもトランプにとっても、北朝鮮にとっても中国にとっても、安倍政権が続いていたほうが都合がいいのだ。
結局、負けたのはわれわれ日本人である。
北海道のある大学教授が「このままでは国は滅びる」と言っていたが、状況認識が甘い。
日本はすでに滅びているのだ。
これから日本人は、不道徳な政権を放置してきたツケを払うことになるだろう。
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水道事業、種子法、北方領土……。安倍政権が進めた政策から見えてきたもの
ハーバー・ビジネス・オンライン 2019.01.28 適菜収
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