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安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品~水道事業、種子法、北方領土……。安倍政権が進めた政策から見えてきたもの~

2022-10-15 04:40:50 | 日記

 

■安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品<鈴木宣弘氏>

ハーバー・ビジネス・オンライン(扶桑社) 2019.12.22

https://hbol.jp/pc/209175/


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・日本の食と農が崩壊する!


安倍政権はアメリカが要求する農協改革の名のもとに、農業への企業参入、農業の大規模化・効率化を推進してきた。


規制改革推進派の小泉進次郎氏が自民党農林部会長に就き、「農業が産業化し、農協が要らなくなることが理想だ」と公言する奥原正明氏が農水省事務次官に就いた。

諮問会議で農業改革の議論をリードしたのは、農業の専門家ではなく、金丸恭文氏、新浪剛史氏といったグローバリストである。


結果、農業分野への参入に成功したのは、新浪氏が社長を務めていたローソンファームや竹中平蔵氏が社外取締役を務めるオリックスである。

安倍政権が掲げてきた「稼げる農業」というスローガンは、その実態は、グローバル企業やお仲間企業だけが稼げる農業なのである。


こうした中で、農産物の自由化によって日本の農業は弱体化に拍車がかかっている。

『月刊日本 2020年1月号』では、第3特集として「日本の食と農が崩壊する」と銘打ち、日本の食糧自給を巡る危機的な状況に警鐘を鳴らしている。


今回は同特集の中から、東京大学大学院農学生命科学研究科教授である鈴木宣弘氏の論考を転載・紹介したい。

 

・農業を犠牲にする経産省政権

 

── 日米貿易協定が2020年1月に発効します。

 

鈴木宣弘氏(以下、鈴木): この協定について、安倍総理は「ウィン・ウィンだ」などと言っていますが、日本の完敗であることははっきりしています。

自動車に追加関税をかけるというトランプ大統領の脅しに屈して、日本は農業分野を犠牲にしたのです。


日本側の農産品の関税撤廃率は72%ですが、アメリカ側の関税撤廃率はわずか1%に過ぎません。

日本農業は、さらに大きな打撃を受け、食料安全保障の確立や自給率向上の実現を阻むことになります。


安倍政権は、「アメリカは自動車関税の撤廃を約束した」と述べていますが、署名後に開示されたアメリカ側の約束文書には「さらなる交渉次第」と書かれています。

自動車を含まなければ、アメリカ側の関税撤廃率は51%に過ぎません。


これは、少なくとも90%前後の関税撤廃率を求めた世界貿易機関(WTO)ルールに違反することになります。

安倍政権では、経産省の力がかつてないほど強まっており、自分たちの天下り先である自動車、鉄鋼、電力などの業界の利益拡大が最優先されています。


かつて、貿易交渉においては、財務、外務、経産、農林の4省の代表が並んで交渉し、農業分野の交渉では農水省が実権を持っていましたが、今や農水省は発言権が奪われています。

内閣人事局制度によって官邸に人事権を握られた結果、農水官僚たちも抵抗できなくなっているのです。


「農水省が要らなくなることが理想だ」と公言する人物が農水省の次官になるような時代なのです。

 

・危機に陥る食料自給

 

── 協定が発効すると、アメリカ産の牛肉や豚肉の関税が一気に下がります。


鈴木:牛肉の関税は、現在の38・5%から26・6%に一気に引き下げられ、2033年度には9%となります。

豚肉も、高級品については関税を段階的に下げ、最終的にゼロとなります。低価格部位については、現状の10分の1まで下がります。


日本は、TPP11で、牛肉を低関税で輸入する限度(セーフガード)数量について、アメリカ分も含めたままの61万トンを設定しました。

ところが今回、アメリカ向けに新たに24万トンを設定したのです。日本にとっては、アメリカ分の限度が「二重」になっているということです。


しかも、付属文書には「セーフガードが発動されたら発動水準を一層高いものに調整するため、協議を開始する」と書かれているのです。

実際にセーフガードを発動することは次第に難しくなるということです。


政府は、牛肉や豚肉の価格が下がった分は補填するので、農家の収入は変わらず、生産量も変わらないと強弁しています。

しかし、生産量が低下し、自給率がさらに下がるのは確実です。


すでに牛肉の自給率は36%、豚肉の自給率は48%まで低下していますが、2035年には、牛肉、豚肉とも10%台にまで落ち込む危険性があります。

農水省は平成25年度の39%だった食料自給率を、令和7年度に45%に上げるなどと言っていますが、それを実現する気などありません。


食料自給で最も深刻なのは酪農です。

所得の低迷によって国内の酪農家の廃業が相次いでいます。


乳価を安定させ、個々の酪農家の利益を守るために機能してきた指定団体が改定畜安法によって廃止されたからです。

これに乳製品の関税引き下げが加わり、酪農家は危機感を高めています。


 018年には、北海道のブラックアウトの影響で東京でも牛乳が消えました。

これは決して一過性の問題ではありません。


さらに酪農が弱体化していけば、店頭から牛乳が消えるという事態が実際に起きます。

牛乳を飲みたがっている子供に、お母さんが「ごめんね。今日は牛乳が売っていないの」と言わなければならなくなるのです。


欧米諸国ならば、暴動が起きるような事態です。

ところが、政府は「不測の事態には、バターと脱脂粉乳を追加輸入して水と混ぜて、還元乳を飲めばよい」などと言っています。


安全で新鮮な国産牛乳を確保するために、国産牛乳の増産を図るのが国民の命を守る国の使命のはずです。

ところが、政府はその責任を放棄しているのです。


食料自給は、国家安全保障の要です。

食料を安定的に国民に供給するために、自国の農業を守るのが、国の責任です。


「日本の農業所得は補助金漬け」などと批判されることがありますが、日本は3割程度です。

スイスは100%、フランス、イギリスも90%を越えています。

 

・日本にだけ輸出される危険な食品

 

── アメリカ産牛肉は安全性も問題視されています。

 

鈴木:日本は、BSE(牛海綿状脳症)が問題となったため、アメリカ産の牛肉輸入を「20カ月齢以下」に制限していました。

ところが、野田政権は2011年、TPP交渉への「入場料」として、「20カ月齢以下」から「30カ月齢以下」へ緩和してしまいました。


実は、24カ月齢の牛のBSE発症例も確認されているのです。

しかも、アメリカのBSE検査率は1パーセント程度で、発症していても検査から漏れている牛が相当程度いると疑われます。


また、アメリカの食肉加工場における危険部位の除去が不十分なため、危険部位が付着した輸入牛肉が日本で頻繁に見つかっています。

「20カ月齢以下」は、日本人の命を守るための最低ラインなのです。


しかし、安倍政権はアメリカに配慮して、2019年5月に月齢制限を完全撤廃してしまったのです。

また、アメリカ産の牛肉には、エストロゲンなどの成長ホルモンが使用されています。


札幌の医師が調べたところ、アメリカ産牛肉からエストロゲンが通常の600倍も検出されたのです。

ウナギ養殖のエサにごく微量たらすだけで、オスのウナギがメス化するほどの成長ホルモンなのです。


エストロゲンは乳がんや前立腺がんとの関係が疑われており、日本では牛肉生産への使用は認可されていません。

しかし、アメリカからは、エストロゲンを使用した牛肉が輸入されている疑いがあります。


検査機関は「検出されていない」と言っていますが、40年前の精度の悪い検査機械をわざわざ使用し、検出されないようにしているようです。

EUは、1989年から成長ホルモンを使用したアメリカの牛肉を輸入禁止にしています。


禁輸してから7年で、乳がんの死亡率が顕著に低下したという学会誌データも出てきています。

さらに、アメリカでは、牛や豚の餌に混ぜる成長促進剤ラクトパミンが使用されています。


ラクトパミンは、発がん性だけでなく、人間に直接中毒症状を起こす危険性があり、EUだけではなく、中国やロシアでも国内使用と輸入を禁じています。

日本でも国内使用は認可されていませんが、これまた輸入は素通りになっているのです。


アメリカの乳製品も危険です。

ホルスタインには、モンサントが開発した遺伝子組み換え成長ホルモンが使用されているからです。


この成長ホルモンを注射すると、乳量が2~3割も増えるとされています。

アメリカでは、1994年に認可されましたが、1998年に勇気ある研究者が「数年後には乳がん発症率が7倍、前立腺がん発症率が4倍になる危険性がある」と学会誌に発表したのです。


その結果、アメリカの消費者が不買運動を展開、今ではアメリカのスターバックスやウォルマートが「当社の乳製品には成長ホルモンを使用していません」と宣言せざるを得ない状況になっているのです。

ところが日本では、これほど問題になった成長ホルモンを使用した乳製品の輸入が野放しになっています。

 

── 安倍政権には、日本の食の安全を守る気がありません。我々は、どのようにして食の安全を守っていけばいいのですか。

 

鈴木:2019年10月には、ゲノム編集食品の販売が解禁されました。

しかも、表示義務もありません。


2023年には遺伝子組み換えでないという食品表示も実質的にできなくなります。

安倍政権は、世界に逆行するように、発がん性が指摘される除草剤成分「グリホサート」の残留基準値も大幅に緩和しました。


そして、貿易自由化が加速することによって、危険な輸入食品がさらに氾濫し、国産品を駆逐しようとしています。

しかも、表示がなくなれば、安全な食品を選択することも不可能です。


まさに今、日本の食の安全は瀬戸際に来ているのです。

 

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■安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品<鈴木宣弘氏>
ハーバー・ビジネス・オンライン(扶桑社) 2019.12.22
https://hbol.jp/pc/209175/

 

 

 

 

■水道事業、種子法、北方領土……。安倍政権が進めた政策から見えてきたもの

ハーバー・ビジネス・オンライン 2019.01.28 適菜収

https://hbol.jp/pc/184439/


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・安倍政権がどうみても「売国」である理由


すでにメッキの皮は剥がれているが、安倍晋三は保守ではなくて、構造改革論者のグローバリストである。


2006年9月26日の第一次政権の総理就任演説では、小泉構造改革路線を「しっかり引き継ぎ」、「むしろ加速させる」と発言。


2013年7月には、シンガポールで「岩盤のように固まった規制を打ち破る」ために、自分は「ドリルの刃」になると述べ、「規制改革のショーケースとなる特区も、総理大臣である私自身が進み具合を監督する『国家戦略特区』として、強い政治力を用いて、進めます」と発言。


同年9月にはニューヨークのウォール街で、自分が規制緩和により、障壁を取り除くから、日本を買うなら今だと訴えた。

2014年1月の世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)では、徹底的に日本の権益を破壊すると宣言。


電力市場の完全自由化、医療の産業化、コメの減反の廃止、法人税率の引き下げ、雇用市場の改革、外国人労働者の受け入れ、会社法の改正などを並べ立て、「そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう」と言い放った。


この“ファミコン脳”の言葉通り、戦後わが国が積み上げてきたものは、わずか6年で完全にリセットされた。

左翼も麻原彰晃も、安倍の足下にも及ばなかった。


仕舞いには安倍は「我が国がTPPを承認すれば、保護主義の蔓延を食い止める力になる」などと言いだした。 


外国勢力が放送を乗っ取るようにお膳立てしたのも安倍だった。

放送法4条の撤廃を目指した放送制度改革で、安倍は、外資が放送局の株式を20%以上保有することを制限する規定の撤廃を目論んでいた。


水道事業を売り飛ばそうとしたり、種子法廃止を押し通したり。

ロシアにカネを貢いだ上、北方領土の主権を棚上げ、日韓基本条約を蒸し返して韓国に10億円を横流しした。


「移民政策はとらない」と大嘘をつきながら、国の形を完全に変えてしまう移民政策を推し進めた。

結果、日本はすでに世界第4位の移民大国になっている。


安倍がやっていることは、一昔前の「保守論壇」が厳しく非難してきたものばかりだ。


その妥当性はともかく、村山談話・河野談話を踏襲し、 憲法九条第一、二項を残しながら、第三項を新たに設け、自衛隊の存在を明記するという意味不明の加憲論により、改憲派が積み上げてきた議論を全部ぶち壊した。


さらには、震災の被災者の方々に寄り添う天皇陛下のものまねをして、茶化して見せた。

安倍は、ポツダム宣言を受諾した経緯も、立憲主義も、総理大臣の権限もまったく理解しないまま、「新しい国」をつくるという。


そもそも、「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」などという「保守」がいるはずがない。

安倍信者の中では国益や国辱にこだわる時代も過ぎ去ったのだろうか?


国会でも外交の場でも安倍は平気な顔で嘘をつく。

漢字も読めなければ、政治の基本もわからない。


自衛隊の日報隠蔽、裁量労働制のデータ捏造、森友事件における公文書改竄……。

政策立案などに使われる「基幹統計」もデタラメだった。


「消費や人口、学校など、いずれも私たちの生活と密接に関わる56の『基幹統計』のうち点検の結果、約4割にあたる22で間違いがあった」(「ロイター」1月25日)。

財務大臣の麻生太郎は「日本という国の信頼が、そういった小さなところから崩れていくのは避けなければいかん」と言っていたが、なにが「小さなところ」なのか?


要するに、国家の根幹がデタラメなのである。

状況を嘆いているだけでは仕方ないので、なぜこのような政権が続いているのかについて述べておく。


一つは現実を見たくない人が多いからだろう。

「日本を破壊したい」という悪意をもって安倍政権を支持している人間はごく一部であり、ほとんどは無知で愚鈍だから支持している。


左翼が誤解しているように安倍を支持しているのは右翼でも「保守」でもない。

そもそも右翼が4割もいるわけがない。


安倍を支持しているのは思考停止した大衆である。

大事なことは、安倍にすら悪意がないことだ。


安倍には記憶力もモラルもない。

善悪の区別がつかない人間に悪意は発生しない。


歴史を知らないから戦前に回帰しようもない。

恥を知らない。


言っていることは支離滅裂だが、整合性がないことは気にならない。

中心は空っぽ。


そこが安倍の最大の強さだろう。

たこ八郎のノーガード戦法みたいなものだ。


そして、中身がない人間は担がれやすい。

ナチスにも一貫したイデオロギーはなかった。


情報機関は常に攻撃の対象を用意し、社会に鬱積する不満やルサンチマンをコントロールする。

大衆と権力機構の直結。


20世紀以降の「悪」は純粋な大衆運動として発生する。

空気を醸成するためのテンプレートはあらかじめ用意される。


「安倍さん以外に誰がいるのか」「野党よりはマシ」「批判するなら対案を示せ」「上から目線だ」。

ネトウヨがこれに飛びつき拡散させる。


ちなみにネトウヨは「右翼」ではない。

単に日々の生活の不満を解消するために、あらかじめ用意された「敵」を叩くことで充足している情報弱者にすぎない。


安倍政権が引き起こした一連の惨状を、日本特有の政治の脆弱性の問題と捉えるか、近代大衆社会が必然的に行き着く崩壊への過程と捉えるかは重要だが、私が見る限りその両方だと思う。


前者は戦前戦中戦後を貫く日本人の「改革幻想」や選挙制度についての議論で説明できるし、後者は国際社会が近代の建前を放棄し、露骨な生存競争に突入したことで理解できる。


いずれにせよ、こうした中で、わが国は食いものにされている。

対米、対ロシア、対韓国、対中国、対北朝鮮……。


すべて外交で失敗しているのに、安倍信者の脳内では「外交の安倍」ということになっているらしい。

たしかに海外では安倍の評価は高い。


当たり前だ。安倍の存在によって利益を得ている国がケチをつけるわけがない。

プーチンにとってもトランプにとっても、北朝鮮にとっても中国にとっても、安倍政権が続いていたほうが都合がいいのだ。


結局、負けたのはわれわれ日本人である。

北海道のある大学教授が「このままでは国は滅びる」と言っていたが、状況認識が甘い。


日本はすでに滅びているのだ。

これから日本人は、不道徳な政権を放置してきたツケを払うことになるだろう。


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水道事業、種子法、北方領土……。安倍政権が進めた政策から見えてきたもの
ハーバー・ビジネス・オンライン 2019.01.28 適菜収
https://hbol.jp/pc/184439/


安倍政権、強硬に水道の事実上完全民営化を進める背景…“外資支配”に貢献する麻生太郎副総理~水道民営化のウラに…麻生財務相“身内に利益誘導”の怪情報~

2022-10-15 04:40:29 | 日記

 

■安倍政権、強硬に水道の事実上完全民営化を進める背景…“外資支配”に貢献する麻生太郎副総理

exciteニュース(エキサイトニュース)2019年2月3日(Business Journal)

https://www.excite.co.jp/news/article/Bizjournal_mixi201902_post-14427/


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2018年12月6日、国会で「改正水道法」が可決・成立し、同月12日に公布された。

同法は公布日から1年以内に施行される。


かつて「水道民営化」で水質悪化や料金値上げなどにあえいだ諸外国は、民間企業と契約して数十年を経たのち、続々と「再公営化」に向かった。

それらの失態を見聞きした日本の世論は、今回の法改正が「水道民営化への扉を開く」と反発したが、安倍晋三内閣は「そもそも民営化ではない。


水道管の老朽化対策には官民連携による民間資金の活用が必要」と押し通し、法案を強行採決した。

実は、改正水道法の条文にはカラクリがある。


本稿では、ほかの周辺法や制度と連動して仕込まれた法改正の急所と狙いを、懸念される「民営化」や「外資支配」の虚実とともに数回に分けて明らかにする。

 

・厚労省が「すべての管路改修に130年」と試算

 

日本の水道普及率は97.9%。

管路(水道管)の総延長距離は地球16周分の66万㎞。


有収水量は1日で約3600万立法メートル(厚生労働省が17年にまとめた資料より抜粋。以下同。「有収水量=料金徴収対象の水量」は15年実績)。

その水質は極めて高く、水道管は原則として人が住む全国の隅々にまで行きわたり、利用料金も低額で安定している。


まさしく世界に誇る水道インフラだ。

水道は水を運ぶ社会基盤である。


水は空気とともに生存に直結するため、その公益性は数あるインフラのなかでもっとも高い。

そのため、水道事業はこれまで個別委託を除けば「営利事業」から隔てられ、地域住民の生活を守るべき自治体などの公的主体が経営してきた。


国内で人や企業が使う水は、海水を淡水化した人工の水を除けば、水源となるダムや川から取水される。

そこから導水管を通って水道用水が浄水場に運ばれるまでの供給事業数は92。


浄水場から配水池へと流れ込み、配水管で各地域に送られた水が給水管を通じて利用者に届けられる。

配水池から先の供給事業数は上水道が1355、簡易水道が5133。


これらを担う事業体は、従来から個別業務を民間にも委託してきた。

厚労省は、水道の現状をまとめた資料で「管路の法定耐用年数は40年」「改修を要する年間更新率は全国平均で約0.75%」と報告した。


この更新率で100%を割れば133.3。

厚労省は「全ての管路改修を終えるまでに130年かかる」と試算している。


水道事業関係者は、老朽化した水道管の改修費を1億円超/kmと見積もっている。

同資料に管路総延長中の必要更新比率が明記されているということは、国や自治体、個々の事業体が、経年劣化する管路に改修が必要なことを承知していたということだ。

それにもかかわらず、将来の設備投資としてそのコスト試算を組み込んでこなかったのはなぜか。

生存に欠かせない公共サービスを財政難を理由に放り出せば、政府や自治体の存在意義は失われる。


従って、その維持・管理・運営に要する予算措置は当然、最優先されねばならない。

利権優先で無駄なハコモノや天下り用の特殊法人を量産したり、自国の財政事情を承知で莫大な金を国庫から海外支援にばらまいたりすれば、納税者の金が水道改修のような公益事業に回せなくなるのは自明の理だ。

 

・麻生太郎の「日本の水道は民営化します!」発言

 

18年暮れに成立した改正水道法は、サービスの劣化を招く民営化につながるとの強い批判を浴びた。


しかし、安倍内閣は「改正水道法は民営化などではなくコンセッション方式である」「民間企業のノウハウを活用してコストダウンすれば水道料金が抑えられるし、老朽化した水道管の改修費も出てくる」として世論の批判を一蹴し、法案を強行採決した。


コンセッション方式とは、自治体などの公的主体が公共施設を所有したまま、料金収受業務を含む包括的な「運営権」を企業に売却する仕組みだ。

東日本大震災が勃発した11年、「改正PFI法」(PFI=プライベート・ファイナンス・イニシアティブ/民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が成立し、コンセッション方式による契約が実施可能となった。


政府は水道民営化を否定する。

だが、この改正PFI法(以降、本稿では便宜上「旧PFI法」と呼称する)を法的根拠とする水道事業のコンセッション契約は、運営だけでなく施設も売却する「完全民営化」にもっとも近く、それは「事実上の民営化」である。


なぜなら、施設所有権が自治体に残されても、運営権を長期的・包括的に握る民間企業が日常的にもろもろを決定すれば、それは実態としての「経営」そのものだからだ。

検針や浄水場管理など個別業務の委託は従来から行われてきたが、コンセッション方式はまったく次元の異なるものなのである。


改正水道法への反対世論には、再公営化する海外の経過を見て「日本の水も民営化で外資に支配されるのではないか」との不安が含まれていた。

その不安を煽った張本人が、安倍内閣で金融担当の内閣府特命担当大臣や財務大臣など要職を担う麻生太郎副総理である。


すでに広く知られた麻生氏の発言「日本の水道は民営化します!」は、改正水道法の狙いを検証する上で欠かせないトピックでもある。

講演の前段も加えて、ここで正確に再録しておこう。


13年4月19日(米国東部時間)、米国本拠の民間シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の会見に登壇した麻生氏は、満面の笑顔で開口一番「麻生太郎です。私も戻ってきました!」とあいさつし、米国産業が関心を抱きそうな日本のさまざまな市場について“報告”した。

講演後、質疑応答の後半で麻生氏が得意げに宣言したのが水道民営化である。


以下は、そのときの発言を文字に起こしたものだ(用語の重複や接続詞は筆者が一部加工。それ以外の名詞や数字などは原文ママ)。


「……水道とかいうものは、世界中ほとんどプライベートの会社が運営しておられますが、日本では自治省以外では扱うことはできません。水道料金を99.99%回収するシステムを持っている国は日本の水道会社以外にはありませんけれども、この水道はすべて、国営もしくは市営、町営でできていて、こういったものをすべて民営化します! いわゆる公設民営などもアイデアとして上がってきつつあります」


講演冒頭の「戻ってきた」が「米国に」なのか「CSISに」なのかはよくわからないが、それはある意味で、質疑応答で洩らした「民営化宣言」以上に衝撃的だと受け取る国民も少なくないのではないか。

 

・水メジャーの仏ヴェオリアがすでに日本進出

 

水道の分野でコンセッション方式による国内初となった成約事例が、静岡県浜松市とフランスのヴェオリア社を代表とする6社連合(ヴェオリア・ジャパン、ヴェオリア・ジェネッツ、JFEエンジニアリング、オリックス、須山建設、東急建設)の特別目的会社HWS(浜松ウォーターシンフォニー)との「下水道コンセッション」である。


HWSが運営するのは、浜松市内で下水5割を処理する終末処理場の西遠浄化センターやポンプ場など。契約書に記載された契約期間は17年10月30日から38年3月31日の約20年間。

同市と運営権者HWSが合意すれば、最長で43年3月31日まで延長される。


期間中に同市が得る運営権対価は25億円だ。

仏ヴェオリア社は、周知のように「水メジャー」として知られるフランス本拠の多国籍巨大企業。


水処理では世界最大手だ。

同社のような水メジャーの多くは欧米本拠である。


麻生講演の質疑応答で、隣に座る米CSIS日本幹部を気にしながら麻生氏が「戻ってきて報告した面々」は、同社をはじめとして日本の水道インフラ市場に業務委託その他のかたちですでに広く深く潜り込んでいる。


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■安倍政権、強硬に水道の事実上完全民営化を進める背景…“外資支配”に貢献する麻生太郎副総理
exciteニュース(エキサイトニュース)2019年2月3日
https://www.excite.co.jp/news/article/Bizjournal_mixi201902_post-14427/

 

 

 

 

■水道民営化のウラに…麻生財務相“身内に利益誘導”の怪情報

日刊ゲンダイ(講談社)2018/12/12

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/243479

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10日閉幕した臨時国会で、安倍政権が強行成立させた「水道民営化法」を巡り、かねて民営化を推進してきた内閣府に“水メジャー”の仏「ヴェオリア」の日本法人社員が出向していたことが発覚。

「利益誘導だ」と批判が噴出したが、実は「麻生財務相も一枚かんでいるのでは」との怪情報がSNS上で飛び交っている。

日刊ゲンダイは真相を追った。

〈麻生太郎の娘婿がヴェオリア社の幹部〉

〈麻生太郎の娘がヴェオリアの重役と結婚しフランス在住〉

〈水道民営化して(麻生の)娘は大儲け〉――。

ネット上には今、こんな投稿があふれ返っている。

まず、麻生氏の娘についてだが、フランス人男性と結婚したのはまぎれもない事実。

「週刊文春」(2014年1月30日号)によると、麻生氏の娘は、同年1月中旬に結婚お披露目会をパリで開催した。

会場は、フランスで200年以上の歴史を持つ5つ星ホテル「ル・ムーリス」。

両家と近しい関係者約30人が参加した夕食会は、ルイ15世の寵愛を受けた公妾の肖像画が飾られている「ポンパドゥール夫人の間」だった。

麻生氏の娘は東大文学部で美術について学び、卒業後、イギリスの大学に留学。

フランス人の夫とは、美術品のオークションなどを手掛ける会社に勤めてから知り合ったという。


・野党議員の追及に色をなして反論


一方、夫がヴェオリアに勤めているかどうかは真偽不明だ。

事実を裏付けるだけの情報を得ることはできなかった。

ただ、妙な疑いを持たれているのは、麻生氏の過去の発言が原因となった可能性が高い。

麻生氏は、娘の結婚お披露目会の約9カ月前、13年4月に米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」の講演で、「(日本の)水道はすべて国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものをすべて民営化します」とぶち上げたのだ。


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■水道民営化のウラに…麻生財務相“身内に利益誘導”の怪情報
日刊ゲンダイ(講談社)2018/12/12
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/243479

 

 

 


■世界「3大水メジャー」がついに「一強」になった歩みと今後の展開や懸念

ヤフーニュース(2020/5/17)

https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotojunji/20210517-00238333/


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・水ビジネスの巨人「ウォーター・バロン」と言われた2社


水ビジネス世界大手仏ヴェオリアが、同業仏スエズを買収することで最終合意したと発表した。

買収総額は約260億ユーロ(約3兆4000億円)。

売上高約370億ユーロの巨大企業が誕生する。

 

「仏ヴェオリアがスエズ買収で合意 3兆4千億円」(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR150CH0V10C21A5000000/

 

ここでは水ビジネスの巨人「ウォーター・バロン」と言われた2社の歩みを振り返る。


・日本にも進出しているヴェオリア

ヴェオリアは、仏リヨン市で1853年に創業したジェネラルデゾー社が母体となっている。

フランス共和国の第二帝政時代、ナポレオン三世は都市部の水道システムを運営する民間企業が必要と考え、勅令によって誕生した。

事業は上下水道に止まらない。

1960代以降、廃棄物処理やエネルギーも取り扱い、いわゆるライフライン事業を主体にしている。

1980年代以降、通信・メディア事業、都市交通などにも進出したが、現在は本業に集中する方向だ。

2019年のグループ連結売上高は271億ユーロ(約3兆4200億)で、水部門が41%、廃棄物部門が37%、エネルギー部門22%という比率だ。

日本にも進出しており、西原環境(エンジニアリング)、ジェネッツ(料金徴収・顧客サービス)、フジ地中情報(漏水管理・料金徴収)などを傘下に収め、上水道事業や廃棄物処理の業務を行っている。

2019年度は、69か所の浄水場運転、80か所の下水処理上運転、180自治体の料金徴収、999件の漏水調査受託を行っている。

現在宮城県で進む水道事業のコンセッションにおいても、ヴェオリア・ジェネッツ社は運営候補グループのなかの1社である。

 

・スエズ運河とも縁あり


スエズは、もともと1880年に創業したリヨネーズ・デソーという企業で、水道と電力を事業の柱にしていた。

フランス国内の建設会社と合併してリヨネーズデゾー・デュメズとなった後、スエズ運河の建設・運営会社であるスエズと合併し、スエズ・リヨネーズデゾーとなった。

その後、グループ内の再編、建設部門の売却などを経て、スエズ・エンバイロメントとなった。

2006年にはイタリアの電力大手エネルから敵対的買収を仕掛けられた。

これに対し、ドビルパン仏首相(当時)は、「フランス企業を守れ」のスローガンを掲げ、スエズ買収を阻止すべく、フランスのガス公社(GDF)との合併を主導した。

国営企業と民間企業の合併ゆえ、労務問題や利益配分、支配権の確立など数多くの難題があり交渉は難航したが、2007年5月に就任したサルコジ大統領(当時)が先頭に立ち、急転直下で合併合意にこぎつけた。

電力事業はGDFに移し、GDF傘下のスエズ・エンバイロメント(水道・廃棄物事業)となった(2016年4月に再度スエズに社名変更)。

2019年度の年間売上げは、連結売上高は180億ユーロ(約2兆2700億円)で、水部門56%、廃棄物部門44%という割合になっている。

日本での事業活動はないが、水道事業のコンセッション等の獲得に向け、2018年12月に前田建設と共同取組を行う覚書を締結している。


・2大水メジャーがフランス企業である理由


両者ともフランス企業だが、偶然ではない。

フランスは自治体の規模が小さく、人口6500万人に対し、自治体数は3万7000ある。

9割の自治体の人口は2000人足らず。そのため自治体は、都市交通、廃棄物の収集や処理、上下水道などの行政サービスを独自に行うことができず、民間企業に任せてきた。

シラク元大統領はパリ市長時代に、市内をセーヌ川で二分し、片方の水道事業をヴェオリアに、もう片方をスエズに任せた。

その結果、両者は水道事業のノウハウを蓄積することができた。

転機が訪れたのは1980年代。

フランスの国内上下水道市場が飽和した。

そこで大統領のトップ外交によって海外進出を図った。

ヴェオリア、スエズは先行者の利を活かし、世界の民営化された水道事業のほとんどを握り、「水メジャー」「ウォーターバロン(水男爵)」などと呼ばれた。

かつては「3大水メジャー」といわれ、英国のテムズウォーターを含んだが、現在同社は国内に特化して事業を行っている。

ヴェオリア、スエズの「2大水メジャー」だったわけだが、今回の買収によりついに世界最大の水メジャーが誕生した。


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■世界「3大水メジャー」がついに「一強」になった歩みと今後の展開や懸念
ヤフーニュース(2020/5/17)
https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotojunji/20210517-00238333/

 

 

 

 

■スエズ運河のコンテナ船座礁事故 1日1兆500億円の海上輸送を止める サプライチェーンの弱点再び
Yahoo!ニュース 2021/3/27 木村正人 | 在英国際ジャーナリスト
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20210327-00229587/

 

 

 

 

■宮城県、水道運営権を民間に売却へ 上下水道含めた委託は全国初

毎日新聞 2021/7/5

https://mainichi.jp/articles/20210705/k00/00m/040/209000c


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宮城県議会は5日、上下水道と工業用水の20年間の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」の関連議案を賛成多数で可決した。

上水道を含めた3事業一括の民間委託は全国初で、県は2022年4月の事業開始を予定する。

県は引き続き施設を所有し、水質管理や経営監視も行うとしている。

議会には、水処理大手メタウォーター(東京)やフランスのヴェオリアグループの関連企業など10社で構成する企業グループに運営権を設定する議案のほか、グループの財務状況などを議会に報告するよう求める条例も提出され、可決・成立した。

水道3事業の運営権だけを民間に売却する「みやぎ型」を巡っては、人口減や設備の老朽化による利用者の負担増を抑えるためとして、村井嘉浩知事が中心となって推進。

外資系企業の参入に対する不安や運営形態が不明確との声もあり、導入に反対する市民団体が約2万筆の署名を集めた。


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■宮城県、水道運営権を民間に売却へ 上下水道含めた委託は全国初
毎日新聞 2021/7/5
https://mainichi.jp/articles/20210705/k00/00m/040/209000c

 

 

 

 


■外資が水道事業で攻勢、仏ヴェオリアが松山市から受託

2012年3月13日

https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1302A_T10C12A3000000/


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世界最大の水事業会社であるフランスのヴェオリア・ウォーターの日本法人、ヴェオリア・ウォーター・ジャパン(東京都港区)が2012年4月から、松山市の浄水場の運転業務などを始める。

外資系企業が単独で日本の自治体の水道業務を受託するのは初めて。

ヴェオリアが手掛けるのは、市之井手や垣生など4カ所の浄水場の運転や設備の維持管理などの業務。

このほか、公共側が資金を調達して民間企業に建設や維持管理を委託する「DBO(Design Build Operate)」方式によって栗田工業などが建設した高井神田浄水場とかきつばた浄水場の配水業務なども担う。

松山市が2011年8月~11月に実施した公募型プロポーザルを経て、12月26日に市と契約した。

契約期間は2012~2016年度の5年間で、受託金額は12億9654万円。

ヴェオリアが関わる6カ所の浄水場の給水量は1日当たり計14万t(給水能力は計20万t)。

松山市の給水区域のほぼ全域をカバーし、人口の9割強に当たる約48万人に水を供給する。

同社が日本の自治体から受託した水道業務のなかでは最大規模となる。

これまで松山市では、三菱商事などが出資するジャパンウォーター(東京都千代田区)が水道業務に携わってきた。

2004~2006年度に垣生浄水場、2005~2006年度に市之井手浄水場、2007~2011年度に両浄水場で、それぞれ運転業務などを受託。

同社は、2012年度以降も業務継続を目指してプロポーザルに参加したが、一騎打ちとなったヴェオリアに技術面やコスト面で敗れた。

日本の水道市場の規模は2兆~3兆円と言われる。

松山市のケースを機に、ヴェオリアをはじめとする海外勢と日本勢との競争が激化する可能性がある。


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■外資が水道事業で攻勢、仏ヴェオリアが松山市から受託
2012年3月13日
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1302A_T10C12A3000000/

 


【安倍政権が水道事業を売り飛ばす暴挙、海外企業とも癒着】安倍政権の水道民営化で都市部の水が外資に狙われる

2022-10-15 04:39:57 | 日記

 

■安倍政権の水道民営化で都市部の水が外資に狙われる…海外では料金高騰やコレラ蔓延も

Business Journal 2019.11.14

https://biz-journal.jp/2019/11/post_128034.html


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10月1日から、消費税率が8%から10%へ引き上げられたのと同時に、「改正水道法」が施行された。

実質的な水道民営化を推進する同法は、その是非をめぐって物議を醸した末、昨年12月に臨時国会で成立していた。

そして、いよいよ施行されたわけだが、世の中の関心が消費増税ばかりに向いていたため、知らなかったという人も多いだろう。

これによって、数年後には水道事業に「コンセッション方式」が導入されるとの見方も出ている。

コンセッション方式とは、公共施設などの「運営権」を民間事業者に売却する仕組みのことだ。

所有権は自治体などの公的機関が持ったままだが、公的機関は売却によって利益を得ることができるほか、経営を民間に任せることで運営のリスクを抱えなくても済むことになる。

表向きは「民間による効率的な運営」や「地方自治体の財政健全化」がうたわれているが、公共性の高い水道事業が民営化されることへの反発も多い。

経済ジャーナリストの荻原博子氏は、以下のように語る。


「民営化というのは、決してバラ色ではありません。それは、今のJR各社を見ればわかることです。1980年代、赤字に陥っていた国鉄が分割民営化されましたが、JR東日本やJR西日本が儲かる鉄道会社として成功している一方で、JR北海道やJR四国は赤字が続いており、いわば格差が激しくなっています。また、株主構成を見れば、JR東日本の株主の約3分の1は外国資本が占めていますが、JR北海道は実質的に国営のままです。つまり、民営化によって、企業は儲かりそうなところにしか参入しないということです。水は人間の生活にとって必要不可欠なものですから、それが利益重視の民間に抑えられてしまうというのは大きな不安要素です」(荻原氏)

 

・危惧される水道料金の高騰と質の低下


懸念されるのは、“水メジャー”と呼ばれる国際的な巨大企業による日本の水道インフラの掌握だ。

すでに、フランスのスエズ・エンバイロメントとヴェオリア・ウォーター、イギリスのテムズ・ウォーターなどの名前が取り沙汰されている。

荻原氏は、「大きく問題になるのは料金高騰と品質低下です」と語る。


「世界の事例を見ても、民営化によって料金の高騰や質の低下が起きています。フランスのパリでは25年間で水道料金が約3倍になった結果、再公営化されました。また、南アフリカでは民営化で水道料金が跳ね上がり、支払えない貧困家庭の人々が汚染された川の水を飲むなどして、約25万人がコレラに感染。やはり、再び公営に戻されています。前述したように、民間は都市部などの“おいしいところ”にしか入ってこないでしょう。それは、儲かるところという意味です。そういう地域は人口が多いため、必然的に多くの人が料金高騰などの煽りを受けることになります。一方で、地方はいわば見捨てられ、インフラ維持のために少ない住民が高いコストを負担するという構図が続きそうです。ただでさえ、水道料金は管轄する自治体によって大きな差があるのが実情です。そして、たとえば財政再建中で水道料金も全国トップクラスの北海道夕張市に、わざわざ外資が参入して状況が好転するとは考えにくい。そのため、過疎地をはじめとする地方ではサービスや水質が低下する一方で料金は高くなり、現状の地域格差がさらに広がっていくことが危惧されます」(同)


民営化によって、水道事業に“第2のJR北海道”が生まれかねないというわけだ。

「水はなくてはならないものなので、高くなっても買わざるを得ません。しかも、ミネラルウォーターは軽減税率が適用されるので消費税8%ですが、水道水は10%なのです」(同)

昨年12月の臨時国会では、「70年ぶりの大改革」として漁業権を企業に開放する「改正漁業法」が成立した。

さらに、今年6月の通常国会では「改正国有林野管理経営法」が成立、来年4月に施行される見込みだ。

これは、最長50年間、全国の国有林を大規模に伐採・販売する権利を民間事業者に与えるものである。

「民間に水を売り、海を売り、森林を売り……。さらに、米国との日米貿易協定では日本の農業が脅かされるような内容で合意されました。これから、私たちの生活はどうなってしまうのでしょうか」(同)

安倍晋三首相の通算在任日数は11月20日で計2886日の桂太郎を超え、憲政史上最長を記録する。

長期政権を謳歌する安倍政権は、日本のインフラや産業をどうするつもりなのだろうか。


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■安倍政権の水道民営化で都市部の水が外資に狙われる…海外では料金高騰やコレラ蔓延も
Business Journal 2019.11.14
https://biz-journal.jp/2019/11/post_128034.html

 

 

 

 

 

■【水道法】民営化、欧米でも失敗続きー安倍政権が水道事業を売り飛ばす暴挙、海外企業とも癒着

Yahoo!ニュース 2018/12/6 志葉玲

https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20181206-00106702

 

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誰にとっても生活に欠かせないものが水だ。

その水を供給する水道事業は現在、地方公共団体である各地の公営事業体によって運営されている。

安心で安価な水が24時間いつでも供給されることが当たり前―そんな日本の水道事業が、今日、国会で採決されようとしている水道法改正案によって大きく変わるかもしれない。

 

◯水道事業は民間企業となじまない


上下水道事業などで働く労働者の組合「全日本水道労働組合」の辻谷貴文・書記次長は「水道法改正そのものには、一概に全否定するわけではありませんが、一つ大きな問題があります」と語る。

「水道施設の老朽化や人材不足、災害時の対応など、水道事業の基盤強化は今回の水道法改正案の要であり、私達現場の労働者も求めてきたことで、それ自体は良いことだと思います。ただし、水道法改正案にある“官民連携の推進”については懸念しています。水道施設の運営権を民間企業に与えるという『コンセッション方式』が推進されるのですが、これは安価で安全な水を、1年365日、1秒たりとも絶やすことのないようにするという、日本の水道事業が担ってきた責任を損なうものになりかねません」(同)。

コンセッション方式とは、事業の運営権を、民間企業に売り、その企業が事業を実施、水道料金を収入として企業が得る、というもの。

辻谷氏は「利益を出すことが最大の目的である民間企業は水道事業となじまない」と言う。

「水が無くては人間は生きていけません。ですから、水道料金というものは、事業に経費が掛かっても極力安くしないといけませんし、人口が減少していますから水道料金の収益も下がり、多くの地域での水道事業は赤字です。民間企業が事業を運営するとなると、コストカットしたとしても、経営として非常に厳しくなります。そうなると、水道料金を値上げするか、水道管の維持・メンテナンスなどの必要な経費も削らないといけなくなる。海外の事例では水道事業を任された民間企業が多額の経費を自治体に請求してきたという事例もあります」(同)。

 

◯水道事業の民営化の失敗、世界で235例


「世界各地の事例を見ても、公営の水道事業から民営化して成功したところなど、ほとんどありません」と辻谷氏は言う。

「その挙句、フランスのパリ市の様に、民営化した水道事業を再び、公営化するという事例が相次いでいます。こうした再公営化は、世界全体で235件にも達しているのです」(同)

辻谷氏は「民営化論者が『成功事例』としている、イギリスのイングランドでの民営化も、問題だらけ」と語る。

「サービスの低下や漏水率の上昇、汚職の頻発などで、世論調査では住民の70%が再公営化を望んでいるという有様です。こうした海外の事例を見ても、コンセッション方式の導入が失敗するであろうことは、明らかだといえるでしょう。ただ、今回の水道法改正が通ってしまうと、そうした海外の事例に疎い地方自治体の首長がコンセッション方式を地元の水道事業に導入してしまうかもしれません」(同)。

一度、コンセッション方式を導入してしまうと、民間企業では上手くいかなくて再び公営事業体に運営を戻すにしても「そう簡単にはいかないこともあり得ます」と辻谷氏は指摘する。

「民間企業に運営を任せることで、公営事業体の人材、技術が弱体化してしまう、あるいは失われてしまうかもしれません。最悪の場合、運営権を持つ民間企業が倒産した場合など、一時的に水道が止まってしまう可能性もないとは言えません。運営権を持つ企業にファンドなどが投資した場合には、再公営化の手続きも複雑で、コストのかかるものとなるでしょう」(同)。

 

◯水道事業の再公営化も大変


辻谷氏の言う通り、海外の事例を見ると、民営化にも、再公営化にもリスクが伴うようだ。

水道公営化問題について調査を行っているオランダのシンクタンク「トランスナショナル研究所」の報告書によれば、米国のインディアナポリス市では、2002年から水道事業を請け負った民間企業が水質の安全対策を怠ったり、住民への過剰な請求をしたため、2010年、市当局は再公営化を決定。だが、20年間の契約を10年間に短縮するかわりにその企業に2900万ドルを支払う羽目となった。

ドイツのベルリン州も、1999年に水道公社の株を民間企業に売却した結果、水道料金の高騰や設備管理の低下を招き、2013年に州が株を買い戻すことになったものの、13億ユーロもの資金が必要となり、その経費は水道料金に上乗せされることになった。

 

◯外国の水道関連企業が内閣府職員として水道法改正に関与!?

 

さらに、水道法改正案の立案に、フランスの水道関連大手ヴェオリア社の職員が、内閣府の「民間資金等活用事業推進室」に政策調査員として在籍していることが、今年11月29日の参院厚生労働委員会での福島みずほ参議院議員の追及で明らかになった。

水道法改正が可決した後、事業参入するであろう企業の職員が法律の改正案の策定に具体的に関わった疑いがあることから、福島議員は「利害関係者で立法事実の公平性がない」と批判した。

ヴェオリア社は、地元フランスのパリ市で、スエズ社と共に1984年から上下水道の事業を担った。

だが、その後、パリ市の水道料金は2.25倍にまで高騰。2010年にはパリ市は契約を打ち切り、再公営化したのだ(関連情報)。

 

◯水道のあり方について考えて


辻谷氏は「コンセッション方式には反対ですが、全国の水道事業が困難に直面しており、対策が急がれることは事実」と言う。

「例えば、大阪市では耐用年数を超えた配管が5割を超える、という状況です。他の自治体も耐震用の配管に変える必要がありますが、人々の生活や命に関わることなのに、国の政策の中での水道事業への優先順位は低い」(同)。今回の水道法改正を機に「多くの人々に日本の水道の在り方について考えてほしい」と辻谷氏は語る。

政府与党は、本日の衆議院で水道法改正の政府案を強行採決する構えだが、国民の命や生活に関わることにもかかわらず、あまりに強引すぎないか。

メディアももっとその課題を追及すべきだろう。


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【水道法】民営化、欧米でも失敗続きー安倍政権が水道事業を売り飛ばす暴挙、海外企業とも癒着
Yahoo!ニュース 2018/12/6 志葉玲
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20181206-00106702

 

 

 

 


■水道民営化の仕掛け人は竹中平蔵氏か…国民が知らない水道資産120兆円のゆくえ

Business Journal 2019.12.08

https://biz-journal.jp/2019/12/post_130797.html


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・水メジャーを太らせたのは「水事業の民営化」を煽る国際金融機関


世界には、水メジャーの支配で高騰した水道料金を払えず、あろうことか「天から降ってきた雨水」の取水まで禁じられた人々がいる。

日本が平成に改元してしばらくした頃に、南米・ボリビアの主要都市コチャバンバ市の公営水道民営化で起きた悲劇だ。

同市の水道民営化では、灌漑施設も井戸も雨水も、すべての貯水を水企業アグアス・デル・ツナリ社の管理下に置く契約が交わされていた。

あまりにも理不尽だったため、多くの人々に知れわたった実話である。

ツナリ社は、多国籍巨大建設企業ベクテル社の傘下企業だ。

実は、これまで「水事業の民営化」を煽ってきたのは、世界銀行や国際通貨基金(IMF)などの国際金融機関である。

ハイパーインフレで瀕死のボリビア政府に対して、多国間債務600万ドルの免除を条件に、この理不尽な契約を促したのも世銀だった。

彼らは、経済の自由化や公的機関の民営化を途上国政府への融資条件として課してきたのである。

この30年間は「小規模農家への支援」や「教育・医療」の予算削減まで強要し、結果、多国籍巨大企業の市場はさらに拡大し、世界の貧困と格差が悪化した。

国際金融機関のこうした“前科”が日本の一般常識として広く認知されていないのは、官製情報に依存し巨大資本に抗えない国内マスメディアが国民の知る権利にこたえていないからである。

事実として重要な情報がオーソライズされないまま、今日本人の「水道の水」も巧妙な仕組みで「市場」化されようとしている。

黙認して放置すれば、冗談抜きで、いずれ「清浄な空気」も商品として市場化されるかもしれない。

「市場」は商品・サービスとカネの取引で成り立っている。

カネがなければ取引はできず、人は何も得られない。

公共/公益の概念は、そこに生まれる悲劇の類いを回避するための知恵でもある。
従って、生存の最低条件である「水道の水」まで弱肉強食の市場で扱おうとする発想は、非常識を通り過ぎて、もはや「民営化原理主義」とでも名付けてもいい「文明の退化」だ。

今、日本も世界もその見識を問われている。


・安倍内閣・水メジャー・金融/証券と組んで法改定を仕掛けた面々


「水メジャーによる接待疑惑」で官邸を追われた福田隆之氏が、36歳の若さで内閣官房長官の「公共サービス改革」担当補佐官に抜擢されたのは2016年1月。

もとは野村総合研究所主任研究員や新日本有限責任監査法人のインフラ・PPP支援室室長・エグゼクティブディレクターなどを務めた証券のプロである。

表舞台から姿を消した同氏は現在、「行政官」という官職を持つコンサルタントを務めながら、都内の大学にも籍を置いている。

その大学は東洋大学。

そこでの肩書きは「国際学部客員教授/グローバル・イノベーション学研究センター客員研究員」(2019年10月22日現在。以下同)。

2名在籍する客員研究員のもう1人は、前述の「水道民営化を煽ってきた世界銀行」で上級インフラファイナンス専門官を務める人物だ。

このグローバル・イノベーション学研究センターを統括するセンター長は、「東洋大学国際学部教授」の竹中平蔵氏である。

著名な人物は「毀誉褒貶あり」と評されることがよくある。

しかし、政府の「官民連携」施策が、実は一般庶民の生活経済を追い込むものであることを直感する人々の多くは、そこから「誉・褒」の2文字を抜いた「毀・貶」で、あの「竹中平蔵」氏を連想しがちだ。

立身出世を絵に描いたような竹中氏の華やかな肩書きは、あまりに多すぎてここには書き切れない。

小泉純一郎内閣で要職を歴任し、郵政担当大臣として「郵政民営化」の道を開いた竹中氏は、日本国民の富をどこかに移動する仕組みづくりに自信を持ったかのようにもみえる。

麻生太郎副総理は表通りで「水道の公設民営」を外資の面々に“報告”したが、竹中氏は裏通りで地道にそれを準備し、実行してきたといえる。

小泉内閣以降も「行政を束ねて采配するノウハウ」に磨きをかけ、派遣大手のパソナ役員を兼務しながら労働法制に手を入れ、ヴェオリアもたじろぐほどの「利益相反」を問われながら、今もマスメディアを黙らせ続けている。

学者としては、大学で学生たちに「金持ちを貧乏人にしても、貧乏人が金持ちになるわけではない」などと“その道の粋”を教えてきた。規制緩和/撤廃で世界に名を轟かせた英国初の女性首相マーガレット・サッチャーの言葉だ。

教え込まれた学生が政官界に進めば、「自己責任論」で弱肉強食を正当化する新自由主義の施策になんの迷いも抱かず加担し、政治と行政が担うべき本来の役目を蔑ろにするかもしれない。

安倍内閣は規制緩和を御旗として掲げ、水道法改定など数多の法改定と施策を強行してきた。

その権勢を上手に利用して「昇進や第二の人生にまっしぐらの幹部官僚ら」を動かし、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)/PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ:民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)の導入を見事に完遂したのが、竹中・福田の両氏である。

両者の「阿吽の呼吸」の痕跡は、政府による数多の議事録を見れば腐るほど目にできる。

 

・官民連携インフラファンド→民間インフラファンドへの流し込み


2009年に設立された「産業革新機構」は2018年9月、竹中氏も議員として名を連ねる「未来投資会議」によって官民出資の投資ファンド「産業革新投資機構(JIC)」に改組された。

その子会社として新設された「INCJ」には、金融機関からの資金調達で政府保証1兆8000億円がつき、最大2兆円規模の投資能力がある。

同ファンドの出資金は95%が財政投融資の拠出だ。

つまり、「ハイリスク、ハイリターン」というヘッジファンド同様の資産運用を行うリスクマネーの拠出を、国民のカネを預かる政府が担っているということである。

従って、換言すればこういうことだ。

「官民連携インフラファンドに巨額の政府保証をつけさせて莫大な資金調達を可能とし、PFI 法で認められている官民連携インフラファンドから民間インフラファンドへの投資で国民のカネを民間企業に流し込む仕組みづくり」の礎を、すでにここで仕立て終えていた、と。

その仕掛けは、2014年5月19日に官邸4階で開かれた「経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」でもうかがい知ることができる。

竹中氏は「コンセッション制度の利活用を通じた成長戦略の加速」という書類を配布し、幹部官僚の尻を叩いて「官民連携インフラファンド」についても強く打ち出しているからだ。

同会議録から、「コンセッション推進」と「インフラファンド推奨」にかかわる要所を抜粋する。

<……これに応えるために以下の施策を実施する必要がある>


<平成26年4月から向こう3年間」「に実施する案件について」「少なくとも、(筆者注:コンセッション成約を)国土交通省(空港)6件、国土交通省(下水道)6件、国土交通省(有料道路)1件、厚生労働省(水道)6 件とし、これら4分野の目標のうち地方公共団体分に相当する15件」「については、地方制度を所管する総務省もその目標の達成に協力する」「内閣府の数値目標として、上記案件で行われる投資金額の合計」「2~3兆円」「を目標とする>


<株式会社民間資金等活用事業推進機構(官民連携インフラファンド)」「の有するノウハウや地域金融機関との協力関係の活用を図りつつ」「PFI 法上」「官民連携インフラファンドに認められている民間インフラファンドへの投資について、支援基準を踏まえ、取り組みを開始する>


この産業競争力会議は、2年後の2016年9月9日に新設された「未来投資会議」と入れ替わる形で廃止された。

安倍晋三議長・麻生太郎議長代理で開かれた未来投資会議でも、「公的資産と公的サービスの民間開放」が幾度もテーマとされてきた。

 

・「インフラファンドとリンクしたインフレーションに最適の投資資産が公共料金」


福田氏が補佐官在任中の2017年2月17日、「未来投資会議・構造改革徹底推進会合~第4次産業革命(Society5.0)・イノベーション」(PPP/PFI)の第4回は、竹中会長が中心となって議事が進められていた。

当日のメインゲストは、マッコーリーキャピタル幹部としてアジアのインフラ投資を動かすジョン・ウォーカー氏と、日本におけるマッコーリーキャピタル証券代表の大橋純氏。

既述のように、マッコーリー・グループは3大水メジャーから消えた英テムズ・ウォーターを買収した豪州メガバンクで、非銀行部門に証券業務がある。

従って、マッコーリーキャピタル証券は銀行系証券会社ということになる。

実は、2011年2月に国土交通省航空局が開いた「第3回・空港運営のあり方に関する検討会」でも、マッコーリーキャピタル証券の舟橋信夫副会長(当時)が招かれていた。

菅官房長官の下で竹中氏のパートナーとして動いていた福田氏は、同じ証券マンの先輩である舟橋氏にコンセッション等の指南を受け、事情を知る証券関係者の間では「昵懇の仲」だと見られてきた。

これらの経緯をたどれば、舟橋・福田・竹中の3氏が「PPP/PFIによる国内コンセッション」を起案し、同調する安倍内閣が政府としてこれを実現した構図が透けて見える。

水道コンセッションにインフラファンド市場ができれば、あとはそこに公的資金を流し込むだけだ。

「新PFI法」が施行された2018年10月の下旬、宮城県では県が主催する「上工下水一体官民連携運営事業シンポジウム『水道の未来を考える』」が開かれた。そこに講演者として招かれたなかに、水メジャーのツートップであるヴェオリア・ジャパンとスエズ・アジアの幹部数名がいた。

このなかから「スエズ・アジア アドバイザー」の肩書きで登場したのは、マッコーリーキャピタル証券副会長を辞めた後も福田氏と昵懇だった舟橋氏である。

インフラファンドが生まれたのは、マッコーリー社の母国・オーストラリアだ。

2011年に国交省が開いた前述の会合で、舟橋氏はマッコーリーキャピタル証券副会長として、こんな話をしている。

「マッコーリー・グループがひとつだけ世界一の分野がある。インフラファンドの残高だ」

「なぜインフラか? インフラのような投資資金にとって一番重要なのは、使う期間が随分と先になるため、購買力を喪失するのが一番怖いという点。逆に、インフレーションに一番いい投資資産が公共料金である。公共料金はほとんどがインフレにリンクしている」

「グループのインフラ投資で最大の案件はテムズ・ウォーター。当時、企業価値は1兆8000億円という投資だった」(以上、要約抜粋)

東日本大震災が勃発する約1カ月前の話だ。

「インフラファンドはインフレとリンクしており、インフレに最適の投資資産が公共料金」「水道会社への投資額は1兆8000億円」――日本で、その原資はどこから調達されるか。

改定水道法の行方を透視するためには、日銀・メガバンク等の動向を横目に官民インフラファンドと水道インフラファンドの動きを注視する必要がある。

金融・証券のプロが政府の施策に影響を及ぼせば、巨額の公的資金が裏で流れ始めるからである。

 

・水道のインフラファンド経由で公的資金が民間企業へと流し込まれる


閑話休題。

既述の通り、2017年10月下旬に「新PFI法の施行」「2大水メジャーのシンポ参加」「福田氏の接待疑惑文書」の3つの動きが重なっている。

水道法改定に対して国民が不安を抱いているにもかかわらず、水面下では巨額「水道マネー」をめぐる利害関係者の暗闘がすでに始まっていたようだ。

民間企業の事業目的は「果てしない営利」である。

平成の世に日本にも上陸したPPP/PFIによる官民連携「水道コンセッション」と「インフラファンド」は、間違いなく莫大な「水道利権」を生み散らかす。

平成に準備されて令和に本格始動する改定水道法には、「自治体がこれまで及び腰だった料金値上げを、法制度間の整合性で容易にする仕掛けがあったこと」、そして「巨額水道マネーを担保に、インフラファンド経由で公的資金を民間企業へと流し込む仕掛け」があること、などを本連載で検証した。

既存のマスメディアに期待できないからには、今後、住民/国民自らが「PPP/PFIに踊り狂う自治体と政官財のカネの動き」を厳しく監視するしかない。

多くの若者が手にしたネットは、そのためにも有効だ。

黙認したり監視を怠ったりすれば、国民の水道資産120兆円は、そのうち利権まみれで真っ黒に濁ってしまうだろう。


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■水道民営化の仕掛け人は竹中平蔵氏か…国民が知らない水道資産120兆円のゆくえ
Business Journal 2019.12.08
https://biz-journal.jp/2019/12/post_130797.html