亀の川登

難聴に苦しむ男の日記帳。

狂言「狐塚」

2016-08-31 | 能楽

我がご先祖様が残してった本を開いていたら面白い記事が載っていた。

昭和5年の中学校の教科書、多分叔父が使っていた物らしい。

昔の本はとかく難しくて分からないものだが、これは狂言の狐塚と言う出し物。

謡を習っていた私はちょっと興味があって写して見た。謡本を読んでいるとこんな難しい漢字が至る所に出てくるので、ある程度は分かる。

能も狂言も昔の言葉や表現をそのまま使っている。現代人には理解するのが難しい。

狐塚

 主人「このあたりのものでござる。某山田を藪多もってござる。当年は殊の外よう出來てござる。さりながらこの頃は鹿、猿、貉が出て田を荒らします。太郎冠者を呼出し、山田の番をやらうと存ずる。「やいやい太郎冠者あるか。」太郎冠者「はあ、御前に居ります。」主人「汝を呼び出すこと別のことではない。當年は身どもの山田が殊の外よう出來た。それにつき、この頃は鹿、猿が田を荒らすほどに、汝は今夜山田へいて、鳥獣も來たらば追うて番せい。太郎冠者「畏まってござる。私一人でござるか。」主人「いや、後ほどは次郎冠者も見まひにやらうほどに、まずいけ。」太郎冠者「心得ました。」主人「さりながらこの中(ぢゅう)は、狐塚の狐が出てばかすとふうほどに、ばかされぬやうにして番をせい。」太郎冠者「それはこはいことでござる。もはや参ります。」主人「あす早々歸れ。」太郎冠者「はあ。さてもさても迷惑なことをいひつけられた。夜晝使はるるといふは気の毒なことぢゃ。參るほどにこれぢゃ。まづこれにゐて番をいたさう。

 主人「太郎冠者を見まいに遺さうと存ずる。やいやい、次郎冠者あるか。」次郎冠者「これに居ります。」主人「汝は大儀ながら山田へいて、太郎冠者が伽をしてやれ。」次郎冠者「畏まってござる。」主人「小筒(ささえ)も少し持って行け。」次郎冠者「心得ました。これはさて迷惑なれども、参らずばなるまい。主命じゃ、是非に及ばぬ。これは暗うて、どこやら知れることでない。よばはつて見よう。ほうい、ほうい。太郎冠者やい。どこにゐるぞ。」太郎冠者「さればこそ狐が出た。あれは次郎冠者が聲じゃ。よう似せた。おのればかさることではないぞ。まず眉毛をぬらさう。」次郎冠者「ほうい、ほうい。」太郎冠者「ほうい、ほうい、ここにゐるのは。」次郎冠者「どこにゐるぞ。」太郎冠者「ここにゐるは。次郎冠者か。次郎冠者「なかなか。頼うだ人にいひつけられて、伽に來たは。」太郎冠者「ようこそおりやつたれ。さてもようばけた。その儘の次郎冠者ぢゃ。捕へて縛ってやらう。やい次郎冠者。最前向こうの山から大きな鹿が出たを、みどもが追うたれば、此方の山へくわらくわらと逃げたは。」次郎冠者「それはでかした。」太郎冠者「どつこへ、やることではないぞ。」次郎冠者「これは何とするぞ。」太郎冠者「何とするとは狐め。ばかさるることではないぞ。」次郎冠者「おれは次郎冠者ぢや。」太郎冠者「何の次郎冠者。おのれ縛って、この柱にくくつて置いて。狐殿よい體(なり)の。おのれ今に皮を剥いでくれうぞ。

 主人「太郎冠者、次郎冠者を山田に遣してござる。心もとなうござる。見に参らうと存ずる。ほうい、ほうい、太郎冠者やい。次郎冠者い。ほうい、ほうい。」太郎冠者「これはいかなること。また狐が出をつた。あれは頼うだ人の聲ぢや。これも捕へてやらう。ほうい、ほうい。」主人「ほうい、ほうい、どこにゐるぞ。」太郎冠者「ここにゐます。」主人「やあ、ここにゐるか。寂しらろうと思うて見まいに來た。次郎冠者を先へおこしたが。」太郎冠者「なかなか。あれにゐます。これはいかなること。これもようばけた。そのまま頼うだ人ぢや。縛ってくれう。がつきめ。おのれだまさるることではないぞ。」主人「これはなんとするぞ。身どもぢや。」太郎冠者「おのれもようばけた。まづ縛って、この大木にくくりつけて置いて、いたしやうがある。狐は松葉でふすべるといやがるといふ。すべてやらう。さあさあ尾を出せ。鳴け鳴け。」主人「おのれ太郎冠者め。主をこのやうにして。罰あたりめ。」太郎冠者「「何を狐殿いはるる。さらば次郎冠者もふすべてやらう。さあさあ鳴け鳴け。こんこんといへ。」次郎冠者「これは何とする。」太郎冠者「あれやあれや、いやがるは、いやがるは。おのれ二匹ながら鎌を取って来て、皮を剥いでくれうぞ。待っておれ。ようばかさうと思うたなあ。鎌を取ってくるぞ。」主人「さてもさても気の毒な奴ぢや。やあ、それに見ゆるは次郎冠者か。」次郎冠者「さようでござる。こなたは頼うだ御方か。」主人「なかなか。汝も縛りをつたか。」次郎冠者「いかにも縛られました。」主人「何と鎌を取ってくる、殺さうといひをつたが、何とそちが縄をほどかれぬか。」次郎冠者「されば、どうやら縄がとけさうにござる。とけますぞ。さあとけました。どれどれ、こなたもときませい。さてもさても憎い奴でござる。なんとしたものでござらう。」主人「いやいや、この體ではそばへ寄るまいほどに、もとのようにしてゐて、これに来たらば捕へて、あいつをゆりにあげう。」次郎冠者「一段とようござらう。」主人「さあ、これへ寄って、もとのやうにしてゐよ。」次郎冠者「心得ました。

 太郎冠者「狐めは二匹ながら居るか知らぬ。この鎌で殺してくれう。さあ今のうち殺すぞ。」主人「それや次郎冠者。」次郎冠者「心得ました。」主人「おのれ憎い奴の。次郎冠者足を持て。」次郎冠者「心得ました。」主人「さあ、ゆりにあげ。ゆりにあげ。」太郎冠者「これは何と狐どもするぞ。」主人「狐とはまだ。おのれめは憎い奴の。縛り居ったがよいか。これがよいか。」太郎冠者「さては頼うだ人、次郎冠者か。ゆるさせられ。まっぴら御ゆるされ。」二人「どこへ失せる。やるまいぞ。やるまいぞ。

能と能の間に狂言と言うものが入る。かたぐるしい能を見ているお客さんに息抜きして大いに笑ってもらおうと言うのがならいらしい。

概略

主人が太郎冠者に命じて畑の鳥追いにやらせた。その後で二郎冠者にも太郎冠者が1人では寂しかろうと慰めに行かせた。

主人にキツネが出るかも知れないと教えられた太郎冠者は二郎冠者をキツネだと思い縛り上げ柱にむすびつけた。

その後主人も心配になって様子をを見に行った。

ところが、太郎冠者はこれも主人に化けたキツネだと思い込み縛り上げて大木にくくりつけた。さあ大変です。

太郎冠者は皮をはいで殺してやると、カマを取りに行った。

さて二郎冠者と主人の運命は・・・・・

今人気の野村万歳さんはこの狂言が本職。

今朝の新聞に興味深い記事があった。

リオ五輪で金メダルを取った。川井梨紗子さんは津幡町出身とあるが、実は彼女の両親は地元出身ではないらしい。

父親は岐阜県羽島市出身で母親は神奈川県座間市出身だという。父親、母親はともにレスリング選手で、父親は石川国体で、レスリング強化の指導者として招かれたらしい。

どこかの県で国体があると言うと、その県は優勝することになっている。実は各選手や指導者が他県から招かれて優勝する仕掛けになっているようだ。なんだかインチキみたいだな。その後、彼等は石川県に居を構えて落ち着いているらしい。

お父さんもお母さんも超一流選手だったとなれば、金メダルは意地でも取らなきゃならない。

 

 


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1 コメント

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Unknown (みゆきん)
2016-08-31 17:08:47
出身地じゃなくてもその県や市に住んでたってだけで、金メダルを取ると盛大にお祝いするよね
読んでて面白かったわ♪
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