「兄は沖縄で死んだ」

これは、私の大学時代の先輩で、今も児童文学者として活躍している加藤多一さんが著した近著。文字通り、加藤さんのお兄さんは先の戦争で沖縄で戦死した、それに関連する種々のお話が集められている。子どもの頃の思い出、そして1942年1月10日、加藤さんのお兄さんは「入営」(軍隊に入ること)。多一さんが国民学校1年生だった。お兄さんは満州から沖縄に転戦し、1945年6月20日沖縄南部において戦死。
 
加藤さんは兄上の戦死した沖縄を初めて訪問したのは、1993年2月下旬だった。
沖縄戦争での死者は約19万人。県外出身者は6.6万人だが北海道出身者は1.2万人だった。
加藤さんは沖縄に行くのに飛行機は使わず列車と船を使った。せめて往路は兵隊たちが連れて行かれたのと同じように行こうとしたのだ、という。
沖縄でのご自分の体験、そして若い兵たちが受けたであろう体験などを聞き取りなどを丹念にしながら記していく。
 
私はこのような戦争の実地体験の記録を読むたびに思うのは、自分の父が中国で死んだが、その時のようすを知りたいと切に願っている事だ。1942年10月だったが、こういう希望が実現できるとは考えられない。そして無数の死者が当時の自分たちを死においやった人たちを憎み家族たちを思って死んでいったであろうと想像して胸が痛む。加藤さんの著した書を読みながら感じたこと思う事などである。
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