来し方、行く末に思いを続けて…
日記 … Kametarou Blog
「一兵卒」
例の小沢議員は「自分は一兵卒」と何度も言っていた。一兵卒というのは、軍隊の中の文字通り下っ端兵隊で、「上官の命令は朕(ちん)の命令」という支配下に置かれ、「身を鴻毛の軽きに」ある立場の兵である。
田山花袋の短編小説に「一兵卒」がある。日露戦争時、野戦病院からまだ治っていないのにそこから逃げ出して山野をさまよい、ついに力つきて死んでいく「一兵卒」の姿が描かれている。
「あれよりは……あそこにいるよりは、この闊々《ひろびろ》とした野の方がいい。どれほど好いかしれぬ。満洲の野は荒漠《こうばく》として何もない。畑にはもう熟しかけた高粱《こうりゃん》が連なっているばかりだ。けれど新鮮な空気がある、日の光がある、雲がある、山がある、――すさまじい声が急に耳に入ったので、立ち留まってかれはそっちを見た。さっきの汽車がまだあそこにいる。…」
「母の顔、若い妻の顔、弟の顔、女の顔が走馬燈のごとく旋回する。欅《けやき》の樹で囲まれた村の旧家、団欒《だんらん》せる平和な家庭、続いてその身が東京に修業に行ったおりの若々しさが憶《おも》い出される。…」
「脚が重い、けだるい、胸がむかつく。大石橋から十里、二日の路、夜露、悪寒(おかん)、確かに持病の脚気(かっけ)が昂進(こうしん)したのだ。流行腸胃熱は治(なお)ったが、急性の脚気が襲ってきたのだ。脚気衝心の恐ろしいことを自覚してかれは戦慄した。どうしても免れることができぬのかと思った。と、いても立ってもいられなくなって、体がしびれて脚がすくんだ――おいおい泣きながら歩く。…」
「二人は黙って立っている。その顔は蒼く暗い。おりおりその身に対する同情の言葉が交される。彼は既に死を明らかに自覚していた。けれどそれが別段苦しくも悲しくも感じない。二人の問題にしているのはかれ自身のことではなくて、ほかに物体があるように思われる。ただ、この苦痛、堪え難いこの苦痛から脱(のが)れたいと思った。
蝋燭がちらちらする。蟋蟀が同じくさびしく鳴いている。
黎明(あけがた)に兵站部の軍医が来た。けれどその一時間前に、かれは既に死んでいた。…」
ここで描かれている一兵卒の姿と、民主党のトップからの依頼もはねのけている小沢一兵卒の姿とは
あまりにも違う。
半世紀以上たつと「一兵卒」の意味は大きく変わった? あるいは小沢さんは間違った使い方をしているのだろうか。
田山花袋の短編小説に「一兵卒」がある。日露戦争時、野戦病院からまだ治っていないのにそこから逃げ出して山野をさまよい、ついに力つきて死んでいく「一兵卒」の姿が描かれている。
「あれよりは……あそこにいるよりは、この闊々《ひろびろ》とした野の方がいい。どれほど好いかしれぬ。満洲の野は荒漠《こうばく》として何もない。畑にはもう熟しかけた高粱《こうりゃん》が連なっているばかりだ。けれど新鮮な空気がある、日の光がある、雲がある、山がある、――すさまじい声が急に耳に入ったので、立ち留まってかれはそっちを見た。さっきの汽車がまだあそこにいる。…」
「母の顔、若い妻の顔、弟の顔、女の顔が走馬燈のごとく旋回する。欅《けやき》の樹で囲まれた村の旧家、団欒《だんらん》せる平和な家庭、続いてその身が東京に修業に行ったおりの若々しさが憶《おも》い出される。…」
「脚が重い、けだるい、胸がむかつく。大石橋から十里、二日の路、夜露、悪寒(おかん)、確かに持病の脚気(かっけ)が昂進(こうしん)したのだ。流行腸胃熱は治(なお)ったが、急性の脚気が襲ってきたのだ。脚気衝心の恐ろしいことを自覚してかれは戦慄した。どうしても免れることができぬのかと思った。と、いても立ってもいられなくなって、体がしびれて脚がすくんだ――おいおい泣きながら歩く。…」
「二人は黙って立っている。その顔は蒼く暗い。おりおりその身に対する同情の言葉が交される。彼は既に死を明らかに自覚していた。けれどそれが別段苦しくも悲しくも感じない。二人の問題にしているのはかれ自身のことではなくて、ほかに物体があるように思われる。ただ、この苦痛、堪え難いこの苦痛から脱(のが)れたいと思った。
蝋燭がちらちらする。蟋蟀が同じくさびしく鳴いている。
黎明(あけがた)に兵站部の軍医が来た。けれどその一時間前に、かれは既に死んでいた。…」
ここで描かれている一兵卒の姿と、民主党のトップからの依頼もはねのけている小沢一兵卒の姿とは
あまりにも違う。
半世紀以上たつと「一兵卒」の意味は大きく変わった? あるいは小沢さんは間違った使い方をしているのだろうか。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« iPhone... | 冬至のカボチャ » |