冷川の事務所
三角康介(みかど こうすけ) - 志尊淳 や 半澤日路輝(はんざわ ひろき) - 滝藤賢一
の前では冷たい態度を取ってみたものの、冷川理人(ひやかわ りひと) - 岡田将生 は
自分自身の失われていた記憶に、惑わされていた。
石黒哲哉(いしぐろ てつや) - 筒井道隆 との会話も、あの後少し続きがあったようだ。
どうやるの?
穢れを集めるんです。
簡単ですよ、アナタなら。
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もやもやとした気持ちを抱えているのは、康介も同じだ。
半澤の自宅を出た後、そのモヤモヤを表すかのように
いつもより速足で歩いていく。
冷川と書店で出会ったときのことを思い出していた。
君は、今まで見てきたものを否定するんですか。
俺は、ずっとアレが怖くて堪らないんです。
大丈夫、僕といれば怖くなくなりますよ。
康介は、駆け出していた。
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その頃、冷川たちに呪いを解いてもらった非浦英莉可(ひうら えりか) - 平手友梨奈 は
まだ呪いの力を知らなかった頃の、親子3人の写真を眺めていた。
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半澤は、妻:冴子(はんざわ さえこ) - 桜井ユキ の容体が急変し
病院へ付き添っていた。
負のエネルギーが蓄積された貯金箱と言われたビルの前
康介は眼鏡を外し、一人で中へ乗り込もうとしていた。
そこへ英莉可が駆け寄り、康介の腕を掴む。
何やってんのっ!
ぶっ壊すんだ。
何?
貯金箱を・・・ぶっ壊すっ!
そんなこと、本気でできると思ってんのっ!
できるかもしれないし、できないかもしれない。
けどもう、こういうのはウンザリなんだ。
何もしないで逃げるのは、もう嫌だ!
わざとだったの、名前。
呪いかけるとき、わざとヒウラエリカと名乗ったの。
誰かがいつか、気が付いてくれるんじゃないかって。
怖かったの、ずっと。
だから、アナタたちに逢えて凄く嬉しかった。
同じだよ。
えっ!
俺も同じ・・・。
その言葉を聞いて、英莉可は決心をしたようだ。
入れてあげる。
私が貯金箱の入り口を開く。
その頃、冷川はまだ戸惑う気持ちを抱えながら
オフィスの中を歩き回っていた。
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ビルの中へ二人で入り、扉の前で大きく息を吸う英莉可。
どうやらここが、貯金箱の入り口のようだ。
扉を開けると、赤い紐が蜘蛛の巣のように張り巡らされ
その紐には血がついているようだ。
英莉可が腕を伸ばすと、赤い紐は英莉可の腕にまとわりつき
身体を蝕むように浸食していく。
早くっ
英莉可の声に、康介は紐をかいくぐって中へと入って行く。
(そのとき、冷川は窓の外を見ている。)
英莉可の身体は、赤い紐にどんどん絡めとられていく
苦しみに英莉可が声をあげると
中の邪気が喜びを得たかのように、少しずつ建物の外へ流れていく。
病院の廊下で、半澤は自分のスマホに着信があることに気づく。
それは、後輩刑事からの電話で
「港東町を中心に変な事件が続発している。」というものだった。
通り魔が出たり、放火が起きているというのだ。
刑事である半澤は、現場に向かった。
赤い紐(貯金箱)の中に入って行く康介。
子どもの頃の辛い記憶が蘇る。
ビルの外に半澤がたどり着くと、後ろから冷川がやってくる。
いいんですか、こんな所に居て。
何が起きてる。
何台もの黒い車が、その前を通り過ぎて行く。
半澤さん、あの人たちを止めておいてください。
黒い車から男たちが降りてくる。
今、三角くんたちが冴子さんを助けようとしています。
(半澤がビルの中の方向を向く。)
僕も中に行ってきます、後は任せてください。
信じられるか、そんなもん!
アナタにはそっち側にいてもらわないと困ります。
そう言って、冷川が少し笑ったような顔をし、中へ歩いていく。
あぁ、すいません、すいません。
ちょっといいですか?
石黒哲哉(いしぐろ てつや) - 筒井道隆 さんですよね。
黒づくめの男たちの後ろにいる、指示者のような男に声を掛ける。
(病院で冴子が手当てを受けている。)
子どもの頃の康介。
河原で溺れた同級生たちを残し、黒い影を恐れて逃げ出した康介を
大人になった康介が見ている。
(危篤状態になった冴子、赤い紐に体中を絡めとられ身動きできなくなった英莉可。)
紐が身体に絡まり、倒れ込む康介の腕に
後ろから冷川の手が添えられる。
河原から逃げ出そうとする子どもの康介の腕を掴む、現在の康介。
康介に絡まった赤い紐は、冷川の除霊で徐々に煙となって消える。
意識を取り戻す康介、その体を起こす冷川。
まったく、無謀すぎて呆れますね。
そろそろ彼女も限界です、戻った方がいい。
戻りません。
死ぬつもりですか。
冷川さんは、行ってください。
1人立ち向かおうとする康介の肩を掴み、冷川は自分でも理解できない言葉を発した。
それは困ります。
意地悪に笑って振り返る康介。
助手がいなくなるからですか?
いや、違います。
思いがけない言葉に、驚く康介。
何で・・・ですかね。
本人も、自分の言葉に戸惑っているようだ。
立ち上がる康介に、なにかガラスか金属を鳴らすような音が聞こえる。
アレ?
どうしました?
今、何かが・・・フラフラと音が聞こえる方に歩き出す康介。
赤い紐を潜り抜け、その場所にたどり着くと
そこには紐に絡まるように括られた万華鏡があった。
その万華鏡を紐から引きちぎると、信者たちが次々倒れる情景が
康介の中に流れ込んでくる。
その中には、顔に血しぶきを浴びた昔の冷川の姿もあった。
振り返ると、目から黒い液体を流す冷川の姿が目に入る。
明らかに様子のおかしい冷川、彼の手を取り康介は自分の胸に当てる。
すると、あの白い三角形が浮かび上がり、暗闇の中で赤い紐は見えなくなっていた。