奥多摩湖近くの旅館の部屋で
朝、深町尚哉(青和大学文学部の学生)神宮寺 勇太 が目を覚ますと
隣で眠っていたはずの高槻の姿はない。
高槻の布団が綺麗に畳まれているのに
佐々倉健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠 は
気づいていない様子で、まだ眠っていた。
気になることがあるから調べてくる
そんな伝言メモを残し、高槻は部屋からいなくなっていた。
慌てる尚哉、初めて行く場所では「超」がつく方向音痴の高槻を心配し
健司を起こして追いかけようとする。
自分たちを起こさずに出かけるくらいだから、大丈夫だろうと健司は考えているらしく
放っとけ と、二度寝を決め込んでしまう。
それは正解だった様子で、車を手配して
高槻はどこかへと向かっていた。
道中、奥多摩湖の崖の柵がある奥多摩休憩所で、柵の外(崖側)で立っている
刈谷愛菜(バス転落事故で生き残った奥多摩の奇跡の少女)-粟野咲莉 を見かける。
運転手に車を止めてもらい、愛菜に駆け寄る高槻。
何をしているの?
そう尋ねても答えず、柵を乗り越えて戻り、走り出し行ってしまった。
柵の向こう側へ目をやった後その支柱に、そう新しくもないカラーの輪ゴムをひも状にした
「ゴム遊び」に使ったと思われるゴムが巻き付いていた。
そのゴム紐を手に取る高槻。
オープニング
旅館の朝食場所。
健司と尚哉が先に食事をとっている。
瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実
の膳はまだ手が付けられておらず、ここには来ていないようだ。
健司はあたりを見回し、人がいないことを悟ると
彰良が天狗の子とか、天狗様って呼ばれてたことがあるの、知ってるか?
そう言って尚哉に話を始めた。
尚哉:なんとなく・・・ですけど。
健司:誘拐事件が起こって、鞍馬で発見されたとき
あいつの背中には大きな傷があった。(尚哉は、昨夜の露天風呂での高槻の背中を思い出している。)
気持ちが高まると、目も青くなっていて・・・。
尚哉:完全記憶能力を手に入れた・・・。(健司うなずく)
健司:あいつの父親は、経営者だけあって現実的な考え方だから
息子は異常な犯罪者に誘拐されて、背中に傷をつけられ
薬を飲まされて、目が青くなるようになったと考えた。
(その時間、高槻は再び乗り込んだタクシーの中で、当時の母親たちの狂気と自分の寂しさを思い出している。)
健司:でも、母親:清花(高槻の母)-高橋ひとみ は
「自分の息子がひどい目にあったかもしれない」という事実に
堪えれなかったんだ。
尚哉:だから、自分の息子が「天狗にさらわれた」って信じようとした。
健司の言葉をつなげる尚哉。
健司:完全記憶能力と元々持っていた推理力と分析力が合わさって
彰良は普通の人が気づけないようなことも、気づくようになっていた。
無くした物の在処とか、当人が隠している人間関係とかな。
だから、母親は益々信じ込んだ。
自分の息子は特別な存在・・・。
「天狗の子」になったんだって。
尚哉:愛菜ちゃんみたいに特別に・・・。
それを聞いた尚哉は、特別な子として扱われている愛菜に
高槻がかつての自分を重ねていたことに、気づくのだった。
だから彰良はじっとしていられないのだろうと、健司は尚哉に伝えた。
事故を起こしたバスが向かった遠足の目的地、奥多摩湖公園にて
公園を歩く高槻に、走り寄ってきた生方が声をかける。
旅館でタクシーを手配した形跡があったので、高槻の行方が分かったと言うのだ。
流石だね、そう告げる高槻。
解決・・・じゃないんですか。
愛菜ちゃんが本当に特別な子で、大人たちの相談に乗っているのならいいんだけど
そうじゃないとしたら、可哀想だなと思って。
愛菜さまのこと、まだ気になります?
(ん?)この前も「愛菜さま」って言ってたね。
元ご近所の方が「愛菜さま~」っていうから、つい。
それだよ、皆「奇跡の少女」として彼女のことを解釈しているんだ。
必要なのは「普通の小学生」としての愛菜ちゃんの情報。
瑠衣子君もう一度、(元ご近所さんに)話を聞いてきてもらえるかな。
分かりました。
(この時の生方の様子は、1話で映像に残されていないが
研究室に向かう前の寺内に何かを感じ取ったように見受けられる。)
公園の清掃スタッフに高槻が声をかける。
えぇ、あの日もこの公園にいました。
子どもたちは皆ここで、楽しそうにお弁当を食べていましたよ。
まさか、あの後すぐ亡くなるなんてねぇ。
一人だけ無事だったのはご存じですか?
もちろん、愛菜さまのことはよく覚えてます。
他の子とは交わらないで、あそこで一人で静かにお弁当を食べていて
あとであの子だけ生き残ったって聞いて、
「あぁ、やっぱり特別な子だったんだなぁ。」って。
にしても、運転手の人。心臓発作だったんでしょう。
運転中じゃなくて、せめて奥多摩休憩所で停まったときに発作が起きてればねぇ。
停まった?
ここを出た後、すぐに気分が悪くなった子がいて
奥多摩休憩所のトイレを使ったようなんです。
「少し汚して申し訳ありません。」って、
管理事務所に担任の先生から電話が来たんです。
高槻は、愛菜が奥多摩休憩所の柵の外にいたことを思い出していた。
生方による再ヒヤリング(刈谷家が元住んでいた集合団地)
今度は愛菜さまではなく、刈谷愛菜ちゃんとお母さん
刈谷真紀子(愛菜の母)-矢田亜希子 についての
フィールドワークが行われ、その内容がスマホにて奥多摩湖の高槻に報告される。
それによれば、刈谷家での元の場所での生活は苦しく、愛菜はいつも汚れた服を
着ていたそうだという。(リアルなら軽いネグレクトとも言える)
そのことが原因で、愛菜はクラスで仲間外れにされていたらしい。
奥多摩湖の公園の清掃スタッフに話を聞いたときも同じだった。
一人きりでお弁当を食べる子を特別な子だと思ったって。
奇跡の生還の話を聞いた後、「一人でいる子は特別な子」と解釈されてしまったようだ。
健司:愛菜ちゃんは「特別な子」じゃなかったってことか。
高槻:「特別な子」なんていないんだよ、ただ「他人とは違う体験をした」だけ。
尚哉:でも愛菜ちゃんがたった一人生き残ったっていうのは、事実ですよね。
それも偶然?
高槻:そこが判らないんだよね。
健司:この件に関わるのはもうやめたらどうだ。(尚哉が見ていた絵を取り上げ)
もしコレ(愛菜が高槻に描いて渡した絵)みたいにぶっ倒れたら、シャレにならない。
高槻は、愛菜にこの絵を渡されたときのことを思い出している。
何かに気づいたのか立ち上がる。
残念だけど、そう簡単に本物の怪異とは出会えないみたいだ。
そういって、右手の人差し指を鼻の前に持っていくあの仕草をするのだった。
(健司の「はぁ、何か気づいちゃったのぉ。俺のせい、なんかヒントいいましたぁ。」の悩ましい表情がなんとも言えない。)
現在の刈谷家へ
高槻たち3人が、刈谷家の前にできる信者たちの行列を抜き去って、玄関口へやってくる。
行列を残してきたことに、少し戸惑う尚哉。
黙って話を聞いている愛菜の横で母親が
信者の女性に「愛菜もそのうち解決すると思っているようです。」と伝えると
喜ぶ女性。
そこに乗り込む高槻たち
母親:順番をお待ちいただかないと。
高槻:刈谷さん、もうこんなことはやめて愛菜ちゃんを病院に連れて行くべきです。
女性:なんですかあなたは。
母親:くりはらさま。あとでお話しを伺いますので、今日のところは席をお外しいただけますか。
女性が帰って行くと、高槻は愛菜が背を向けて絵を描いていた机に
並べてある本の天地が逆になっていることを指摘する。
高槻が受け取った絵についても、普通にみれば高槻が逆さに落ちる不気味な絵に見えるが
天地を逆にすれば、普通に文鳥が飛んでいて高槻が立っているだけの絵になる。
愛菜ちゃんは脳になんらかの支障をきたしているかも知れないんですね。と告げる。
だから、なにかを読んだり描いたりするときに天地が逆になる。
一緒に暮らしている母親が気づかないはずがない、
もし、外傷による障害であればすぐに病院に連れて行っただろう。
しかしそれをしなかったのは、原因が心にあると思ったのではないか。
君は、事故の時バスに乗っていなかったんだね。
母親:そんなこと、あるわけないじゃないですか。
(尚哉が嘘に気づいた様子をみせる。)
愛菜ちゃんは、小学校で仲間外れにされていたそうですね。
奥多摩湖公園でのお弁当の時間が終わり、バスが発車した。
でも、子どもが一人気持ち悪くなって、奥多摩休憩所でバスは停まった。
子どもたちはバスの周りに散らばって休憩していたんでしょ、仲良しグループに分かれて。
一人でいるしかなかった愛菜ちゃんは、これで遊んでいたんじゃありませんか。
(そう言って、高槻がボケットからあの輪ゴムを取り出した。)
そして、遊んでいるうちに靴が脱げ、崖に落ちてしまった。
なんとか拾おうとしているうちに、バスが発車することになった。
クラスの女の子たちは、愛菜ちゃんがいないことに気づいていたんでしょう。
でも愛菜ちゃんに意地悪をしようと(点呼で)先生に嘘をついた。
(バスの中に愛菜のリュックと水筒が残された。)
そしてバスは(愛菜を残して)発車してしまった。
つまり愛菜ちゃんは、事故の時バスに乗っていなかったんです。
母親:ただの想像よ。
いえ(首を振る)、今朝奥多摩休憩所で愛菜ちゃんを見かけました。
その場所で、この赤い靴を見つけたんです。(尚哉が取り出す)
休憩所で愛菜が走り去った後の場所の下に、赤い靴が残されていた。
これ、愛菜ちゃんのだよね。
何より、これを見てください。(スマホの画像で、寺内が高槻に渡した愛菜の絵を見せる)
これを見ると、(逆さに描かれた)愛菜ちゃんがバスから放り出されたように見えますが
こうすると(絵を天地逆にする)女の子はちゃんと立っていて、バスの方がひっくり返っているように見える。
つまりこれは、バスの転落を愛菜ちゃんが見ている絵なんです。
そして、この絵の中の愛菜ちゃんは、靴を片方履いていない。
(愛菜は事故当時を思い出して泣き始めている。)
お母さん、これ以上事実を偽り続けても誰のためにもならない。
貴方は、この子が苛めにあっているのを認めろと言うんですか。
遠足の日、愛菜は私に「行きたくない」と言い始めました。
どうせ仲間外れにされるからって。
そういう子にとって、遠足なんて楽しい行事じゃない。
苦痛なだけなんです。
「行きたくない」って言われて、私・・・どうしたと思います?
「行きなさい」って言ったんです。だって、その日もパートだったから。
私が稼がないと、私たちが食べるものに困るから。
あなたがすべきだったのは、この子を「奇跡の少女」なんかにすることじゃない。
母親として守り、ちゃんと治療を受けさせることだった。
あなたが最初に「愛菜ちゃんがバスに乗っていた」という嘘を本当にしてしまったから
この子は口が利けなくなったんですよ。
(高槻も、また苦しかったことを思い出している。)
愛菜は泣きながら立ち上がり、健司の前を駆け抜け
部屋の奥にあった、信者がくれたというあの文鳥の籠を高槻の前に突き出した。
ママは悪くない、あのとき私はバスに乗ってた。
あのときバスに乗ってた。
突き出された文鳥の籠に、一瞬たじろぐ高槻。
愛菜の回想では、崖からバスが落ちた場所に(片足だけ靴履きのまま)駆け寄り
覗き込もうとして、崖を滑り落ちて行った。
ママは悪くない。あのときバスに乗ってた。
我に返った健司が、文鳥の籠を退ける。
高槻が、愛菜の両肩を掴む。
愛菜ちゃん、それは嘘だ。
そして嘘は永遠には続かない。
君は奇跡の少女なんかじゃない、普通の女の子だ。
黙れ、バカぁっ!
高槻は握りしめた輪ゴムを愛菜の前に差し出す。
愛菜ちゃん、これで遊ぶのは好き?
だったらその気持ちを捨てちゃダメだ。
神様なんかになろうとしちゃダメだ、絶対にっ!
うるさいっ!
お前なんかどっか行っちゃぇ、ママをいじめるなっ!
愛菜ちゃん、君の気持は解る。
どうしてお母さんの始めたことに付き合ってしまったのか
それは、自分が奇跡の少女でいれば、お母さんと一緒にいられるから。
高槻は、自分の肩に母の清花が手を置き
この子はね、なんでも解るの。
そういって、女性たちを集めたサロンのようなものを始めていた。
それがずっと高槻を苦しめていたのだろう。
自分が愛菜さまになれば、ずっとお母さんと一緒にいられるからだよね。
自分が愛菜さまでいる限り、皆が物を持ってきてくれる。
住む場所だって提供してもらえる。
お母さんはパートに行かなくて済む。
ずっと一緒にいられる。
物静かだと思われていた少女は、実は孤独で
あれから初めて大声を上げて泣き始める。
母はやっと自分がしていたことが、子どもと自分のためではなく
自分のためであったことに気づいて涙を流していた。
その様子を見て、安心したのか
立ち上がった高槻がふらつき、健司に身体を支えられる。
あの時の自分と同じ孤独を抱えた子どもを、一人開放することができた
それが怪異でなく、偶然から起こった故意だったとしても
昔の自分を思い起こさせる愛菜を解放してあげることができたと、
健司に身体を支えられながらも、涙が流れる高槻。
そして尚哉は、これまで自分を温かく見守ってくれていた
高槻の涙に、自分も彼を支えたいと思うのだった。
高槻の研究室で
健司がバス事故の結果について、高槻が推察した通りであったことが
刈谷親子の話で明らかになった。
尚哉がボードに
怪異
現象 解釈
事故で助かった 奇跡の少女
少女 まな様
そう書いた。
そこへドアをノックするがして、寺内一(謎のフリーカメラマン)-小池徹平 が訪ねてくる。
ご相談の件、解決しましたよね?
はい、でも僕が高槻先生にお話ししたかったことはこれからなんです。
僕は、先生が愛菜さまという奇跡の少女を見て
自分の役割を思い出すかどうか、試したかったんですよ。
自分の役割って、どういう意味かな。
高槻が寺内の前に歩み寄る。
天狗の子ですよ、あなたはかつてそう呼ばれて何人もの人の悩みを聞き
答えを示していた。
ハァッ、あの姿に僕は憧れたのに、今はただの准教授として
大学生相手に講義をしている。
それで満足なんですか。
僕は満足だよ。
(寺内、首を横に振り)
貴方はただの人間じゃない。
使命がある。
人間を超える存在として、迷う人を救ったり
道を踏み外した人を罰したりしなきゃ。
それが、僕たちの使命。
僕たち・・・。
そう言うと、寺内は黒いシャツのボタンを外し始める。
彼の背中には、高槻の背中のそれと同じ傷があったのだ。
背を見せたまま、寺内は高槻に語りつづける。
僕はもう始めていますよ、先生。
一緒にやりましょう。
何を始めた。
厳しい表情で視線を据えたままの高槻
使命を果たすと心に決めたら連絡をください。
(彼の質問には答えないまま、シャツを直した寺内)
そしたら教えますよ。
勝ち誇るように寺内は研究室を出ていく。
健司は高槻に歩み寄り
あんな傷跡どうとでもなる、気にすんな。
そう声をかける。
俺、確かめてきます。
何か話をさせて、嘘を言ってるか確認すればいいんだから。
寺内を追いかけようとする尚哉に、高槻は
ダメだ、あいつに近寄っちゃだめだ。
彼は深町君の能力を知っている。
そう言って尚哉を制止した。
えっ?(能力について他の人に話していないのにと、驚く尚哉)
一度も寺内が「心配している」という言葉を使わなかったのは嘘だから。
使えば声が歪み、尚哉に見抜かれるのが判っていたのだと言う高槻。
健司はハッとする。
深町の能力に気づいているから(高槻並みの推理力・分析力があるから)
**************************
研究室の階段を降りていく寺内
差し込む夕日を背に、その両目は青く光っていた。
**************************
寺内一、本当に僕と同じ目にあったのかもしれない。
**************************
キャンパスを通り過ぎて、歩き去る寺内を見つけ
厳しい目を向ける生方。
意気揚々と歩く彼に、何かの気配を感じたようだ。
****************************
でも、僕自身があの時
自分に何が起きたのかを分かっていないんだ。
寺内の言葉に、明らかに気持ちを揺さぶられている高槻。
これから高槻が巻き込まれるかも知れない出来事に、不安を感じる健司と尚哉だった。
エピソード2 第2話 終了
これまで、高槻の台詞を青、それ以外の人物を赤、赤が多用される場合は赤黒としてきましたが
寺内の登場で、寺内の台詞を 赤→紫のグラデーションから紫へ変更しました。
恐らく、高槻と寺内の会話が交錯すると、青✖青になってしまうと思われます。
そのための対応とし、ご承知おきください。