超空洞からの贈り物

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地震直後のイカの大量座礁は偶然か?

2009年07月15日 18時12分16秒 | サイエンス
 2009年7月11日の朝、サンディエゴの海岸近くの住民が目覚めると、浜辺のあちこちにアメリカオオアカイカ(Dosidicus gigas)と呼ばれる巨大イカが大量に打ち上げられていた。必死に体をバタつかせているが、自力で海に戻ることはとうてい無理そうだった。午前7時34分にカリフォルニア市の沖合で地震が発生してから、約1時間後のことである。

 地元の報道によると、ラホヤ市内では海に戻そうとする海水浴客もいたという。カモメが上空を旋回しながら身動きのできない獲物を狙っていたからだ。

 さて、この不可思議な現象は、直前に起きた地震と関係があるのだろうか。専門家の間では偶然にすぎないとする考えが主流のようだ。

 スタンフォード大学ホプキンス海洋研究所に所属するイカ専門家ウィリアム・ギリー氏は、「第一の理由として、11日の地震の少なくとも3日前には、座礁したイカが発見されていた。したがって、彼らに地震の予知能力でもない限り、関連はないということになる」と話す。

 アメリカオオアカイカは最大で体長2メートル、体重45キロにまで成長する。これまでの生物学研究では、イカの体には地震を感知する機能は備わっていないとされている。例えば、魚類と異なり浮き袋を持っていない。浮き袋があれば、地震波で圧迫されるため地震を感知できる可能性はある。

 スタンフォード大学の海洋生物学者で、今回の座礁現場付近で研究を進めているダナ・スターフ氏は、「地震が影響を与える可能性はゼロに近い」と話す。

 こうした現象はサンディエゴ周辺では以前から目撃されている。2002年7月には、何千匹ものアメリカオオアカイカがサンディエゴの海岸に打ち上げられている。その後数カ月の間、同様の大量座礁が北アメリカ太平洋沿岸各地から報告され、北はアラスカまで達した。

 クジラやイルカの場合と同じく、イカの座礁も原因は謎である。「いくつか考えられる原因はあるが、基本的には何もわかっていない」とスターフ氏は話す。

 1つの仮説は、急激な海水の温度変化によって方向感覚が狂ったというものだ。スターフ氏は次のように話す。「最近、ラホヤ周辺の海水温は少しおかしなことになっている。かなり温かい水域にいると思ったら、急に冷たい水にさらされる。そのために混乱が生じている可能性がある」。

 もう1つの可能性は、座礁した個体はドウモイ酸と呼ばれる毒素を大量に摂取し体に異常をきたしていたというものだ。海洋プランクトンが作り出すこの毒素は、エサとなる生物の体内で濃縮されている可能性があるからだ。

 スターフ氏の研究チームは座礁したイカを一部回収しており、今後胃の中身を分析する予定だという。「体内に毒素があるか解明するつもりだ」とスターフ氏は話す。

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