超空洞からの贈り物

様々なニュースや日常のレビューをメインに暗黒物質並に見つけ難い事を観測する、知識・興味・ムダ提供型共用ネタ帳です。

ウサギが広げた核廃棄物汚染

2009年10月25日 10時20分22秒 | 自然
 ワシントン州のハンフォード・サイトにある核施設内の原子炉(撮影日不明)。現在は停止している。冷戦時代にアメリカが核兵器用のプルトニウムを製造していた場所である。


 ウサギの糞に形を変えて拡散した核廃棄物の浄化作業に、アメリカ政府が新たに資金を投入することになった。ハイテクによる除去作業が景気刺激策の一環として行われることとなる。

 2009年9月、アメリカ政府の請負業者が、ワシントン州東部にある1950年代のプルトニウム製造施設ハンフォード・サイト付近の低木地帯でヘリコプターによる調査を行った。ヘリには放射線検出装置とGPS装置が搭載されている。

 調査の目的は、動物や風によって施設内まで拡散した有害放射線物質に汚染されている土壌の特定である。地域の水道水に発ガン性の有害物質が流れ込むのを防ぐため、汚染された土壌は除去されることになっている。

 請負業者が注目したのは、ハンフォード・サイトに隣接する36平方キロの範囲だ。付近の溝に溜まっている核廃棄物の量は1億9000万リットルに及ぶ。冷戦当時は、面積およそ1550平方キロのハンフォード・サイトでアメリカの核兵器用プルトニウムが製造されていたのである。

 核廃棄物に食欲などわきようもないが、ウサギやアナグマといった野生動物にとっては、ストロンチウムやセシウムを含む放射性塩化物はごちそうだったようだ。政府からこの事業を請け負ったCH2Mヒル・プラトー環境改善社(CPRC:CH2M HILL Plateau Remediation Company)のプロジェクト・マネージャー、ボー・ウィアー氏は、調査を最初に報じた「Tri-City Herald」紙に「野生動物は核廃棄物が好物なんだ」と語っている。

 同社の広報担当者であるディー・ミリキン氏は、「ハンフォード・サイトの稼動期間中は、動物が溝に潜り込んで汚染された塩化物を舐めていた。摂取された塩分は消化管を通じて拡散する。ただし、拡散した廃棄物の大半は風のせいだ」と話す。ただし、米国エネルギー省の調査によれば、廃棄物の溜まった溝は1969年に砂利で埋められているため、動物たちによる拡散も止んでいるという。

 調査プロジェクトの経費30万ドル(およそ2700万円)は、オバマ大統領が打ち出した景気刺激策、米国再生・再投資法(ARRA)によってまかなわれた。「地上で調査を行っていたら、拡散図の作成にさらに約70万ドル(およそ6400万円)の経費と、数カ月という時間を費やす必要があっただろう」とミリキン氏は言う。「だから、上空からの調査に人員を投入している」。

 同氏によると、作成した拡散図を基に汚染された動物の糞などを含む土壌を別の下請け業者に除去させ、ハンフォード・サイト内の低レベル廃棄物用の地域へ運ぶ予定だという。

太陽系外の惑星32個を新たに発見

2009年10月25日 10時18分39秒 | サイエンス
 さそり座内の三重連星の1つ、グリーゼ667Cを公転する惑星のイメージ図。この惑星は地球の6倍の質量があるという。遠くには2つの伴星が輝いている。

 2009年10月に発表された報告によると、過去5年間に、この惑星をはじめとして32個の太陽系外惑星が発見されたという。確認済みの太陽系外惑星は400を超えることになった。

 観測チームによると、新たに確認された32の惑星の質量は、地球の5倍から木星の8倍(地球の2500倍)までとかなりの幅があるという。惑星が公転している恒星にもさまざまなタイプがあり、惑星形成に関する既存の学説では説明できないケースもあるようだ。

 観測チームは、「平均すると宇宙の全惑星系の40~60%に低質量惑星が含まれている可能性がある」と結論付けている。低質量惑星は大きさも地球によく似ている可能性が非常に高いため、地球外生命探査の最有力候補になると考えられている。

 観測チームの一員でスイスにあるジュネーブ天文台のステファン・ユードリー氏は、次のように話す。「コンピューターモデルに基づくと、地球に似た低質量惑星数は従来の予想をはるかに上回ると考えられる。地球型惑星はありふれた存在と言えるだろう。“自然は真空を嫌う”とアリストテレスが言ったように、惑星が占めるべき空間があるなら、そこに惑星が置かれるようになっているはずだ」。

 32の新惑星は、チリのラ・シヤにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)にある分光器という観測装置を用いて過去5年の間に発見されたものだ。正式名称を「高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)」というこの分光器は、恒星の軌道に生じるわずかな“ゆらぎ”を検知する。未知の太陽系外惑星の引力によって生じる変化だ。HARPSの観測チームは太陽型の恒星や低質量の矮星(わいせい)を選び出し、軌道に生じるゆらぎの詳細な観測を続けた。

 観測チームの一員でポルトガルにあるポルト大学のヌーノ・サントス氏は、「赤色矮星が観測対象となった。質量が小さく明るさも弱いため、低質量の周回惑星が引き起こすゆらぎを検知するのが比較的容易だからだ」と話す。

 新しく発見された32個の太陽系外惑星の中には、スーパーアース(巨大地球型惑星)と呼ばれる地球によく似たタイプもいくつか存在する。その内訳は、地球の5倍程度の質量が2個、およそ6倍が2個だという。最大クラスは巨大なガス惑星で、木星の7~8倍の質量があると推測されている。また、木星クラスの質量を持つ惑星が、金属をあまり含まない恒星の周囲を公転しているケースもいくつか確認された。

 これまでの学説では、金属含有量の低い恒星の周囲で惑星が形成される可能性は低いと考えられていた。惑星は、誕生したばかりの若い恒星が残した金属を含むちりや破片の渦、“惑星形成円盤”の内部で形成されるとされていたのである。

 しかし今回の発見により、惑星形成理論の修正が迫られるかもしれない。宇宙に存在するとされる恒星系の種類も増える可能性がある。「32の新惑星の詳細については順次公開していく予定で、その一部は半年後には発表できる予定だ」とユードリー氏は話す。

 確認済みの太陽系外惑星はおよそ400個で、HARPSによる発見は今回の32個を入れて総計で75個となる。例えば、HARPSの観測チームは以前にも、太陽系からおよそ20.5光年離れた赤色矮星グリーゼ581(Gliese 581)の周囲を公転する低質量惑星をいくつか発見している。特に、その中の惑星グリーゼ581cは、「太陽系外で生命が生息する可能性を持つ地球型惑星の初発見か」と注目を集めた。

 32個の系外惑星で生命が存在する可能性はあるのだろうか。観測チームは、まだ答えを出せる段階にないとしている。ユードリー氏は次のように話す。「HARPSでの観測だけでは詳細の判断は非常に難しい。大きさは地球クラスなのか、その位置は恒星系内のハビタブルゾーン(生命居住可能領域)内なのか、正確な測定には次世代の視線速度観測装置が必要となる。ただし、そのような装置もあと5年もすれば誕生するだろう」。

太陽風反射粒子が月の未知の顔を解明?

2009年10月25日 10時17分35秒 | 宇宙
 月に到達した太陽粒子はほぼすべてが月面に吸収されると考えられていたが、一部は“反射”されていることが最近になって明らかになった。この発見により、太陽と月の関係についてさらに解明が進むという。

 月には大気がほとんど存在しないため、月面は“太陽風”(太陽から全方向に放出される荷電粒子の流れ)の影響を絶えず受けている。このところ月面に水が存在する可能性がメディアを賑わしているが、一部の研究者はこの太陽風が水の生成プロセスに関わっていると見ている。

 スウェーデン最北部の都市キルナにあるスウェーデン宇宙物理研究所のスタス・バラバシュ(Stas Barabash)氏は次のように解説する。「月面に吸収される太陽風の陽子と月面の鉱物に含まれる酸素が相互作用を起こすと、水やヒドロキシ基が生成されると考えられる。ただし、これはあくまで“理論上”の話で、立証するにはまだまだ多くの調査が必要だ」。

 しかし、天文学的には月に到達した太陽粒子はほぼすべてが月面の土壌に吸収され、このような作用を起こすと考えられていたが、インド初の無人月探査機チャンドラヤーン1号の観測データによってこの通説が覆された。月に到達した陽子の2割は吸収されず、宇宙空間にまっすぐ跳ね返されていることが確認されたのである。

 バラバシュ氏らの研究チームはこの結果に基づき、いままで観測されたことのない月の“別の顔”を撮影したいと考えている。天体撮影には天体からの反射光を利用する方法があるが、それと同じように月面で反射された陽子を検出し、その場所をマッピングしてまったく新しい画像を作成しようというのである。「これで太陽風が月面に与える影響を正確に把握できるはずだ」と同氏は期待を寄せる。

 月面に到達した陽子は電子と結合し、中性水素原子となって反射される。「中性水素原子は文字通り“中性”であるため、いかなる電磁力の影響も受けない。したがって月の引力の影響も少なく、反射後はまっすぐ前進し続ける」とバラバシュ氏は説明する。

 このような中性水素原子の直進性を利用すれば、太陽風の影響が最も大きい月面の地域をかなり正確に特定できるはずである。例えば、月面の一部のクレーターは独自の磁場を持ち、太陽風を遮っている。このような地域では陽子の吸収も反射も起こらないため、新しい地図では暗い点として示されることになる。

 バラバシュ氏によると、大気が薄いという条件を満たしていれば、この手法は太陽系のほかの天体にも応用できるという。

 欧州宇宙機関(ESA)は日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに2013年に水星探査ミッション「BepiColombo(ベピ・コロンボ)」をスタートさせる予定だが、実際に打ち上げられる探査機には、チャンドラヤーン1号が反射陽子の検出に利用したものと同様の機材が搭載されるという。「新しい手法を用いれば、水星のどの地域に太陽風が直接当たるのかをダイレクトに観測できる」とバラバシュ氏は語る。

恐竜絶滅の決定打はインドの隕石?

2009年10月25日 10時16分26秒 | サイエンス
 恐竜の絶滅の原因は、数十万年の間隔でメキシコとインド付近に落下した2個の巨大な隕石のダブルパンチだった可能性があることが最新の研究で指摘された。

 恐竜の絶滅の原因を説明する学説として過去数十年間で最もよく知られているのが、6500万年前に落下した1個の隕石に着目したものである。直径10キロの隕石がメキシコのユカタン半島沿岸に落下して現在のチクシュルーブ・クレーターを作り、これが世界規模の気候変動を引き起こして恐竜の大量絶滅に繋がったとする説だ。

 しかし、恐竜に実際にとどめを刺したのは直径40キロに及ぶ別の隕石だったと主張する説が議論を呼んでいる。この最新の説によると、隕石はチクシュルーブの隕石の約30万年後にインド西岸沖に衝突したという。「恐竜たちは本当に運が悪かった」と、研究の共著者でテキサス州ラボックにあるテキサス工科大学の古生物学者シャンカール・チャタジー氏は語る。

 この2個目の隕石の衝突によってインド洋の海底に直径500キロの窪みができたとチャタジー氏は考えており、同氏の研究チームは1996年からこの窪みの調査を行ってきた。研究チームはこの窪みを、ヒンズー教の破壊と再生の神の名にちなんでシバ・クレーターと名付けた。「私たちの考えが正しければ、これは地球上で確認された最大のクレーターだ」とチャタジー氏は語る。

 シバ隕石の衝突の衝撃はあまりに強力だったため、衝突した場所の地殻が蒸発し、それによってさらに高温のマントルが噴き上がり、このクレーターの高く盛り上がったのこぎり状の縁が形成されたとチャタジー氏は推定している。

 さらに、衝突の衝撃によってインド亜大陸の一部が欠けてアフリカの方向に移動を始め、現在のセーシェル諸島が形成されたと研究チームは考えている。

 また、現在のインド西部で当時既に発生していた火山の噴火活動もシバの隕石の衝撃によって促進された可能性があるとチャタジー氏は話している。これまでにも、現在デカントラップと呼ばれるインドの火山地帯から放出された有毒ガスが、恐竜絶滅の決定的要因となったと推測する説があった。

「火山活動を実際に引き起こしたのも隕石の衝撃だったと考えたくなるのは無理もないが、それは違うと思われる。なぜなら火山活動は既に発生していたようだし、シバ隕石の衝撃はそれに拍車をかけただけだろう」とチャタジー氏は話す。

実用化に適した有機薄膜太陽電池製法開発

2009年10月25日 10時14分10秒 | 家電・生活用品
これまでより安い製法でエネルギー変換効率が高い有機薄膜太陽電池をつくることに、東京大学大学院理学系研究科の研究グループが成功した。

中村栄一教授、松尾豊教授らが開発した有機薄膜太陽電池は、電子供与体として熱変換型の低分子材料「テトラベンゾポルフィリン」、電子受容体として新たに開発したフラーレン誘導体から成る。テトラベンゾポルフィリンの柱状結晶が生け花の剣山のように林立する理想的な3層構造をしている。これまで多くの研究がある高分子塗布型有機薄膜太陽電池と異なり、高純度の製品を得やすい低分子塗布型という製法を用いているのが特徴だ。

テトラベンゾポルフィリンを用いて同様の構造を持つ有機薄膜太陽電池をつくったという前例はあるが、費用が高くつく共蒸着という方法を用いていた。

今回の方法でつくられた有機薄膜太陽電池は、エネルギー変換効率も5.2%と高く、大量生産しやすいことから、実用化により適した製法だ、と研究グループは言っている。この研究成果は、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業総括実施型研究(ERATO))「中村活性炭素クラスタープロジェクト」(研究総括・中村 栄一教授)によって得られた。

JSTプレスリリース

長寿命の人工ひざ関節製品化へ

2009年10月25日 10時11分36秒 | 健康・病気
人工ひざ関節の部材原料にビタミンEを加えることで耐久性を大幅に高めることにナカシマメディカル社が成功、既に医療機器としての製造販売承認も厚生労働省から得て、来年早々に製品化される見通しとなった。

この人工ひざ関節は富田直秀・京都大学大学院工学研究科教授の研究成果を基に科学技術振興機構がナカシマメディカルに約1億4,000万円の開発費を出し、製品化を図っていた。人工ひざ関節は可動部材が滑り動くことを繰り返すうちに摩耗し、摩耗が進むと層状剥離(はくり)と呼ばれる損壊に至る問題を抱えている。

新しく製品化される人工ひざ関節は、材料の超高分子量ポリエチレン粉末に抗酸化剤であるビタミンEを混ぜて成型するのが特徴。超高分子量ポリエチレンだけからなる従来製品に比べ、摩耗量を3分の2に抑えることが疲労摩耗試験で確認された。

高齢社会の到来で変形性関節症や関節リューマチ患者は増え続けており、人工ひざ関節を組み込む手術を受ける症例数は年間15万件にも上る。これにともない人工関節部材の損壊による置換手術の件数も増加していた。

既に臨床治験で安全性の確認も済んでおり、長寿命型の人工ひざ関節により、手術適応の低年齢化や重症患者のQOL(生活の質)向上にも貢献できる、とナカシマメディカルは言っている。

科学技術振興機構(JST)リリース

月面に縦穴?世界で初めて発見か?

2009年10月25日 10時10分18秒 | 宇宙
月で、地下の巨大な溶岩トンネルに通じる縦穴を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が世界で初めて発見した。将来の有人月探査で、天然の基地として活用できる可能性がある。米地球物理学会誌に近く掲載される。

 このトンネルは、流れている溶岩の表面が冷えて固まった後、その中にある溶岩が流出して作られたと考えられる。JAXAは月周回衛星「かぐや」で探査したところ、火山活動が活発だった地域内の地点(北緯14度、西経57度)で、縦穴(直径60~70メートル、深さ80~90メートル)を発見。その穴に差し込む太陽光や影の解析から、地下に横幅400メートル以上、高さ20~30メートルのトンネルの存在が確実になったという。

 月は大気がないため、地表では隕石(いんせき)の落下や人体に有害な宇宙線にさらされている。溶岩トンネルの中はこうした危険から守られる。気温も大きく変動する表面と異なり安定しているので、米国など各国が天然の基地の候補地になるとして探している。

 春山純一JAXA助教(惑星科学)は「周辺の地形は比較的平らなので、着陸や移動がしやすいだろう。地球側を向いており交信が容易だ。赤道近くで太陽エネルギーも得やすい。月面基地の有力候補になるのではないか」と話す。

~毎日jpより~

ハッブルがとらえた、2つの尾が伸びる銀河

2009年10月25日 10時08分08秒 | 宇宙
HSTが、かに座の方向約2億5000万光年の距離にある銀河NGC 2623(別称:Arp 243)をとらえた画像が公開された。

NGC 2623は一見1つの銀河に見えるが、実は天の川銀河のような渦巻き銀河どうしが衝突した後の姿である。2つの銀河にあった大量のガスが、接近するにしたがって互いに相手の銀河の中心方向に向かって引き伸ばされて、このような姿になったと考えられている。

銀河どうしの衝突では、ガスなど大量の物質が移動し、星形成が引き起こされる。中心から伸びる長い2本の尾のうち下方の尾には、その証拠である若い星団が数多く観測されている。衝突は後期の段階にあると考えられており、もともと2つあった銀河の核も、今は1つとなっている。

NGC 2623を含め、2つの銀河が合体してできた銀河には、中心に超巨大ブラックホールが観測されることがある。銀河の物質はブラックホールに向かって落ち込み、周囲に降着円盤を形成する。激しい活動により円盤は高温となり、そこから放出されるエネルギーが広範囲の電磁スペクトルとして観測される。このように、銀河中心に存在するブラックホールの活動によって高いエネルギーを活発に出している天体を活動銀河核と呼ぶ。

HSTによるNGC 2623の観測は、「GOALS」と呼ばれる赤外線で輝く銀河(高光度赤外線銀河:LIRG)を調べるサーベイの一環で行われた。同サーベイでは、そのほかに、NASAの赤外線観測衛星スピッツァーやX線天文衛星チャンドラ、紫外線天文衛星GALEXを使い、さまざまな波長による観測が実施されている。NGC 2623は活動銀河核の形成途中にあるため、赤外線やX線による観測が行われれば、可視光では見ることのできない活動銀河核や銀河中心における星形成に関するデータが得られると考えられている。

ESAリリース

太陽系を包むヘリオスフィアの果てに謎の模様

2009年10月25日 10時07分32秒 | 宇宙
昨年10月に打ち上げられた星間境界観測機「IBEX」による約6か月の観測データから、ヘリオスフィア(太陽圏)の全天地図が作成された。

ヘリオスフィアとは、太陽系を包む巨大な磁気の泡のようなものだ。この泡は、太陽から生じて冥王星の軌道の先にまで広がっている。さらにその外縁部は、宇宙線や恒星間ガスなどが太陽系の外から侵入するのを防ぐ役割を担っている。そのため、構造や大きさや強度を知ることは、重要な研究課題の1つとなっている。

しかし、ヘリオスフィアは巨大で、空全体を埋め尽くしており、光を発することもなく、これまで誰も見たことがなかった。

IBEXには「TWINS」と呼ばれる広視野中性原子撮像・分光器が搭載されており、地球のまわりを周回する軌道上から、太陽風と太陽系の外からやってくる恒星物質がぶつかってできる高速中性原子(ENA)を検出・計測することができる。

そのTWINSを使った観測で作成された地図に、ENAを強く発するリボンのような細長い構造が見つかった。このような構造が存在するとは予測されたこともなく、起源はもちろん不明である。

IBEXの主任研究員で、米・サウスウエストリサーチ研究所(SwRI)Dave McComas氏は、「このようなリボンの存在は予想外でした。しかも、どうやって形成されたのかもわかりません。ヘリオスフィアの外縁部に関する、これまでの考え方を改める必要が出てきました」と話している。

粒子の巨大な流れは、銀河の磁場方向に対して垂直に走っている。「これは偶然の一致ではありません。ヘリオスフィアと太陽系の外に広がる銀河空間との間で起きている、なにか基本的な作用をわれわれが見逃しているのです。理論系の研究者は、今必死になってそれを解き明かそうとしています」(McComas氏)。

IBEXは、現在2度目の観測を行っている。次に作成される全天地図で、もしリボンに変化が見られれば、それがなぞを解き明かす鍵になるかもしれないと注目されている。

老化防止薬が実現に?

2009年10月25日 10時05分14秒 | 健康・病気
 ヒトの老化(エイジング)治療に向けての可能性が開けたことが、マウスの遺伝子組み換え研究を通じて報告された。遺伝子操作されたマウスは、加齢性の疾患にかかりにくくなったほか、雌では寿命が19%延長したという。

 一部の動物で、摂取カロリーを抑えると寿命が延びることが数十年前から知られていたが、これまでその理由は明らかにされていなかった。米科学誌「Science」10月2日号に掲載された今回の研究は、S6K1と呼ばれる蛋白(たんぱく)を産生しないようにマウスの遺伝子を操作し、厳格な食餌制限に似た作用を引き起こさせたもの。ただし、ヒトで同じことをして効果があるかどうかは不明である。「雄のマウスでは寿命延長は認められなかったが、有害な作用はみられず、マウスは総じて健康で元気であった」と著者の1人、英ロンドン大学教授のDominic J.Withers博士は述べている。

 今回の研究の要点は、食事制限による利益に関する「メカニズム」を突き止め、既存の薬剤によってそれを利用できる可能性を示すことだとWithers氏は説明している。問題は厳格な食事制限による利益を再現する方法で、長期にわたって極度に厳しい食事制限を続けることは困難であることを、同氏は認めている。

 通常より19%長く約950日生きた雌のマウスは、比較的痩せており、骨が強く、2型糖尿病に罹りにくかったほか、頭がよく好奇心の強い傾向がみられたという。免疫系で重要な役割を担うT細胞にも「若さ」がみられ、加齢による免疫力の低下が抑制されていることが示された。雄には寿命延長はみられなかったが、その他の健康効果は雌と同様に認められた。寿命の雌雄差の原因は不明だという。

 米ワシントン大学(シアトル)病理学助教授のMatt Kaeberlein氏は「今回の研究をはじめとする最新の知見から、研究者らの間では老化防止薬がいずれ実現することが確信となりつつあり、rapamycinラパマイシン(日本国内未承認、主に移植患者に使用されるmTOR阻害薬)がマウスの寿命を延ばしたという最近の報告も、今回の知見を支持するものだ」と述べている。

 Withers氏は「次のステップとして考えられるのは糖尿病薬メトホルミンで、これがマウスの遺伝子組み換えに似た効果をもたらす可能性がある。しかし、実際にこの研究に基づく薬物療法に長期的な利益があるかどうかを明らかにするには、まだ時間がかかるだろう」と述べている。