超空洞からの贈り物

様々なニュースや日常のレビューをメインに暗黒物質並に見つけ難い事を観測する、知識・興味・ムダ提供型共用ネタ帳です。

「超撥水性」に振動が果たす役割

2009年11月07日 22時41分19秒 | サイエンス
自然界で生育しているハスの葉は、水滴が載っても、そのうちその水滴は消える。しかし研究室では、水滴は表面に留まり続ける。この現象の謎を、デューク大学の材料科学者Chuan-Hua Chen氏が解明した。同氏の最新研究は、10月21日(米国時間)付けで『Physical Review Letters』誌のオンライン版に掲載された。

中国中央部の洪湖市出身で、周りにハスの多い環境で育ったChen氏は、ハスの葉は風などによって起こる微細な振動を利用して水をはじいているのではないかと考えたが、これまでは研究室でそのような実験が行なわれたことはなかった。

そこでChen氏は、指導する大学院生のJonathan Boreyko氏とともに、ハスの葉の上に水分を結露させたものを、電器店『RadioShack』で買った20ドルのスピーカーのウーファー部分に載せて固定し、約100ヘルツの周波数で葉を振動させ、その様子を超高速カメラで撮影した。すると、[水滴は「自動的に」ジャンプして表面から離れ、]自然環境にあるときと同じように、葉は水をはじいた。

ハスの葉は、疎水性(水となじみにくい性質)の物質の代表例だ。葉の上に水滴が落下しても、そのまま転がり落ち、決して濡れることがない。

顕微鏡で見ると、葉の表面は非常に凹凸が激しい。繊維に覆われた微細な突起が水滴を支え、空気のクッションを作って水が葉につくのを防いでいる。[葉の表面に、ろう質のナノ粒子が並んだ極小の隆起物がある(日本語版記事)。ハスは、高度な撥水性によって、面に対して150°を超える接触角で水滴が接する超撥水性を持つ(ロータス効果と呼ばれる)]

しかし、水がいったん空気のポケットの中まで入り込むと、表面の性質は逆転し、水になじみやすい親水性を持ち始める。そのため、空気のポケット内で形成される水滴は、乗り物などに施す疎水性コーティングを開発する研究者にとって大きな問題だった。彼らはこれを、疎水性の素材が実用によって劣化するためだと考えていた。

しかし、真の問題は、ハスの葉が自然環境と同じように振動できないことにあったらしい。今回、単純な振動を与えればハスの葉は水をはじくことが明らかになったことで、疎水性素材の開発に立ちはだかっていた障害は取り除かれた可能性がある。今後はこの性質を応用し、環境内のわずかなエネルギーを利用して、自らを乾いた状態に保つような素材を開発できるかもしれない。

下の動画は、実験の様子を撮影したものだ。初めは、ハスの葉の微細な突起に水滴が軽く突き刺さったような状態になっているが、動画の中ほどで振動が始まると、水滴はそこから離れようとし始め、ついには表面から離れる。

これを材料科学の言葉で説明すると、葉の表面が疎水性でない「Wenzel状態」から、疎水性の「Cassie状態」に変化した、ということになる。この現象が研究室で観察されるのはこれが初めてのことだという。

ピラミッドの石と、米軍の最新研究

2009年11月07日 22時36分35秒 | サイエンス
セメント製造技術は、歴史のなかで途絶えたり再発見されたりしてきた。古代ローマ人は、粉々にした岩(caementitium)を生石灰と水に混ぜて、さまざまな建物に使える物質を作り出す方法を知っていた。ローマにあるパンテオンは、無筋コンクリートでできた世界最大のドームといわれており、2000年経った今も強度を保っている。[古代ローマで使われたコンクリートは、セメントおよび火山灰を主成分としており、現代コンクリートの倍以上の強度があったとされている]

だが、中世にはこういった技術は失われ、粗末な代替品として石灰モルタル(洋漆喰)が使われていた。また、1950年代までは、現代的なコンクリートの方が、古代の似たような素材と比べて明らかに耐久性がなかった。多くの建物が、透水や化学作用によって劣化に冒されていたのだ。

ウクライナの科学者、Victor Glukhovsky氏は、古代のセメント製造法だとなぜ現代のセメントより耐久性の高いものができるのかを調べ、アルカリ活性剤を加えることで、非常に品質の高いものができることを発見した。Glukhovsky氏の研究に影響を受けたフランス人の化学エンジニアJoseph Davidovits氏は、ジオポリマーの化学的構造を解明し、その構造を利用する方法を発見した。

ジオポリマーは、専門的には合成アルミノケイ酸塩物質と呼ばれているが、高温で焼成させる必要のないスーパーセメントまたはセラミックスと呼ぶ方がわかりやすいだろう[詳しい説明はこちら(PDF)]。ジオポリマーで作ったマグカップは、セメントの床に落としても割れずに跳ね返る。

Davidovits博士が主張した最も注目に値する説は、エジプトの大ピラミッドが自然な石の塊から造られたのではなく、ジオポリマー石灰石コンクリートの一種である人造石で造られたというものだ。

この説が正しければ、ピラミッド建造の多くの謎が解明される。その場でコンクリートを生成して現場で打つ方が、巨大な石の塊を動かすよりはるかに簡単だからだ。驚くべきことに、X線と顕微鏡を用いた最近のサンプル調査は、ピラミッドが人工石で作られているとする説を裏付けるものだという。

現代においては、ジオポリマーの導入に早くから熱心な組織の1つが米空軍だ(イランのテヘラン大学などもジオポリマーの研究を行なっているが)。

たとえば、ピラメントと呼ばれるジオポリマー・ベースのセメントは、滑走路の建設と修理をすばやく行なうのに適している。ピラメントで滑走路を造ると、わずか数時間で最重量の飛行機が使えるようになる。通常のコンクリートが数日かかって獲得できる強度を数時間で得られるのだ。

米空軍研究所は、滑走路、絶縁材、ロケット・ノズルなどさまざまな用途でのジオポリマーの研究に資金を提供している。これまでに、宇宙という過酷な状況でも人工衛星の部品を接着することができる特殊な接着剤が、ジオポリマーから開発されている。

一方、[地下の目標を爆破するための]新型の大型貫通爆弾は、圧縮強度5000psi[重量ポンド毎平方インチ]で厚さ約61メートルのコンクリートを貫通できるとされている。だが、圧縮強度が2倍になると、貫通できる厚さはわずか約7.6メートルになる。もっと強度の高いコンクリートが開発されると、その厚さはもっと減ることになるだろう。

コーヒーがC型肝炎の進行を遅らせる

2009年11月07日 22時36分11秒 | 健康・病気
 コーヒーを飲むと、慢性C型肝炎患者の疾患の進行を遅らせることが新しい研究により判明した。

 医学誌「Hepatology(肝臓学)」11月号に掲載の今回の研究では、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した患者766人を対象に、コーヒー、緑茶および紅茶の摂取についてたずねるとともに、3カ月ごとの診察を約4年間実施したほか、18カ月目と3.5年目に生検を行い肝疾患の進行を調べた。その結果、1日に3杯以上コーヒーを飲む患者は、コーヒーを飲まない患者に比べ肝疾患の進行がみられる確率が53%低かった。緑茶および紅茶による影響は認められなかったが、被験者の茶の摂取量自体が少なかったという。

 研究を率いた米国立癌(がん)研究所(NCI)のNeal Freedman氏によると、今回の研究はHCVによる肝疾患の進行とコーヒー摂取との関連について検討した初めての研究だという。「HCV感染者の数の多さを考えると、肝疾患の進行に関わる修正可能な危険因子(リスクファクター)を特定することは重要である。コーヒー摂取に付随する他の因子が関与している可能性は否定できないが、研究結果から、コーヒー摂取量の多い患者では疾患の進行リスクが低いことが示されている」と同氏は述べている。ただし、コーヒーの利益に関するこの結果を一般の健康な人に当てはめるべきではないという。

 米国疾病管理予防センター(CDC)によると、米国で300万人以上、世界人口の2.2%がHCVに感染している。米国ではHCVが肝移植の主要な原因となっており、毎年8,000~10,000人が死亡している。

赤ブドウに含まれる物質が糖尿病を改善

2009年11月07日 22時35分41秒 | 健康・病気
 赤ブドウに含まれ、健康によいとされるレスベラトロール(resveratrol)と呼ばれる物質に、2型糖尿病を撃退する働きのあることが新しい研究で示された。ただし、この作用はマウスの脳に注入した場合にのみ認められ、赤ワインをはじめとするブドウ製品の摂取による効果を示す根拠は得られていないという。

 レスベラトロールは赤ブドウ、赤ワイン、ザクロなどの食品に含まれ、高脂肪食を与えたマウスにも寿命を延ばす効果があるとして科学者らの期待を集める物質。米テキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンター(ダラス)助教授のRoberto Coppari氏によると、ほとんどの動物では食餌の摂取量を通常の70%に制限すると延命効果が認められるが、レスベラトロールにはこれに似た作用があるようだという。

 今回の研究は、寿命ではなく糖尿病に対するレスベラトロールの効果を検討したもの。これまでの研究では、レスベラトロールに糖尿病を防止する効果があることが示唆されていた。Coppari氏らは、食餌により糖尿病を誘発したマウスの脳にレスベラトロールまたはプラセボのいずれかを注入し、その結果を観察した。

 5週間後、レスベラトロールを注入したマウスは、高脂肪食を与えていたにもかかわらずインスリンレベルが正常レベルの半分にまで戻った。これはレスベラトロールがサーチュイン(sirtuin)と呼ばれる脳の蛋白(たんぱく)を活性化したためではないかと研究グループは述べている。一方、プラセボを投与したマウスには食餌が原因と思われるインスリンレベルの上昇がみられた。

 ただし、赤ワインに含まれるレスベラトロールの量は少ないため、ワインを飲んでも同じ効果は期待できないとCoppari氏はいう。血流と脳との間に「血液脳関門」と呼ばれる関門があり、さまざまな物質が脳に入らないようになっているためである。「慢性疾患患者の脳に直接薬剤を投与するのは現実的ではないが、今回の研究がレスベラトロールよりも脳へ届きやすい物質の開発につながる可能性がある」とある専門家は述べている。

 この研究は、米国心臓協会(AHA)、米国立衛生研究所(NIH)および米国糖尿病協会(ADA)の支援により実施され、研究結果は医学誌「Endocrinology(内分泌学)」オンライン版に掲載された。

携帯電話と脳腫瘍の関連が示される

2009年11月07日 22時34分58秒 | 健康・病気
 携帯電話と脳腫瘍の関係に焦点を当てた最新の研究から、両者の間に弱い関連が認められることが明らかにされ、医学誌「Journal of Clinical Oncology(臨床腫瘍学)」オンライン版に掲載された。

 今回の研究は、既存の研究をレビューしたもの。米カリフォルニア大学バークレー校のJoel Moskowitz氏および韓国の研究員らが「mobile phones(携帯電話)」「cellular phones(セルラー電話)」「cordless phones(無線電話)」、および「tumors(腫瘍)」「cancer(癌/がん)」のキーワードで医療データベースを検索。最終的に計3万7,916人を対象とする23件の症例対照研究について分析した。

 その結果、全体では携帯電話と脳腫瘍との間には良性、悪性ともに関連はみられなかったが、より厳密な方法を採用した研究(ほとんどはスウェーデンの同一研究チームにより実施されたもの)では有害な影響が報告されていたのに対し、厳密さが低い研究(多くは業界団体の支援によるもの)では保護効果があるとの結果が出ていることが判明。厳密な方法で実施された研究では、10年以上の携帯電話の使用により脳腫瘍の発症リスクが18%増大するほか、一部の研究では携帯電話を使用する側の脳に腫瘍が発生する比率が高いことも示された。

 米国癌協会(ACS)によると、米国では毎年成人2万1,000人、小児3,800人が脳腫瘍または脊髄腫瘍と診断されているという。Moskowitz氏は、携帯電話をポケットに入れて持ち運ぶと生殖器など身体の他の部位にも害をもたらす可能性もあると考えており、携帯電話使用者の多さや小児への影響を考えると、さらに長期的な研究を含めた多くの研究を実施する必要があると述べている。

 一方、セルラー通信工業会(CTIA-The Wireless Association)など業界の一部は今回の結果に異議を唱えており、無線機器は無害であると結論した研究が圧倒的に多く、ACSや米国立癌研究所(NCI)、世界保健機関(WHO)、米国食品医薬品局(FDA)などの各保健機関も、無線機器は公衆衛生上のリスクとはならないという見解で一致していると主張している。

宇宙線の発生源を解明か

2009年11月07日 22時21分52秒 | 宇宙
 宇宙では星の爆発が超強力な粒子加速器のような働きをして、いわゆる“宇宙線”を発生させていることが新たな研究で判明した。

 宇宙線は高エネルギーの素粒子であり、地球に絶えず衝突している。最も強力な粒子は時速157キロの速球と同じぐらいの威力で衝突することもある。宇宙線は銀河の遠く離れた場所から来ることがわかっているが、惑星や恒星のような大きな天体の磁場の影響で粒子の飛行進路が曲がってしまうため、正確な発生源の特定が難しい。

 また、宇宙線は銀河の磁場にも捕獲されており、ふたをしたガラスびんの中のハエのように銀河の内部を飛び回っている。

 一部の天文学者は超新星の残骸から宇宙線が発生しているという可能性を示唆していた。その理論によれば、大質量星が爆発するときに、広がる衝撃波が電荷を帯びた粒子(陽子)を引き寄せる。加速器のような超新星残骸の磁場内で粒子が跳ね返り、光速に近づくと宇宙線として銀河内に放出されるという。

 天の川銀河の宇宙線や他の銀河に閉じ込められている宇宙線はこれまで観測できなかったため、この理論を検証するのは難しかった。だが今回初めて、国際研究チームが高エネルギー放射線イメージング望遠鏡配列システム(VERITAS:Very Energetic Radiation Imaging Telescope Array System)とフェルミ・ガンマ線天文衛星を利用してこの超新星理論の強力な証拠を発見した。

 理論によると、いわゆる“スターバースト銀河”には急激な星形成が行われている領域があり、超新星爆発によってその一生を終える超大質量の星が多数存在することになる。つまり、天の川銀河のような通常の銀河よりも宇宙線が多くなるはずだという。

 研究チームは最も高エネルギーの光であるガンマ線を探索した。光は宇宙線とは違って磁場の影響を受けないため、地上観測が可能であり、発生源を正確に追跡できる。

 研究メンバーでカリフォルニア州にあるスタンフォード大学カブリ素粒子天体物理学・宇宙論研究所(KIPAC)のキース・ベクトル氏は2日、「ガンマ線は星間物質と相互作用する宇宙線に由来するものだと考えている」と記者会見で語った。

 チームは予想通り、地球から約1200万光年離れたスターバースト銀河「M82」(写真)から大量のガンマ線が発生していることをVERITASの観測で突き止めた。フェルミ衛星でもM82とスターバースト銀河「NGC253」の両方からガンマ線を観測した。さらに、フェルミ衛星では天の川銀河の小さな伴銀河(衛星銀河)である大マゼラン雲の星形成領域から放射されたガンマ線も観測した。

 研究メンバーでワシントンD.C.にある米国海軍研究所(NRL)のチャールズ・ダーマー氏は、「銀河に超新星が多く含まれるほど、ガンマ線はより強く輝くはずだ。われわれはそれを探している」と話す。

 だが、この作用では特定のエネルギーレベルまでの宇宙線しか放出されない。最も高エネルギーの宇宙線は超大質量ブラックホールから噴出する粒子のジェットから放射されると考えられるが、その理論はまだ検証されていない。

 研究メンバーでフランスの宇宙線研究センター(CESR)のユルゲン・クネーデルセダー(Jurgen Knodlseder)氏は、「今回の研究で、宇宙線の発生源の解明という大きなパズルのピースがまた1つ見つかった」と述べている。

水星の火山跡、メッセンジャー最新画像

2009年11月07日 22時20分50秒 | 宇宙
 NASAの水星探査機メッセンジャーが、最後となる3回目のフライバイ(接近通過)でとらえた写真が11月3日、新たに公開された。上の写真はその中の1枚を着色したもので、小型の岩石惑星である水星にきわめて新しい火山の痕跡がわかる。

 右上の黄色い光の輪で囲まれた不規則にえぐれた深いくぼみは、科学者によると、激しい火山噴火によって形成された地形である可能性があるという。

 また、中央近くの2重に輪を描いたような火山盆地は、形成されてからわずか10億年ほどしか経過しておらず、最も新しい火山活動の証拠とみられている。

エンケラドスから立ちのぼる水蒸気流

2009年11月07日 22時19分48秒 | 宇宙
 氷で覆われた土星の衛星エンケラドス。NASAの土星探査機カッシーニが新たにとらえた画像には、南極域から噴き出す水蒸気流(プルーム)が、太陽光に照らされておぼろげに輝いている。画像は調整や補正処理を行っておらず、そのため南極が上になっている。

 2009年11月2日、エンケラドスのプルームの成分を採取するため、カッシーニは限界まで降下、表面から102.7キロ上空を飛行した。前回のフライバイ(接近通過)では、プルームが水と有機化合物を含み、南極域付近の巨大なひび割れからは熱を発していることが明らかになった。

129億光年の距離で銀河を22個発見

2009年11月07日 22時17分37秒 | 宇宙
 最古級の銀河22個 日米の国際研究チームが、約129億光年かなたにある最古級の銀河22個を、米ハワイ島の大型望遠鏡「すばる」で発見した。

 宇宙初期の銀河がこれほど大量に見つかったのは初めて。今の銀河より巨大な星が集まってできていた可能性があり、宇宙の進化過程を解明する手がかりになりそうだ。12月発行の米専門誌に掲載される。

 研究チームは、すばる望遠鏡に遠くの銀河を見分ける特殊なフィルターを取り付け、2006年から観測。宇宙誕生から8億年前後に誕生した銀河22個を見つけた。分析した結果、当時の宇宙を満たした紫外線量から推定されるよりも、星の総量が少なかった。

 チームを率いた米カーネギー研究所の大内正己特別研究員は「宇宙初期の銀河では、大量の紫外線を効率よく出す巨大な星ばかりが作られた可能性がある」と話している。

観測史上最遠の爆発現象、GRB 090423

2009年11月07日 22時15分05秒 | 宇宙
GRB 090423の残光をとらえた画像

ガンマ線バースト(GRB)とは、宇宙で起きる最大級の爆発現象である。その多くは、ひじょうに重い恒星が核融合の燃料を使い果たし、重力崩壊を起こしてブラックホールになる際の大爆発であると考えられている。最初に、高いエネルギーの電磁波であるガンマ線が放出されるのが特徴で、その後はしばらく可視光などの「残光」で輝く。

ガンマ線バーストは、地球から数十億光年以上の距離、つまり数十億光年以上前の宇宙で見つかっている。しかし、GRB観測衛星スウィフトが今年4月23日に検出したGRB 090423の遠さと古さは格別だった。

スウィフトからの速報を受け、世界中の望遠鏡が残光を観測した結果、GRB 090423までの距離は約131億光年であることが明らかになった。これまで最遠とされてきたガンマ線バーストよりも約1.8億光年遠い。宇宙が誕生したのは約137億年前と考えられているので、GRB 090423は宇宙がおよそ6億歳だったときの現象だ。

ビッグバンから約8~9億年が経過するまでの宇宙は、「暗黒時代」とも呼ばれている。当時の宇宙は、陽子と電子が結合した「水素原子」で満たされていた。その中から強力な光を放つ第1世代の星が誕生し、水素原子を再び陽子と電子に分離させたことで暗黒時代は終わった。

「この観測のおかげで、宇宙の地図に残された最後の空白地帯への探検を始めることができます」と研究チームを率いたNial Tanvir氏は話す。暗黒時代の天体、つまり第1世代の恒星や銀河は、ほとんど観測されていない。GRB 090423の発見は、単に遠方天体の記録を更新しただけではなく、これまで観測の目が届かなかった時代への扉を開いたことになる。

University of Leicester