月に到達した太陽粒子はほぼすべてが月面に吸収されると考えられていたが、一部は“反射”されていることが最近になって明らかになった。この発見により、太陽と月の関係についてさらに解明が進むという。
月には大気がほとんど存在しないため、月面は“太陽風”(太陽から全方向に放出される荷電粒子の流れ)の影響を絶えず受けている。このところ月面に水が存在する可能性がメディアを賑わしているが、一部の研究者はこの太陽風が水の生成プロセスに関わっていると見ている。
スウェーデン最北部の都市キルナにあるスウェーデン宇宙物理研究所のスタス・バラバシュ(Stas Barabash)氏は次のように解説する。「月面に吸収される太陽風の陽子と月面の鉱物に含まれる酸素が相互作用を起こすと、水やヒドロキシ基が生成されると考えられる。ただし、これはあくまで“理論上”の話で、立証するにはまだまだ多くの調査が必要だ」。
しかし、天文学的には月に到達した太陽粒子はほぼすべてが月面の土壌に吸収され、このような作用を起こすと考えられていたが、インド初の無人月探査機チャンドラヤーン1号の観測データによってこの通説が覆された。月に到達した陽子の2割は吸収されず、宇宙空間にまっすぐ跳ね返されていることが確認されたのである。
バラバシュ氏らの研究チームはこの結果に基づき、いままで観測されたことのない月の“別の顔”を撮影したいと考えている。天体撮影には天体からの反射光を利用する方法があるが、それと同じように月面で反射された陽子を検出し、その場所をマッピングしてまったく新しい画像を作成しようというのである。「これで太陽風が月面に与える影響を正確に把握できるはずだ」と同氏は期待を寄せる。
月面に到達した陽子は電子と結合し、中性水素原子となって反射される。「中性水素原子は文字通り“中性”であるため、いかなる電磁力の影響も受けない。したがって月の引力の影響も少なく、反射後はまっすぐ前進し続ける」とバラバシュ氏は説明する。
このような中性水素原子の直進性を利用すれば、太陽風の影響が最も大きい月面の地域をかなり正確に特定できるはずである。例えば、月面の一部のクレーターは独自の磁場を持ち、太陽風を遮っている。このような地域では陽子の吸収も反射も起こらないため、新しい地図では暗い点として示されることになる。
バラバシュ氏によると、大気が薄いという条件を満たしていれば、この手法は太陽系のほかの天体にも応用できるという。
欧州宇宙機関(ESA)は日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに2013年に水星探査ミッション「BepiColombo(ベピ・コロンボ)」をスタートさせる予定だが、実際に打ち上げられる探査機には、チャンドラヤーン1号が反射陽子の検出に利用したものと同様の機材が搭載されるという。「新しい手法を用いれば、水星のどの地域に太陽風が直接当たるのかをダイレクトに観測できる」とバラバシュ氏は語る。
月には大気がほとんど存在しないため、月面は“太陽風”(太陽から全方向に放出される荷電粒子の流れ)の影響を絶えず受けている。このところ月面に水が存在する可能性がメディアを賑わしているが、一部の研究者はこの太陽風が水の生成プロセスに関わっていると見ている。
スウェーデン最北部の都市キルナにあるスウェーデン宇宙物理研究所のスタス・バラバシュ(Stas Barabash)氏は次のように解説する。「月面に吸収される太陽風の陽子と月面の鉱物に含まれる酸素が相互作用を起こすと、水やヒドロキシ基が生成されると考えられる。ただし、これはあくまで“理論上”の話で、立証するにはまだまだ多くの調査が必要だ」。
しかし、天文学的には月に到達した太陽粒子はほぼすべてが月面の土壌に吸収され、このような作用を起こすと考えられていたが、インド初の無人月探査機チャンドラヤーン1号の観測データによってこの通説が覆された。月に到達した陽子の2割は吸収されず、宇宙空間にまっすぐ跳ね返されていることが確認されたのである。
バラバシュ氏らの研究チームはこの結果に基づき、いままで観測されたことのない月の“別の顔”を撮影したいと考えている。天体撮影には天体からの反射光を利用する方法があるが、それと同じように月面で反射された陽子を検出し、その場所をマッピングしてまったく新しい画像を作成しようというのである。「これで太陽風が月面に与える影響を正確に把握できるはずだ」と同氏は期待を寄せる。
月面に到達した陽子は電子と結合し、中性水素原子となって反射される。「中性水素原子は文字通り“中性”であるため、いかなる電磁力の影響も受けない。したがって月の引力の影響も少なく、反射後はまっすぐ前進し続ける」とバラバシュ氏は説明する。
このような中性水素原子の直進性を利用すれば、太陽風の影響が最も大きい月面の地域をかなり正確に特定できるはずである。例えば、月面の一部のクレーターは独自の磁場を持ち、太陽風を遮っている。このような地域では陽子の吸収も反射も起こらないため、新しい地図では暗い点として示されることになる。
バラバシュ氏によると、大気が薄いという条件を満たしていれば、この手法は太陽系のほかの天体にも応用できるという。
欧州宇宙機関(ESA)は日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに2013年に水星探査ミッション「BepiColombo(ベピ・コロンボ)」をスタートさせる予定だが、実際に打ち上げられる探査機には、チャンドラヤーン1号が反射陽子の検出に利用したものと同様の機材が搭載されるという。「新しい手法を用いれば、水星のどの地域に太陽風が直接当たるのかをダイレクトに観測できる」とバラバシュ氏は語る。