toと福島県の雄国山に行ったら、登り始めで、カモシカに出会った。
最初は犬だと思った。
先を歩いていたitoのやつは、「お前先に行け」と言って後ろに行く。
小生にとっては、小首を傾げてこっちを見て、かわいい顔をしていたので、「お邪魔しまーす」と声をかけた。
人間に慣れているのかと思ったが、角があるので向かってきたらちょっと困ると思って慎重に前進する。
近づくと、「こっちだよ」というように先を進んでくれた。横から見ると、結構でかい。
「案内してくれてありがとう」と言うと藪に消えた。
どうしても、思考は「もののけ姫」につながる。
最初からカモシカではこの先何が出て来るか、心配になった。
クマ出没注意という看板を思い出した。
そもそも、米沢から喜多方に抜ける途中の田沢では、橋の欄干に、大きいニホンザルが座っていた。二種類目であったから、なおさらである。
カモシカが、来るなと言ったのか、大丈夫だよ、と言ったのかわからず、引き返そうかとも思った。せちがらい老人二人は、せっかく来たのだからと、話し合うこともなく進む。
鈴を鳴らし、仕方がないので、時々大きなかけ声を出した。笹薮で音がすると立ち止まって耳をすました。カモシカがついてきてくれているのかとも思った。下山するまでその考えは続いた。
しかし、道には、どんぐり、栗、栃の実などが、食べられた形跡もなく落ちている。これらを食して冬支度する動物たちは、出没していないように解釈してみた。
高い木が生い茂り見晴らしがよくない、そして頂というものが見えない、標柱もないという、傾斜はそれほどないが結構つらい歩行を続ける。
途中では、初老と見た一人の女性が、達者な足で下ってきた。熊よけの鈴もつけていない。「こちらの山には、どなたも来ていないようです。」とおっしゃった。後で聞いたら、距離が開いたitoがすれ違った時には、何も言わなかったそうで、面倒臭い初老の男は、勝手に僻んでいた。
そこから急に、恐れが薄くなり、山頂まで速度を上げた。
ネット情報等では、1時間で登れるとあるようだが、5km以上の山道をビビりながら歩くのでは、アラ還にはそれは無理であり、2時間以上を要した。
頂きには、やぐらがって、そこからは、見晴らしがいい。桧原湖、雄国沼、磐梯山がよく見える。
itoのやつは、どこかで諦めているだろうと思いながら、サンドウィッチを食べる。(おにぎりも買ったが、車に忘れた。)食べ終わると、itoが左右に体を揺らしながら藪から出て来た。
やぐらの上で、例によって罵り合いを展開する。
写真を撮って、itoのメシが終わるのを待って、仲良く下山した。
登山口で、無事であったことに山に感謝し、カモシカに感謝して礼をした。
温浴施設で風呂に入る。
じじい二人で、itoが確保した、ペンションに泊まる。
部屋にテレビもなくて、夕食にワインを二人で1本飲んで、ベッドで持参した文庫本を3ページ読んだら、眠くなったので寝た。
10時間33分も寝た。日常では6時間ぐらいしか寝ないのだが、磐梯山を枕にしていた効用なのか気分良く眠ることができた。
朝食を食っていると、itoが、「大内宿に行く」と言い出した。勝手なじじいである。ネットで調べると、1時間45分ぐらいで行けるというので、運転して行った。
はじめて行ったが、テレビで見るとおりだった。
ぶらぶらしていると、撮影している人を見た。なんだろうと思ったら、モデルさんがいて、見ていたらご丁寧にミスワールドのたすきまでかけてくれた。
遠慮がちに、アシスタントのお嬢さんの肩越しに撮ってみた。
(たぶん)伊達さんが、なにゆえ大内宿にいるのかわからなかったが、小生は今は仙台に住んでいるから、その点だけの細い縁もないわけではない。
猿からはじまり、カモシカ、ミス日本代表と、三種類の方々に会った、というお話である。