何とか丼セットなんか、
ありえない。
どこ産のそば粉とか、
どうでもいい。
ルチンが健康にいいなんてポスターなんか、
絶対に貼ってない。
でも、大繁盛なそば屋、北10西4の「大滝」。
常連は、
真冬でも間違いなく自転車に乗っているじいちゃんや、
退職間際の会社員。
そば屋のおっちゃんは、合間を縫って、
短くタバコをつまんで吸っている。
50歳未満は、
あまり行ってはいけないような、独特の空気を感じるそば屋。
なんでもないそば屋。
ある、知り合いが言ってた。
彼女のご主人は、
ガンで亡くなったんだけど、
夫婦の最後の外食は、
「大滝」のかしわそばだったって。
余命いくばくもないご主人は、
「大滝のかしわそば」を食べたいって言ったから。
なんでもないことは、
なんでもない日常にとって、
必要な時がある。
時々私は、
このなんでもないそば屋に1人で行く。
そして、
なんでもないことのありがたみを思い出す。