角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#087 「格差」と「貧困」狂想曲

2015-08-30 06:54:54 | 私の嫌いな言葉
「格差」「貧困」「富の集中」・・・
微妙に嫉妬心をくすぐる言葉です。

そこへ昨年末から『21世紀の資本』が大流行。

私が行きつけの書店では、
この本、どういうわけか「ビニ本」扱いで、
立ち読みお断りでした。

仕方がないので、
借りて読むことにしたのですが、

図書館にも予約殺到、
1月に頼んだものの、順番が回ってきたのは7月末でした。

結果、流行も過ぎ去った「今は昔」のご紹介ということに。

正直言って、
「ベストセラーは買って読むものじゃない」
の典型?と思っちゃいました。
(実際、買ってないわけですが)

一応、目次だけ示しますと・・・

謝辞
はじめに

第Ⅰ部 所得と資本
 第1章 所得と産出
 第2章 経済成長ー幻想と現実

第Ⅱ部 資本/所得比率の動学
 第3章 資本の変化
 第4章 古いヨーロッパから新世界へ
 第5章 長期的に見た資本/所得比率
 第6章 21世紀における資本と労働の分配

第Ⅲ部 格差の構造
 第7章 格差と集中ー予備的な見通し
 第8章 二つの世界
 第9章 労働所得の格差
 第10章 資本所得の格差
 第11章 長期的に見た能力と相続
 第12章 21世紀における世界的な富の格差

第Ⅳ部 21世紀の資本規制
 第13章 21世紀の社会国家
 第14章 累進所得税再考
 第15章 世界的な資本税
 第16章 公的債務の問題 


確かに膨大な統計資料を取り上げて、
懇切丁寧に説明しているのですが、
私としては、あまり面白くなかった。

(興味ありで、もう少し詳しく知りたい方は、
 みすず書房:『21世紀の資本』→http://www.msz.co.jp/book/detail/07876.html

ところで、ピケティ・ブームの素地として、
「格差」と「貧困」があったわけですが、

わけても「相対的貧困率」=
〈国民の可処分所得を高い順に並べ、ちょうど真ん中となる人の額(中央値)の半分未満の人の割合を示す〉
というヤツは、
今ひとつ意味不明の割に、巷間、しばしば言及されてます。

これで比較すると、
〈日本は決して平等を誇れる国ではなく、先進各国の中では格差が大きいのが明白だ〉
ということになってしまうんだそうです。


(時事ドットコム:格差をめぐる潮目と共感5/9→http://www.jiji.com/jc/v4?id=kks5250005

全くもって実感できない話です。

そりゃ、日本でも、
特殊な事情で生活に困っている人がいるのは認めますよ。

けれど、
貧しさがニュースになるくらい豊かな日本にあって、
(主に政治的理由から)貧困を一般的であるかのように喧伝するとしたら、
それこそ心が貧しいんじゃないの?
と言いたくなります。

ちなみに、
〈現在の所得、収入に「満足している」「まあ満足している」と答えた人は合計で前年比1ポイント増の45.7%となり、2年ぶりに改善した〉
なんて話もあります。
(時事ドットコム;収入「満足」、2年ぶり改善=賃上げが影響-内閣府調査→http://www.jiji.com/jc/zc?k=201508/2015082200226&g=eco

元ネタのグラフを示すと、


(国民生活に関する世論調査→http://survey.gov-online.go.jp/h27/h27-life/index.html

満足か不満かを聞かれると、
たいていは不満の方へ引きずられるものですが、
それでも半数近くが満足と答えているんです。

私としては、こちらの数字の方が、
「まあ、そうでしょう」と思えるんですけどね。

この際、私的な考えを言ってしまえば、

〈1%の富裕層が握る資産が世界の富に占める割合は、2009年の44%から、14年は48%に増加した。このままのペースが続けば来年までには50%を超す見通し〉
(CNN:1%の富裕層が世界の富の半分を所有→http://www.cnn.co.jp/business/35059203.html

だとしても、
「だから、どうした」
って感じです。

お金を持っているだけなら、ちっとも羨ましくない。
使ってナンボです。

お金を使うということは、
誰かがそのお金を手にするわけで、

「富裕層」が、
お金を貯めこまずに使ってくれるなら、
それでイイんじゃないの?
と、常々思ってます。

ところで、
『21世紀の資本』の「おわりに」には、

〈でも私は、あらゆる社会学者、あらゆるジャーナリストや評論家、労働組合や各種傾向の政治に参加する活動家たち、そして特にあらゆる市民たちは、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に、真剣な興味を抱くべきだと思うのだ。お金を大量に持つ人々は、必ず自分の利益をしっかり守ろうとする。数字との取り組みを拒絶したところで、それが最も恵まれない人の利益にかなうことなど、まずあり得ないのだ〉

と、ありました。

お言葉ですが、それにしては、
本のお値段、¥5,940!

「貧困層」に優しくないなあ・・・です。


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