唯物論者

唯物論の再構築

フォイエルバッハテーゼ

2010-11-20 00:31:03 | 失敗した共産主義

 唯物論での人間論と言えば、良くも悪くもマルクスのフォイエルバッハテーゼが取り沙汰される。良い取り上げ方は、フォイエルバッハにおける社会から孤立した個人を、マルクスが社会の中で生活する個人に訂正したものとして、このテーゼを捉えるものである。悪い取り上げ方は、社会の中で生活する個人を、社会全体の中の一箇所の点へと還元させたものとして、このテーゼを利用するものである。この後者の捉え方は、もっぱら旧時代のスターリン主義者が非主流派を思想的に鎮圧する場合の、このテーゼの一般的使用方法である。

 ヘーゲルにおいて個人は抽象的なものであり、具体的なものは国家だけである。つまり個人とは、国王を中心にした国家の単なるオマケにすぎない。これに対してフォイエルバッハは、人間が抽象的観念ではなく、肉体をもつ具体的実在だと示した。つまり個人を社会全体の中の一箇所の点、という位置付けから思想的に解放したのである。そしてこのことだけでマルクスらヘーゲル左派は、フォイエルバッハに心酔したのである。前出のフォイエルバッハテーゼの捉え方の後者は、このようなマルクスの思想的経緯を逆転させる最悪の曲解である。残念ながらこの曲解は正統なものにまで祭り上げられて、公認共産主義による恐怖政治を遂行するための思想的支柱へと、フォイエルバッハテーゼを変質させた。
(2010/11/20)

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