唯物論者

唯物論の再構築

レーニン

2010-11-23 11:04:09 | 失敗した共産主義

共産主義におけるレーニンの復権は無い。レーニンの最大の勘違いは、共産主義革命が短期決戦になるという見通しである。そしてこの見通しの誤りは、資本論が抱えていた資本主義分析の経済学的欠陥に起因している。しかしレーニンの問題はそんなことではなく、甘い見通しのもとにソ連を収容所国家へと変貌させた責任にある。
 
 90年代のソ連崩壊で明らかになったのは、スターリン主義がレーニン主義の忠実な後継だったことである。スターリン批判以後、共産主義におけるソ連の国際的権威が失墜する中でも、西側共産主義陣営内ではレーニンが共産主義の教祖の一人として君臨し、共産主義の別名もマルクス・レーニン主義と称されるなど不滅の業績を誇っていた。ソ連が収容所国家だと言われ続けても、その責任はスターリンが一人で背負っており、レーニンへの批判にまで進展しなかったのである。このようなスターリン評価は、公認共産党だけでなく、トロツキスト諸派にも見られ、彼らはスターリンを世界革命を放棄した共産主義の背徳者に扱っていた。ただし中国共産党の見解だけは、スターリン主義がレーニン主義の延長上にあるものとしており、スターリン主義に対する唯一の正当な評価をしていた。実際には、スターリンは世界革命を放棄していなかっただけでなく、レーニンに忠実な形で西側諸国での労働者革命をひたすら待ち続けていたのである。
 スターリンの誤謬の全てをレーニンに帰するのは酷ではない。収容所国家の建設は、レーニン時代にすでに開始しており、スターリンはその事業を継続しただけである。このような戦時体制を正当化し得そうな根拠は、短期決戦の一点だけである。世界革命が短期決戦になるというレーニンの勘違いは、革命スタイルでの暴力革命への執着として早い時期からすでに現れており、革命時の敵対者の皆殺しを正当化し、革命後の戦時体制の継続に伴う収容所国家の成立に帰結している。80年後にソ連は崩壊するが、ロシア革命後の世界資本主義の展開を見通せなかったレーニンの限界は、東西両陣営のパワーバランスを軍事面に矮小化させたスターリンの限界へと受け継がれている。そしていつまで待っても西側諸国の労働者革命は到来せずに、戦時体制の継続の中でソ連は疲弊し、最終的に崩壊したのである。
 短期決戦の勘違いは、ロシア革命を資本主義の自壊の開始と読み違え、早晩に資本主義世界全体が世界革命の必要な時期へと移行するとの思い込みから生まれている。似たような思い込みはマルクスにも見られ、共産主義革命が明日にでも到来するかのような錯覚をしながら、マルクスも資本論を書いている。したがって師匠の勘違いを、弟子と孫弟子がさらに受け継いだだけとも言える。
(2010/11/23)

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