おばVAN日記帳 ~明日は誰に逢えるかな?~

鳥さん、虫さん、野の花。朝焼け、夕日、月の光。世界は、愛おしい者たち、美しい時で満ち溢れている。

氷山の一角

2023年12月20日 10時23分28秒 | 日記・雑記
昭和一桁生まれの母は、
御多分に漏れず物が捨てられない人。
もったいない、まだ使える、いつか使う、
と、何でもかんでも溜めこんで、
身の周りは物で溢れかえっている。

実家は、建て増し建て増しの挙句、
二世帯住宅のような形になっていて、
母の居住スペースと、
弟たち家族の居住スペースは、
一見分かれているように見えるけれど、
母の持ち物が押し込まれた納戸は、
弟たちのスペースに取り残され、
手が付けられない魔窟と化していた。

もうずいぶん前から、
不要な物は処分しよう!と、
母には言っていたのだけれど、
「自分でやるから!」の一点張り。
当時、父の介護中と言うこともあって、
私たちもあまり強くは言えず・・・
言えば喧嘩になるし、
父の介護が終わるまでは無理かな、
と、半ば諦めていた。

その父が他界して、もうすぐ5年。
さぞや「自分でやって」
スッキリなっているかと思いきや、
母の居住スペース全体までもが、
魔窟となりかけていた。
たぶん父の物は手付かずのままだろう。

でもそんな母も、ここのところ、
ずいぶんと体の自由が利かなくなり、
さすがにもう「自分でやるから!」は、
無理だと自覚し、諦めたようで、
弟たちも、やっとやれる!と片付け開始。
弟の嫁も今年になって仕事を辞めてて、
暇を持て余しているし、
俄然やる気になっている。



その弟の嫁が、
魔窟化している納戸で発掘した物は・・・


私のセーラー服!
何故かこの1着のみ、良く言えば保管、
悪く言えば放置されていた。
とっくに処分してると思っていたのに・・・
懐かしいな~!なんて、
感傷に浸っていちゃいけない。
「捨てちゃっていいよ」と言ったけど、
まあ、彼女も、
義理の姉のセーラー服捨てるのって、
抵抗あるだろうから引き取りに行った。

魔窟化している納戸に、
母の物が詰まっているのは知っていた。
でも、そこは一応弟たちのスペース内、
今まで立ち入るのは躊躇われて、
中の確認はしたことなかった。

セーラー服を引き取りに行って、
久しぶりに・・・
いやたぶん、40年ぶりぐらいに、
足を踏み入れた納戸。
明らかに不要品と思われる物は、
すでに弟の嫁によって処分されていた。
なんだ~、ずいぶん片付いているやん!
そう思った私に、彼女が、
「お姉さん、コレどうしましょ?」と・・・
彼女が開けた箪笥の引き出しの中に、
古びた畳紙に包まれた和服が・・・

和服は全て、
母の部屋にあるんだと思っていた。
こんな魔窟に押し込んでいるなんて、
どうせ高価な和服ではないだろうし、
もう着ることもなく、
母自体も忘れ去っている和服だろう。
なので弟の嫁に、
「全部捨てちゃっていいんじゃない?」
そう言ったんだけど、
「え~、でも~」と歯切れが悪い。

ん~、まあ、そうかもね。
母は、体はヨイヨイになっているが、
まだ頭がボケている訳じゃない。
もし何かのはずみに、
「あの納戸の和服は?」ってなった時、
「捨てちゃいました」とは、
嫁の立場としては言いにくいかも・・・
コレは私が引き受けるしかないだろう。



で、和服、持って帰って来た!

1枚の畳紙の中に、
2枚、3枚と入っているのもあって、
全部で何枚かは数えなかったけど、
たぶん30枚弱ぐらい。
一応全て確認することにした。

えらく派手なのが見えたと思ったら・・・


なんと私の七五三の晴れ着だった!
ってことは、60年前の物!?

そんなこんなで、
ほとんどが恐ろしく昔の物だし、
母の和服はサイズ的に私には無理だし、
ほぼ全て廃棄処分だな~と思いつつ、
チェックを進めた。

結果・・・


大きなゴミ袋2個!

ただ手前のグレーの和服を見つけた時、
コレは友人がもらってくれるかも、と・・・



遠目には無地に見えるけれど、
鮫小紋と呼ばれる物。
これなら、お茶をしている彼女が、
もらってくれるんじゃないか?
彼女ならば、私より小柄。
もちろん、彼女が着られるサイズか?
確認しなきゃいけないけれど・・・



その目線でチェックしたら、
彼女がもらってくれそうな和服、
4枚見つけた。



茶色系の鮫小紋。



縮緬に紅型(紅型風?)の小紋。



透かし模様の藤色の付け下げ(?)。
なんとコレ、
しつけ糸が付いた未使用品だった!

写真を送ってお伺いを立てたところ、
やはり気にしているのはサイズ。
裄丈を測ってみて!と言う。
裄丈は、背中心から袖口までのサイズ。
これが短いと、手首がニュッと出て、
ツンツルテンになってしまう。

裄丈は64cmだった。
現代風に言えばSサイズの和服だ。
彼女の言う数値よりは短かったけれど、
お稽古には着られるからと、
もらってくれることになった。



ちょっと派手かな?と、
後回しにしていたもう1枚も、
あら可愛い!と引き受けてくれた。


良かったね~、
ゴミ袋行きにならないで・・・

最終的に、
まだ私の手元にあるのはこの1枚。


コレは綺麗だけれど、
さすがに60代には無理ね。


いったいコレは、
何時頃仕立てた物なんだろう?


そしてコレも藤色の和服同様、
しつけ糸が付いたまんまだった。
まったく、呆れてしまう。
欲しい方がいらっしゃるなら、
差し上げるのだけど・・・



未使用品は、この2枚の他、
羽織りが3枚で、計5枚もあった。
もったいないからと、
納戸に仕舞い込んだ挙句、
誰にも着てもらえず、
結局ゴミになってしまうなんて、
それこそが、もったいない話だ。

この事実を母に突き付けたい!
そうも思うけれど、
今の母には何を言っても無駄だろう。
「私の大切な物が捨てられてしまった」
そんな想いだけが母の中に残るだろう。

納戸の中の和服は一応片付いたが、
私も、弟の嫁も、
コレは氷山の一角だと知っている。
格の高い和服たち、
ちょっと高価な和服たちは、
母が生活する部屋の中。
アレは、母の目が黒いうちは、
手が付けられないだろうな。