「ひとは なぜ戦争をするのか」A.アインシュタイン/S.フロイト 書簡
1932年、国際連盟が、アインシュタインに、「今の文明で最も大事と思うテーマで、一番意見を交わしたい相手と書簡を交わして下さい」と依頼した。
そこで、実現したのが「戦争」というテーマ、選んだ相手はフロイト。20世紀を代表する二つの知性の響き合いが読む人それぞれに深い思索へと誘う。
その後、第二次大戦へと突き進む中で見過ごされ、2000年になって日本語翻訳が出たという。平和憲法と核禁止への理想を捨ててはいけない、と改めて思う。
≪A.アインシュタインの問いかけ≫:要旨
・人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?
技術の進歩と共に、戦争は私たち文明人の運命を決する問題となってきたが、戦争の問題を解決する方法は見つかっていない。
・人間の心の中にこそ、戦争の問題を解決する様々な障害があると感じ取れる。心理学に通じたあなたなら、この障害を取り除く方法を示唆できるのではないか。
・外的な枠組みとして、立法と司法の権限を持つ国際機関で決定を下しても、法以外の力から影響を受けてしまう。司法だけでなく“権力”が必要だが、それを備える機関を設立することは難しい。
・もう一つの視点、国際的な平和を実現しようとすれば、各国が主権の一部を完全に放棄し、自らの活動に一定の枠をはめる、これ以外に望めないのではないでしょうか。
・人間の心自体、心の中に、平和への努力に抗う様々な力が働いている。第一に権力欲、それを後押しするグループがいます。
次に、なぜこのような少数の人たちが、多くの一般の国民を動かし、自分たちの道具にすることができるのか?
答えは一つしか考えられません。人間には、本能的な欲求が潜んでいる、憎悪と相手を絶滅する欲求が。
多くの人が、破壊への衝動にたやすく身を委ねてしまうのではないか。
・人間の心を特定の方向に導き、憎悪と破壊という病に冒されないようにすることはできるのだろうか?
その場合、「知識人」と言われる人たちの方が暗示にかかりやすいと言えます。なぜか、彼らは生の現実を、自分の目と耳で捉えないからです。
≪S・フロイトからの返信≫要旨
“権力”を“暴力”と呼びたい。
権利(法)と暴力は密接に結びついている。
法とは共同体の権力(暴力)に他ならない。
それは現実の不平等な力関係を映し出す。勝者と敗者、支配者と抑圧された人間、、、
社会のバランスを保つには次の二つが必要;
「暴力」と「感情の結びつき(一体感)」
例えば、共産主義(ボルシェヴィズム)とかキリスト教
⇒むき出しの現実の力を理念に置き換えることは不可能 !
人間の欲動には、「エロス的(生の)欲動」と「破壊しようとする(死の)欲動」があり、善悪決めがたく、どちらも人間にはなくてはならないもの。この二つの欲動がいくつも重なり合って人間の行動が引き起こされる。
死の欲動の一部が内面化する(良心も)が、外部に向けられるなら、内面が緩和され、生命体に良い影響を与える。(暴力を正当化)
結論として、「人間から攻撃性をなくすことはできそうにない」
👇
戦争という形で発揮させないためには、エロス的欲動を呼び覚ませばよい。
人と人との感情と心の絆を作り上げること。
1. 愛するものへの愛(隣人愛) 2.一体感や帰属意識(共通性、類似性)
「人間は生まれつきの性質から、“指導者”と“從う者(圧倒的多数)”に分かれます」
⇒優れた指導者が重要になるが、これはユートピアの希望に過ぎない!
そこで解決策として、フロイトは問題提起:
「私たち平和主義者は、なぜ戦争に強い憤りを覚えるのか?」
戦争は自然世界の掟に即し、生物学的にも健全で、現実にもさけがたいものなのに不思議ではないか。
👇
ここで、物事を高みから眺めるような超然とした態度も必要だろう。
今や、破壊兵器の発達で、当事者のどちらか或いは双方がこの世から消えてしまう!⇒戦争に反対しない方が不思議だ。
その一方で、「心と体が戦争に反対せざるを得ないから」という結論になる。
はるか昔から文明が人類の中に発達し広まっていった。その特徴の一つとして文明の発展と共に、人類が消滅する危険性がある。
一、 人間の性的な機能が色んな形で損なわれてくる(肉体レベルの変化には気付きにくい)
一、 人間の心のあり方の変化を引き起すことには気づくことができる。本能的な欲望が弱まってきた。最もはっきりした二つの現象1.知性を強めること 2.攻撃の欲動を内に向けて行くこと
これが戦争への拒絶、体と心の奥底にあるものが激しい形で外に表れたものなのです。
すべての人間が平和主義者になるまで、あとどれくらいの時間がかかるのか?
しかし、次のことを期待したい。
「文化の発展を促せば、戦争の終焉に向けて歩みだすことができる」
文化とは、世代を通じて伝承されるものの総体(風習、伝統、価値観)で、極めて人間的だ。
これに比べ、科学も含めた文明は、物質的で「戦争の時は人殺しの道具、平和の時は人々の生活を忙しくする(アインシュタインの回想)」
こういう二人の希いも空しく、第二次世界大戦、核冷戦時代へと突き進んでいる現実!
とくに、この書簡を残したにも拘らず、アインシュタインは、戦中のヒットラーによるユダヤ人虐殺から逃れ、アメリカに亡命、1943年にはルーズベルト大統領宛に「ドイツが原爆開発に成功する前に開発を急ぐべき」と提案している。これに応えて、マンハッタン計画プロジェクトがスタート、1944/7月ついに原爆実験に成功し、広島・長崎への投下へと続いた。
1932年、国際連盟が、アインシュタインに、「今の文明で最も大事と思うテーマで、一番意見を交わしたい相手と書簡を交わして下さい」と依頼した。
そこで、実現したのが「戦争」というテーマ、選んだ相手はフロイト。20世紀を代表する二つの知性の響き合いが読む人それぞれに深い思索へと誘う。
その後、第二次大戦へと突き進む中で見過ごされ、2000年になって日本語翻訳が出たという。平和憲法と核禁止への理想を捨ててはいけない、と改めて思う。
≪A.アインシュタインの問いかけ≫:要旨
・人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?
技術の進歩と共に、戦争は私たち文明人の運命を決する問題となってきたが、戦争の問題を解決する方法は見つかっていない。
・人間の心の中にこそ、戦争の問題を解決する様々な障害があると感じ取れる。心理学に通じたあなたなら、この障害を取り除く方法を示唆できるのではないか。
・外的な枠組みとして、立法と司法の権限を持つ国際機関で決定を下しても、法以外の力から影響を受けてしまう。司法だけでなく“権力”が必要だが、それを備える機関を設立することは難しい。
・もう一つの視点、国際的な平和を実現しようとすれば、各国が主権の一部を完全に放棄し、自らの活動に一定の枠をはめる、これ以外に望めないのではないでしょうか。
・人間の心自体、心の中に、平和への努力に抗う様々な力が働いている。第一に権力欲、それを後押しするグループがいます。
次に、なぜこのような少数の人たちが、多くの一般の国民を動かし、自分たちの道具にすることができるのか?
答えは一つしか考えられません。人間には、本能的な欲求が潜んでいる、憎悪と相手を絶滅する欲求が。
多くの人が、破壊への衝動にたやすく身を委ねてしまうのではないか。
・人間の心を特定の方向に導き、憎悪と破壊という病に冒されないようにすることはできるのだろうか?
その場合、「知識人」と言われる人たちの方が暗示にかかりやすいと言えます。なぜか、彼らは生の現実を、自分の目と耳で捉えないからです。
≪S・フロイトからの返信≫要旨
“権力”を“暴力”と呼びたい。
権利(法)と暴力は密接に結びついている。
法とは共同体の権力(暴力)に他ならない。
それは現実の不平等な力関係を映し出す。勝者と敗者、支配者と抑圧された人間、、、
社会のバランスを保つには次の二つが必要;
「暴力」と「感情の結びつき(一体感)」
例えば、共産主義(ボルシェヴィズム)とかキリスト教
⇒むき出しの現実の力を理念に置き換えることは不可能 !
人間の欲動には、「エロス的(生の)欲動」と「破壊しようとする(死の)欲動」があり、善悪決めがたく、どちらも人間にはなくてはならないもの。この二つの欲動がいくつも重なり合って人間の行動が引き起こされる。
死の欲動の一部が内面化する(良心も)が、外部に向けられるなら、内面が緩和され、生命体に良い影響を与える。(暴力を正当化)
結論として、「人間から攻撃性をなくすことはできそうにない」
👇
戦争という形で発揮させないためには、エロス的欲動を呼び覚ませばよい。
人と人との感情と心の絆を作り上げること。
1. 愛するものへの愛(隣人愛) 2.一体感や帰属意識(共通性、類似性)
「人間は生まれつきの性質から、“指導者”と“從う者(圧倒的多数)”に分かれます」
⇒優れた指導者が重要になるが、これはユートピアの希望に過ぎない!
そこで解決策として、フロイトは問題提起:
「私たち平和主義者は、なぜ戦争に強い憤りを覚えるのか?」
戦争は自然世界の掟に即し、生物学的にも健全で、現実にもさけがたいものなのに不思議ではないか。
👇
ここで、物事を高みから眺めるような超然とした態度も必要だろう。
今や、破壊兵器の発達で、当事者のどちらか或いは双方がこの世から消えてしまう!⇒戦争に反対しない方が不思議だ。
その一方で、「心と体が戦争に反対せざるを得ないから」という結論になる。
はるか昔から文明が人類の中に発達し広まっていった。その特徴の一つとして文明の発展と共に、人類が消滅する危険性がある。
一、 人間の性的な機能が色んな形で損なわれてくる(肉体レベルの変化には気付きにくい)
一、 人間の心のあり方の変化を引き起すことには気づくことができる。本能的な欲望が弱まってきた。最もはっきりした二つの現象1.知性を強めること 2.攻撃の欲動を内に向けて行くこと
これが戦争への拒絶、体と心の奥底にあるものが激しい形で外に表れたものなのです。
すべての人間が平和主義者になるまで、あとどれくらいの時間がかかるのか?
しかし、次のことを期待したい。
「文化の発展を促せば、戦争の終焉に向けて歩みだすことができる」
文化とは、世代を通じて伝承されるものの総体(風習、伝統、価値観)で、極めて人間的だ。
これに比べ、科学も含めた文明は、物質的で「戦争の時は人殺しの道具、平和の時は人々の生活を忙しくする(アインシュタインの回想)」
こういう二人の希いも空しく、第二次世界大戦、核冷戦時代へと突き進んでいる現実!
とくに、この書簡を残したにも拘らず、アインシュタインは、戦中のヒットラーによるユダヤ人虐殺から逃れ、アメリカに亡命、1943年にはルーズベルト大統領宛に「ドイツが原爆開発に成功する前に開発を急ぐべき」と提案している。これに応えて、マンハッタン計画プロジェクトがスタート、1944/7月ついに原爆実験に成功し、広島・長崎への投下へと続いた。
一方、ドイツのロケット開発技術者たちが戦勝国ソ連に移り、弾道ミサイル開発に貢献していく。
この天才二人を含め、人間の愚かさと科学技術の独走に打つ手はないものだろうか?
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