ご隠居さん:自我や世間の枠にとらわれず、社会の潤滑油となりたいものです。 AI時代は 人間らしい自由な発想がカッコいい

年を重ね、経験を積むにつれ、その時々の思いも変わっていく。その足跡を残しておくために

労働の価値

2007年10月21日 | 企業と仕事 
労働者派遣法の見直しが問題になっている。一連の規制緩和の中で、格差拡大の一因となっていることは間違いない。当初、この法が制定されたときは、専門性の高い13業務(通訳、ソフト開発など)に限って派遣が解除された。戦前の”人買い”につながる派遣は、基本的に禁止だった。
それが、1999年、原則自由、2004年には製造業など一般単純労働にも解禁され、海外とのコスト競争という大義名分で、今やいろんな産業に浸透している。
輸出企業の代表格CANONの御手洗社長(経団連会長とは!!)など、偽装請負の問題で国会に証人喚問されるハメになっているほどだ。
円安もあり、史上最高益を挙げているのに、派遣会社との契約経費をケチッているとすれば、何と卑しい人たちではないか。
派遣労働者は、1986年この法制定時の14万人から255万人に増え、そのうち登録型が75%という。要するに、日雇いフリーターがほとんどで、身分の安定しない”ワーキングプア”の温床になっている悪法、ということだろう。社会保険も適用されず、派遣先の指示で、イヤな仕事、危険な作業が多いはずだ。
来春予定のこの法の改正案をめぐって、経営側と労働側が相変わらず、丸反対の主張で言い合っているが、どう落ち着くのか。経団連も甘くなった規制で違反の疑いがあるのに、よくもさらなる規制緩和など要求できるものだ・・・
それにしても、
なぜ、こんなにも”働く”という日本人の美徳が軽んじられるようになったのだろう。山本七平「日本資本主義の精神」でも、どんな仕事も仏行!として、勤勉の美徳を重んじる風土が日本の発展の基にある、と述べている。人を大切にする経営が、つい最近まであったと思うが、今の好業績を挙げている超優良企業にはそのカケラも無くなったように思う。
多分、その背景にはグローバリゼーションの大波の中で、中国はじめ中後進国との労働コストの差が大きすぎることがあろう。
日本にもメーカーだけでなく、サービス産業、野菜農家など全国的に安い外国人労働者が行き渡っている。研修生名目の場合、一人月4,5万の給料でフル勤務で使えるようだ。(もちろん、住居、生活条件は用意してやらなければならないが)
介護や医療現場でも外国人の働き手が必要となるというが、加速するグローバリゼーションの前には、政府も産業界もお手上げといった感じではないか。
こういうときには、国家も会社も、その基本哲学の有無が問われる。
美い日本でなくてもいいから、卑しくない国家、会社、人生でありたい。

後記:2008.12.5
アメリカ発世界金融恐慌が深刻になり、今日12.5も米議会の公聴会で、ビッグスリー3会長が、3兆円超の公的支援の要請で話題になっている。前回は、3人とも自家用ジェットで乗りつけ、さすがに国民の顰蹙をかったので今回はマイカーらしい。
彼らの報酬も巨額(数十億円)だったが、今回は1ドルに!

日本国内も、CANON、トヨタ、東芝など輸出依存の代表会社をはじめとするリストラの嵐のニュースが、連日紙面を賑わしている。とくに、派遣・パートなどの非正規の解雇は目に余る。労働関係法の緩和など小泉改革の行き過ぎが、一気に噴出してきた。当初から予想されたことで、過去に遡った検証が必要だろう。


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