安藤先生の月刊ブログ 「きらめき」

何気ない毎日に"きらめき"を感じていますか?

ただ一人のあなた

2011年07月04日 | 月刊ブログ
 どうしても「今日」と父が言うので、夕食後まだ薄暗いときに、家の近くの小川に行って道上から目を凝らしていたら、水際に生えている草むらに何やらうっすらと光るものが見えました。この数年は、川が汚れていたり、水が濁っていたりで、蛍の姿を見ることができませんでしたが、久しぶりに現れた蛍を、父はぜひとも私に見せたかったのでしょう。昔どおりの自然が戻って、幼いころ一緒に見た蛍がまた、生息するようになったことが、相当にうれしかったようで、早く行ってきなさいと私を急かしてまだ薄暗いのに川辺まできたのでした。
 その昔、まだあちこちに自然が残って、夕暮れから宵闇の時間に父と散歩をすると、小川のせせらぎの中に小さな灯火が見えたものです。


 もう、七、八年も前のことですが、この長崎で起きた小学生と中学生の悲惨な事件をきっかけに、この6月を「いのちの強調月間」として、私の住む佐世保では、小学校を地域へ開放したり校長先生の道徳講話などが行われています。
先日はその一環として、乙武洋匡さんの講演が佐世保市民会館で開かれました。当日は土砂降りの雨の中、立ち見を含め1600人の市民が講演を聞きに来ていました。乙武さんの『五体不満足』という著書は、当時とてもセンセーショナルであり、「障害は不便です。しかし、不幸ではありません」と言い切る新鮮なメッセージが私たちに飛び込んできました。もう10年くらい前のことでした。それからテレビなどで、スポーツキャスターとして活躍されている姿を見て、私とは別世界の人のように感じていました。
 今回、その『五体不満足』の著者ご本人が来られるというので、ぜひお話を聞きたいと思って参加しました。

 乙武さんは、長崎男児誘拐殺人事件とこの佐世保でおきた青少年の事件をきっかけに、子どもの人格形成に大人がどのような責任を負っているか、自分が育った経験を活かして小学生に向き合うために教員になろうと思ったと話されました。
 また、小学校の先生として過ごした3年間のことなど、会場を爆笑の渦に巻き込みながらアクティブにそして情熱的にお話されました。いつも体当たりで生きていらっしゃることが伝わってきます。いつも自分を肯定的に見ることができるのは、ご両親の育て方によるものだということは、ご本人の言葉を聞かずとも、想像に難くありません。
 乙武さんは、最後に、いつも自分に「いいわけ」だけはするまい、と思っていると話されました。それは、自分には言い訳できる事が他の人より、うんとたくさんあるからだと。これができないのは両手がないからだ、とか、人より劣っているのは両足がないからだ、とか。だから、そのことを言い出したら何もできなくなる。だから、自分は、決していいわけはしないと決めていると言われていました。

 私は、どうだろう・・・。いつも仕事が忙しいから、家庭があるから、年をとって体がきつくなったから、などいつも自分に言い訳をしています。五体満足なのに恥ずかしいなと思いました。

 乙武さんの講演の演題は「みんなちがって、みんないい」でした。
 たしか、金子みすゞの詩の一節です。金子みすゞの詩はこの東日本大震災のときにテレビでずっと流れていましたね。 
 「私と小鳥と鈴と」という詩には、私、小鳥、鈴のできることはそれぞれまったく違うけれど、そのように違うから、みんないい。「私はお空は飛べないけれど、飛べる小鳥は私のように地面を速くは走れない」
 違うものが集まって結びついて世の中ができて、それぞれが相手のことを認め補完して、その役割に感謝をすることが大切なんだと言っているのでしょう。

 小学校では他の人とは体の形が違っている乙武さんが、子供たち一人ひとりのどんな「ボール」もきちんと受け止めようとしていることを子供たち自身は感じ、一人ひとりを認めて信じてもらえることで、自信を持つことができるようになっていったことが、お話を聞きながら伝わってきました。
 乙武さんが、ご両親から受けた受容肯定を、今度は未来を担う子供たちに伝えたくて、小学校の先生になられたのではないかと思いました。
 メインテーマは、やっぱり「みんなちがって、みんないい」です。

 大正時代に生きた金子みすゞの詩と乙武さんの生き方は、時代は違っても「人」への見方は変わることなくさびないことを教えてくれるようでした。


 今月の花は、ポリジ。青い星型の花をたくさん咲かせる美しいハーブです。うつな心を元気にするのにも効果があるそうです。「勇気をもたらすポリジ」という言い伝えもあるくらいです。

 もう少しで梅雨が明けます。元気をとりもどして、ぎらぎらした真夏へ突入です!

photo by mizutani

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