(1) 近鉄湯の山線
梅雨明けして一週間ほど。7月の終わりの暑い日。四日市市を訪れました。まずは湯の山線に乗ること。湯の山駅辺りまではクルマで行ったことはあるのですが、近鉄湯の山線に乗るのは初めて。
四日市駅のホームで車両を待っていたら、反対側のホームにやったら明るい緑色の車両が入ってきました。「つどい」というそうですが、中を覗くとビール列車のようです。古い車両の改装車のようで、全席窓向き。窓向きって言い方は変ですね。客はみんな窓を向いて座る。その代わり通路は狭く、給仕のサービス用通路といった感じでしょうか。これで景色を楽しみながらビールを飲むという列車なのですね。面白いものをみました。まだ朝の9時だけど…。
私が乗る湯の山温泉行きは、ふつうのロングシート車。わずかばかりの客を乗せて出発。客の中には御在所岳に登る人たちもいるようです。名古屋本線から分かれて高架線路を左手に走っていく。次の駅に着くころには高架はおしまい。地面にしっかり車輪をつけて到着。するとここでも明るい色のラッピング電車。これは不動産屋さんの広告らしい。
最初は四日市の民家の間を、やがて郊外の景色の中を、そして山の懐にゆっくり入っていく。新名神高速道の下にアクアイグニス。昼頃になったら多くの客で賑わうのだろうけれど、まだ準備中の様子。
線路に並行して道路が走っていて…「男はつらいよ フーテンの寅」で寅がマドンナに失恋し、四日市方面にとぼとぼ歩いていたのはこのあたりだったような気がします。湯の山線の沿線を確認しても線路と並行して道路があるのはこの辺りしかありません。
湯の山温泉に到着。土曜日の午前だけど、駅前は寂しい。かつては喫茶店や土産物屋も賑やかだったと思われますが、今や…。もともと温泉旅館は駅前ではなく、少し山を登ったところにあるのですが、駅前は寂しい。
どこへ行くというアテもない私。ホームを見下ろす位置で涼んでいると見えたのが布団を干している鉄道関係者。駅舎の隣が宿舎になっているようで、天気がよいので布団を干していらっしゃる。この数5組。鉄道を運行させるために泊りのスタッフも当然いるわけです。そういう人たちのお陰で、私たちは「ふつうに」「あたりまえに」電車に乗れている。この駅ちょっと変わっているぞと思うのは、終着駅で二線、外側にホームがあるのだけれど、改札口から遠いほうのホームから乗り降りするためには、線路の車止めの向こうをぐるっと回ってこなければならないこと。優雅と言えば優雅。のんびりした話です。幸いというべきか、通常、ホームは一本で足りているみたいで、ぐるっと回るほうのホームは使わないようです。
そういや、昔は湯の山温泉行と書いた近鉄特急があったはず。名古屋や大阪方面から乗り換えなしにたどり着ける特急があった。つまりそれだけの需要があったことを意味するわけです。温泉旅館のほかにも会社の保養所もいくつもあるようです。土曜日の午後に、会社の慰安旅行でたくさんの人たちが近鉄特急に乗ってやってきたのでしょうか。今は湯の山温泉駅に近鉄特急は、やってきません。そのかわり、新名神高速道の菰野ICがすぐ近くにあります。
四日市からやってきた車両は四日市の次の駅、中川原駅ですれ違ったラッピング車両でした。不動産屋さんの広告電車で四日市に戻ります。湯の山線って各駅に交換施設があります。こういうケースは、もともとが貨物輸送が大きなウエイトを閉めていたに違いないと思ったのですが、どうやらそれは間違いみたいでした。
四日市市は三重県で一番大きな町です。県庁所在地である津市よりも人口が多い。近鉄百貨店もあります。街の再開発中とかで、工事中の雰囲気も見えます。
(つづく)
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