さくらんぼの思い出
お友達からさくらんぼを頂いた
息子がまだ幼稚園の頃、我が家の庭にも背丈ほどのさくらんぼの木があった。
初めて5個の青い実を付けたときには大喜びで早く赤くならないかと毎日眺めていた。
段々と色付き、食べれる日を指折り数えていたある日、このさくらんぼは小さな種だけになっていた。
庭に来る小鳥がついばんでしまったのだ。
毎日水をやって赤くなるのを待っていた息子は大粒の涙を流して泣いた。
見かねた義母は缶詰のさくらんぼを買ってきてこの背丈ほどの木にこっそりと糸でくくり付けた。
それを見つけた息子はビックリして「おかあさん、小鳥さんがさくらんぼを持ってきたよ。」
「やっぱり人のものを採ったらいけんよと鳥のおかあさんにいわれたんじゃろうね。」と喜んで食べた。
あれから数年後どうしたのかこの木は枯れてしまった。
今日さくらんぼを頂いて帰る車の中でこの事を思い出して、運転しながら
涙が止まらなかった。家に着いて空を見たら大きなお星様がジーと私を見ていた。
あの時の5個のさくらんぼではなくいっぱいのさくらんぼをお供えをした。
きっときっと喜んでいるだろうなと思うと又涙が流れた。
側で夫は黙ってテレビを見ている。
詰襟の学生服の凛々しい息子はいつも私を見つめている。
「お兄ちゃんさくらんぼよ!」といつものように話しかけた。