ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

神話探偵団85 「将座」の謎解き

2010-05-13 06:18:37 | 歴史小説
上からみた石の宝殿

「この場所で石槨説は成り立たないよ。この巨大な石造物を下に運び下ろすことが考えられない以上、ここで使われる予定であったと考えると以外にない。そうなら、ここで岩に直接、横穴式の石槨を彫って、その中に石棺を置けばよいからね。石槨なら横倒しにする形で彫って、あとで起こして立てるということはありえない」
長老は、他の学者の説への批判は手厳しい。
「それより、オオナムチ・少彦名のいましけむ、の歌が気になるなあ。大国主と少彦名を葬る予定なら、こんな表現は絶対にしないね」
ヒメは言葉にはトコトンこだわる。
「万葉集の元の漢字はどのように書かれていたの?」
マルちゃんから指令が飛んできたが、高木の記憶ははっきりしない。
「将(まさ)にの将と、座(ざ)すの座の字が使われています」
ヒナちゃんは用意していたかのように直ちに答えた。こと調査については、高木はヒナちゃんに負け続けであった。調査スケジュールを組むのに掛かり切りであったので仕方ないともいえるが、やはり心穏やかではない。
「そうすると、『いましけむ」は生きている大国主と少彦名が将に座ろうとした、という意味よね。死体を葬る、ということはありえないわ」
マルちゃんが的確にフォローした。
「将という字は、将来のように未来を指す漢字と思うけど、将軍や大将に使われるように、トップを指す漢字よね。王としてまさに座ろうととした、という意味じゃないの」
ヒメの推理力は、いつもユニークで群を抜いている。さすがミステリー大賞作家、と高木はファンクラブ事務局長として、感心してしまうのであった。
「さすがだなあ。さしずめミステリー大将の称号に恥じない名推理。蛇足だけど、大将は大きな賞ではなく、山下画伯の大将だからね」
高木が感心している間に、カントクはベタボメである。ダジャレの解説まで付け加えるおっさんにはかなわない。
「大国主と少彦名が建国宣言を行う予定であった玉座を置くための宝殿、確かに、そう解釈すると、大石村主真人が聖武天皇に捧げた歌にふさわしい」
長老が誉めるところを見ると、どうやら、ヒメの推理力は長老を超えたらしい。
「間壁忠彦・葭子氏の石槨説はいただけないが、益田岩船と同じように、2つの部屋が作られる予定であった、という説は実に素晴らしい卓見じゃ。この2つの部屋は、大国主と少彦名の玉座をそれぞれ設ける部屋であった、ということになるな」
カントクが橿原市にある益田岩船に皆の注意を向けた。
「そうですね。この播磨の石の宝殿と大和の益田岩船、同じ形状の2つの建造物を同時に構想したということになると、石槨説は成り立たないですね。墓を2か所で造ることはありえないですからね。大国主と少彦名が2か所に建国の儀式を行う宝殿を設けた、と見るべきでしょうね」
長老はやはり間壁説にこだわっているようだ。
「益田岩船の2つの穴の大きさはどれくらいなの?」
またまた、マルちゃんの質問だ。あわてて、高木はスマートフォンでホームページを検索してみた。
「起こして立てた状態で考えると、高さ1.6m、幅1.6m、奥行き1.3mですね」
「そうすると、立てた状態で幅6.4m、高さ7.2m、奥行き5.7mの石の宝殿には十分にそれ位の穴は彫れるわよね」
「当時の人々の身長は現代人より低く、160㎝前後であったとされていますから、立って入り、椅子に坐ることは可能と思います」
高木は素早くネットで縄文人・弥生人の平均身長を調べて答えた。
「石の宝殿は大国主と少彦名が建国の儀式を行おうとした石の建物、これで決まりよね」
マルちゃんが最後の締めくくりを行った。
「少し違うと思います」
みんなが同意しかけた時に、突然、ヒナちゃんが否定的な発言をしたので、高木はびっくりしてしまった。

資料:日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)
姉妹編:「邪馬台国探偵団」(http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

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