射楯兵主神社(播磨国総社)
神戸観光壁紙写真集より(http://kobe-mari.maxs.jp/himeji/sousha.htm)
「祭り好きの皆さんは、すっかり『山」に夢中になってしまったわねえ。しかし、私たちはスサノオを追って射楯大神のことを調べにきたんじゃなかったの?」
マルちゃんの指摘は当然だ。
「姫路の人って、射楯兵主(イタテヒョウズ)神社に、スサノオの子の五十猛(イタケル)とされる射楯大神や、大国主の別名とされる兵主大神を祀っているって知っているの?」
カントクは神社となると、俄然、張り切ってくる。
「みんな総社(そうしゃ)と言っているから、射楯兵主神社の名前は知らないんじゃないかしら。ましてや、祀ってある神様は知らないと思う。私だって古代史推理小説を書くようになるまで、神社の祭神なんかに関心はなかったもの」
「考えてみると、日本人ってすごく変よね。神社に詣で、祭に参加しながら、誰を祀っているか考えていない。神の乗る神輿に乗ってしまう馬鹿もいるしね。私だって、大宮神社の初詣に毎年行っているけど、スサノオや大国主を意識してなかったものね」
マルちゃんもそうなのか。恥ずかしながら、地元葛城の鴨神社の祭神なんて考えていなかったなあ、高木は自問自答した。
「博多祇園祭の櫛田神社についても、祭神がスサノオの妻の櫛名田比売(くしなだひめ)という意識はないね。僕だって櫛田神社に詣でながら、自分や恋人、家族の幸せしか考えていなかったなあ」
カントクは、誰かを思い出しているのか、時空を超えた世界に入ってしまっている。
「神社は一族の祖先霊を祀る場所ですが、同時に、氏子の各家の祖先霊を祀る場所でもあったと思います。氏族社会の崩壊とともに、前者の意識は薄れ、後者だけが残ったのではないでしょうか」
ヒナちゃんは相変わらず、優等生の解答である。
「そうすると神社で2礼2拍手1礼するのは、一族の祖先霊と、自分の祖先霊に同時に合図を送っている、ということにならない?」
またまた、ヒメの発想は飛んでいる。
「実は、神社を参拝した時に行う2礼2拍手1礼や、出雲大社・宇佐神宮の2礼4拍手1礼の意味は伝わっていません。だから、ヒメ様の新説が定説になるかも知れませんよ」
ヒナちゃんは以外と柔軟な考えの持ち主である。
「最後の1礼と、出雲・宇佐の4拍手はどうなるのかなあ?」
高木は、質問せずにはおれなかった。
「ボクちゃん、どっかに正解があると思ってない?いつまでたっても受験生気分から抜け出せないよね。自分の頭で考えてまず答えを出して見なさいよ」
マルちゃんは、いつも文句言ってきた姉の口調にそっくりになってきた。
「真面目なボクちゃんには難しいんじゃない?最後の1礼は、省エネだと思うよ」
カントクの話は冗談なのか、真面目なのか、いつも見分けがつかない。しかし、ヒントを貰いながら、乗らないわけにはいかない。
「4拍手ということは、他に2つの神を同時に祀っている、ということになりますね」
「ピンポン。ボクチャンの石頭もすこしは柔らかくなってきたようじゃな。5代目スサノオから出雲の支配権を任された大国主は、スサノオを祀る素鵞社の前に神殿を配置したんじゃ。
出雲大社に詣でたスサノオと大国主の子孫は、スサノオと大国主命と自分の祖先霊に拍手して合図を送ることになる」
「残りの1拍手はどうなります?」
「出雲大社の正面、客間には、天地創造の別天つ神5神が祀られ、大国主はその右手の納戸の位置に祀られています。従って、4拍手は、別天つ神5神、スサノオ、大国主命、自分の祖先霊に対して行われるのではないでしょうか?」
ヒナちゃんはよく細かなところまで気が付く。
「宇佐神宮はどうなの?」
どうせ答を知っているくせに、マル姉が突いてくる。
「もともとあった比売大神=宗像3女神に、神功皇后と応神天皇親子、これに祖先霊を足すと4つになります」
「正解がある時の優等生ボクちゃんは強いのう」
どこまでも、嫌みなカントクである。ヒナちゃんやヒメには超甘なのに、男にはキツイ。
(日南虎男:ネタモトは日向勤氏の『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』梓書院刊です)
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神戸観光壁紙写真集より(http://kobe-mari.maxs.jp/himeji/sousha.htm)
「祭り好きの皆さんは、すっかり『山」に夢中になってしまったわねえ。しかし、私たちはスサノオを追って射楯大神のことを調べにきたんじゃなかったの?」
マルちゃんの指摘は当然だ。
「姫路の人って、射楯兵主(イタテヒョウズ)神社に、スサノオの子の五十猛(イタケル)とされる射楯大神や、大国主の別名とされる兵主大神を祀っているって知っているの?」
カントクは神社となると、俄然、張り切ってくる。
「みんな総社(そうしゃ)と言っているから、射楯兵主神社の名前は知らないんじゃないかしら。ましてや、祀ってある神様は知らないと思う。私だって古代史推理小説を書くようになるまで、神社の祭神なんかに関心はなかったもの」
「考えてみると、日本人ってすごく変よね。神社に詣で、祭に参加しながら、誰を祀っているか考えていない。神の乗る神輿に乗ってしまう馬鹿もいるしね。私だって、大宮神社の初詣に毎年行っているけど、スサノオや大国主を意識してなかったものね」
マルちゃんもそうなのか。恥ずかしながら、地元葛城の鴨神社の祭神なんて考えていなかったなあ、高木は自問自答した。
「博多祇園祭の櫛田神社についても、祭神がスサノオの妻の櫛名田比売(くしなだひめ)という意識はないね。僕だって櫛田神社に詣でながら、自分や恋人、家族の幸せしか考えていなかったなあ」
カントクは、誰かを思い出しているのか、時空を超えた世界に入ってしまっている。
「神社は一族の祖先霊を祀る場所ですが、同時に、氏子の各家の祖先霊を祀る場所でもあったと思います。氏族社会の崩壊とともに、前者の意識は薄れ、後者だけが残ったのではないでしょうか」
ヒナちゃんは相変わらず、優等生の解答である。
「そうすると神社で2礼2拍手1礼するのは、一族の祖先霊と、自分の祖先霊に同時に合図を送っている、ということにならない?」
またまた、ヒメの発想は飛んでいる。
「実は、神社を参拝した時に行う2礼2拍手1礼や、出雲大社・宇佐神宮の2礼4拍手1礼の意味は伝わっていません。だから、ヒメ様の新説が定説になるかも知れませんよ」
ヒナちゃんは以外と柔軟な考えの持ち主である。
「最後の1礼と、出雲・宇佐の4拍手はどうなるのかなあ?」
高木は、質問せずにはおれなかった。
「ボクちゃん、どっかに正解があると思ってない?いつまでたっても受験生気分から抜け出せないよね。自分の頭で考えてまず答えを出して見なさいよ」
マルちゃんは、いつも文句言ってきた姉の口調にそっくりになってきた。
「真面目なボクちゃんには難しいんじゃない?最後の1礼は、省エネだと思うよ」
カントクの話は冗談なのか、真面目なのか、いつも見分けがつかない。しかし、ヒントを貰いながら、乗らないわけにはいかない。
「4拍手ということは、他に2つの神を同時に祀っている、ということになりますね」
「ピンポン。ボクチャンの石頭もすこしは柔らかくなってきたようじゃな。5代目スサノオから出雲の支配権を任された大国主は、スサノオを祀る素鵞社の前に神殿を配置したんじゃ。
出雲大社に詣でたスサノオと大国主の子孫は、スサノオと大国主命と自分の祖先霊に拍手して合図を送ることになる」
「残りの1拍手はどうなります?」
「出雲大社の正面、客間には、天地創造の別天つ神5神が祀られ、大国主はその右手の納戸の位置に祀られています。従って、4拍手は、別天つ神5神、スサノオ、大国主命、自分の祖先霊に対して行われるのではないでしょうか?」
ヒナちゃんはよく細かなところまで気が付く。
「宇佐神宮はどうなの?」
どうせ答を知っているくせに、マル姉が突いてくる。
「もともとあった比売大神=宗像3女神に、神功皇后と応神天皇親子、これに祖先霊を足すと4つになります」
「正解がある時の優等生ボクちゃんは強いのう」
どこまでも、嫌みなカントクである。ヒナちゃんやヒメには超甘なのに、男にはキツイ。
(日南虎男:ネタモトは日向勤氏の『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』梓書院刊です)
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