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北朝鮮の専門家・朴斗鎮氏 「安倍首相は足元を見られている」①/合意文書を読み間違えたのが決定的

2014-11-09 18:04:04 | シェアー

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/154599より転載

目の人 直撃インタビュー 
北朝鮮の専門家・朴斗鎮氏 「安倍首相は足元を見られている」

2014年11月4日

 (C)日刊ゲンダイ(C)日刊ゲンダイ

合意文書を読み間違えたのが決定的
 一体、何しに北朝鮮まで行ったのか。ご用聞きさながらの日本政府団の訪朝には、拉致被害者の家族会からも不満の声が聞こえてくる。「拉致の安倍」で売り込んできたくせに、いまや、北朝鮮とのパイプ維持にすがるような安倍首相。なぜ、こんな事態になったのか。テレビに出てくる北朝鮮の専門家は安倍に遠慮してハッキリ言わないが、朴斗鎮氏は違う。「安倍さんは足元を見られている」とズバリ、である。

――日本政府団もピリッとしないですね。そもそも、9月に行われた日朝外務省局長級協議で、伊原純一アジア大洋州局長が拉致被害者の再調査についての情報を迫ったら、宋日昊日朝国交正常化交渉担当大使から「だったら再調査を担当している特別調査委員会に聞け」と言われて、今回の訪朝になった。

 その時点で、こんな屈辱はないと、なぜ大メディアは書かないのでしょうね。北朝鮮が謝罪し賠償すべき立場なのに「聞きに来てくれ」とは主客転倒じゃないですか。

――犯罪者に「どうなってんだ?」と聞いたら「聞きに来い」ってなもんですからね。それなのに、安倍首相は「訪朝団を派遣しないことによって、今後の調査を行うことができなくなるリスクを考えた」とか言って、訪朝団派遣を決めた。

 行ったって、何も出ないことは我々の調査で早い段階からわかっていました。

――そうなんですか?

 特別調査委員会の設置を決めたストックホルム合意(5月29日)の文書を見てください。

――拉致という言葉が出てきて、北朝鮮が包括的調査を約束した文書ですよね。日本側は北朝鮮が再調査してくれるということで、大きな期待を寄せました。

 その文書にはこうあります。〈拉致問題に関して、北の努力を日本側が認めたことを評価し、従来の立場はあるものの、すべての日本人に関する調査を包括的、全面的に実施し、最終的に日本人に関するすべての問題を解決する意思を表明した〉。包括的とか、全面的にとか書いてありますが、従来の立場、つまり、拉致は解決済みという北朝鮮の立場を変えるという言葉は、ひとつも入っていないわけです。北朝鮮というのは、こうやって、曖昧で思わせぶりな文章を作るプロなんですよ。

――しかし、日本側は北朝鮮が再調査に応じ、しかも特別調査委員会をつくったことで前のめりになった?

 そうです。金正恩第1書記の代になって、北朝鮮は孤立が深まった。とくに張成沢・国防副委員長の粛清後は中国との関係も悪化した。加えて、金正恩は拉致を指示し、実行させた指導者ではない。金総書記とは立場が違う。それやこれやで、父親が出した「拉致は解決済み」とする結論を覆すんじゃないか。期待を先行させたと思います。

――この判断が間違っていた?

 そこからボタンを掛け違ってしまったんです。ふつう、こういう交渉はきっちり、枠組みを作って、調査方法や確認の仕方を詰める必要があります。しかし、日本側は相手を交渉に引き出すために曖昧にしてしまった。そればかりか自分に都合よく解釈し、相手は過去の立場を変えたと思い込んだ。そのため、とにかく交渉を始めて、その過程で詰めていくという流れになったのでしょう。

――それで、制裁も解除した。

 そうです。特別調査委員会の委員長には国家安全保衛部副部長の徐大河氏が就き、4つの分科会ができて、①拉致被害者②行方不明者③日本人遺骨問題④日本人配偶者を調べることになった。でも、特別調査委員会にあるのは調査権だけで、ここが組織や人事を動かせるわけではない。4つの分科会にしても日本の報道では拉致の分科会が一番最初に出てきますが、北朝鮮側の報道では3番目です。それで今回、拉致を最優先にしろと言いに行ったわけですが、私に言わせれば、今頃、何をやっているのか、ですよ。北朝鮮の術中にはまっているのです。

――北朝鮮は制裁解除という実だけ取って、態度は何も変わっちゃいないわけですね。

 2006年の6カ国協議も同じでした。非核化のプロセスが先なのか、軽水炉建設が先なのか、曖昧なまま交渉をスタートさせて、後でモメた。結局、北朝鮮はテロ支援国家の指定を解除させて、重油や食料をもぎ取った。北朝鮮が出したのは1万8000ページの報告書だけでした。今度も同じで、日本が緩和した人的往来によって、北は学術交流などを活発化させ、自国のプロパガンダを強めています。日朝交渉促進国民協会の学者が行った際には宋日昊大使が面会しました。学者を通じて、向こうの主張を日本に流させるためですよ。

≪続く≫



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