にゃんこの置き文

行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず

大藪春彦賞・大藪春彦新人賞贈賞式

2024年03月04日 | 日記
前年の受賞者ということで招待状をもらったので、ほいほいと大藪春彦新人賞の贈賞式へ行ってきました。

今年はただの野次馬なので、気分はとっても楽。
それにしてもビックリしたのは、会場の広さと人の多さ。
コロナ禍の影響で、去年は関係者のみのこじんまりとした式だった。
でも今年は久々の通常開催ということで、広さは5倍、人の数は10倍以上??
雛壇も高くて、立食パーティ独特の熱気にあふれてた。

もう心の底から、「受賞が去年でよかった」と思ってしまったわ。

数段程度の雛壇から落ち着いた雰囲気のテーブル席を見渡しただけでも、膝が震えて頭の中が真っ白になりかけたのに、あんな高いところからぎっしり詰まった招待客の人たちを見下ろしてスピーチなんて絶対無理ッ。
いつまで待っても話が始まらないなと思ったら立ったまま気を失ってました、ってことになってたと思う。

受賞者の方々はそんな中でも堂々と挨拶をされてて、凄いなぁとつくづく感心した。
そして舞台を見ながら心のどこかで、「いいなぁ」と羨ましがっている自分がいることに気づいた。
去年は「雛壇の上に上がるなんて最初で最後。二度とこんな緊張感は味わいたくない」と思っていたのに、どういう心境の変化だったんだろう。

あの場に集まっていたのは、前年受賞者というだけでよばれた私以外は、作家としての地位を確立したお歴々ばかり。
そんな先生方に1ミリでもいいから近づきたいなどとは、思っても言えない。(ここで書いてるけど)
やっぱり会場の、あの独特の熱気にあてられたのかな?(もろに別世界だったもんね)

そんなふうに浮かれ気分で非日常を楽しみ、家に帰ってきたら日常が待ってた。
にゃんずのために無理して一泊で帰ってきたのに、「寂しかったよ」と出迎えてくれるどころかご機嫌斜め。
いつもならキーボードの上に乗って邪魔したり、そばで丸くなってるのに私のほうを見てもくれない。

画像はネコ用コタツの上から、背中で抗議の声を発しているクロとサクラです。


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小説新潮

2024年02月26日 | 小説
小説新潮3月号に、短編「緋の契り」が掲載されました。

私にとっては3作目の時代小説。
梶よう子先生をはじめとするお歴々に並んで、自分の名前があるのを見た時はちょっと感動した。
苦労したけど、頑張ったかいがあったかな。






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短編執筆

2024年02月12日 | 小説
元々筆不精で、思い出した時に書く程度だったけど、いつの間にかこの前の記事から2か月以上も経っててビックリ。
でもね、今回のブランクはサボってたわけじゃないんだよ。。
もう、それどころじゃないくらいに忙しかったのだ。

10月28日に拙作「もゆる椿」が出版されて、それを読んだという編集者から嬉しいことに執筆依頼が入った。
締め切りは1月末だという。
自慢じゃないけどこの私、せっせと応募をし続けていた時でも、年に3作以上書いたことはない。
つまり短編一つ仕上げるのに、4か月近くかかっていたってこと。
それが正味2ヶ月。
しかもネタなしで頭の中は真っ白状態。
この短期間でゼロから一作完成させられるのか?
でもありがたく声をかけていただいたのに、ド新人の分際で断るなんて真似はできない。
「もゆる椿」だって、それまで短編しか書いたことがなかったので不安だったけど、やってみたら何とかなった。
えーい、今回も何とかなるだろう。
という根拠のない見通しのもと、初めての小説誌掲載向けの作品を書き始めたのでありました。

結果的に「何とかなった」わけだけど、いやもう大変だった。
11月から1月にかけては、お歳暮とふるさと納税で本業が一年で一番忙しい時期になる。
なので、じっくり執筆できるのは週一回の休みの日だけ。
しかも締め切りがあってないも同然の単行本と違って、雑誌のほうはとってもタイト。
なかなかハードな2ヶ月でありました。

でも執筆自体はとっても楽しかった。
おさきやお美津に負けないくらい、愛おしいキャラがまた生まれた。
この快感があるから、書くことはやめられないんだよね。
今度の主人公も、なかなかの上玉でやすよ^^




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65にして惑いっぱなし

2023年11月09日 | 小説
人の欲ってキリがないものだなと、つくづく思う。

投稿を始めた頃は、「1次だけでも通ってくれたら」と思っていた。
3作目の投稿から2次まで通るようになり、そうなると今度は、「最終候補に残って批評をもらいたい」と思うようになった。
最終候補に残るようになったらなったで、「悪魔に魂を売ってもいいから受賞したい。受賞さえできたらそれで満足」と願い始めた。
めでたく願いがかない、そこで満足だった筈だ。
それなのに、「一冊でいいから本を出したい」と、欲求はさらに続いた。
書いている最中は、「この作品に今の自分の力のすべてを注ぐ。無事に書き上げることができたら、この一冊だけで終わってもいい」と思っていた。

そして刊行。
今度こそ満足すると思っていたんだよ。
なのに今、「かなうものならもう一冊出したいなぁ」などと思っているのだ。
おーい、受賞して一冊出せたら満足するんじゃなかったのかーい?
どこかから声がするが、私自身は聞いてない。
頭の中は何を書こうかということでいっぱいになってる。

だけど「書きたい」という思いが膨らむほど、「書けなかったら」という不安も大きくなるんだよね。
そればかりを考えてると思考の幅が狭くなって、まわりへの配慮を忘れたり、変な方向に自分を追い詰めてしまったりする。
ここのところ後悔したり反省することが多いんだけど、無意識のうちに焦ってるんだろうなぁ。
一歩一歩階段を上がってきて、満足という名の最上階に達したと思ったら、単なる踊り場だったという感じ。
もう一作書けたら、今度こそ満足するんだろうか。
それともこの階段には終わりがないんだろうか。

立ち止まることはしたくないけど、この歳になって階段を上り続けるのは、ちょっと膝が辛かったりして。


ここでまた、「x」で嬉しいコメントをみつけた。

有隣堂淵野辺店
「『もゆる椿』入荷しております。鬼と呼ばれた少女と剣だけが取り柄の青年が織りなす仇討ち道中物語。少女と青年のでこぼこコンビの和やかな道中と迫力のある勝負シーン。デビュー作とは思えない作品です。レジ前エンド台にございます」



置いてない本屋さんのほうが多いのに、レジ前に並べてくださるとは。
三千里をさまよった後、地獄で仏に出会ったみたい



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自著をたずねて三千里

2023年11月04日 | 小説
誰だったかは忘れたけど、とある作家が、「一番嬉しかったのは受賞の電話をもらった時で、二番目は自分の本を書店で見た時だった」というエッセイを書いていた。
それを読んだ時はデビューなど夢のまた夢で、「そうだろうなぁ、いいなぁ、羨ましいなぁ」と思って終わりだった。
それがまさか、一番目どころか二番目の喜びもかなう日がくるとは。
いやもう、「生きてて本当によかった」とすら思いながら、刊行の日を待っていた私。

そして発売日を迎え、うきうきとして繁華街へ出向いたわけだ。
ところが一歩目から躓く。
本を探すときはそこと決めていた馴染みの本屋さんが、いくら歩き回っても見当たらない!
「え、なんで?」と思って調べたら、数年前に閉店したことが判明。
町の本屋さんが苦境にあることは知っていたけど、あれだけ大きかった書店も閉店するとは思わなかった。

そういえば昔は、用もないのに本屋さんに入って何時間も過ごしてた。
いつ頃からだろう。ネットで本を買うようになってからはとんとご無沙汰になっていた。
書店の苦境に私自身が手を貸していたのだなと、歩道に立つ尽くしたまま大いに反省。
でもその近くには新たに開店した書店もある。

気を取り直して、そこへ行くことにした。
美容院といっしょで、書店も初めての所は緊張するんだよね。
何がどこにあるのかわからないし、雰囲気が合う合わないっていうのもある。
結果からいうと、苦手な部類の書店だった。
フロア2階分に展開していてめちゃくちゃ広いんだけど、大部分は外国人観光客が好みそうな高級本で、普通の書籍のコーナーは一部分しかない。
この時点で悪い予感がしたんだよねぇ。
ようやくたどり着いた文芸本コーナーは、一畳ばかりのスペースにちょろっと置かれているだけだった。
すべての本を見渡すのに、一分とかからない。
ない。
もう一度隅から見てみたけど、一分とかからない場所を三分かけようと、ないものはない。
置かれているのは話題の本か大きな賞をとった本か有名作家の本だけだった。
「名もない新人のデビュー作なんかお呼びでないってことね」と、とぼとぼとそこを後にし、再び気を取り直してデパートの本売り場に行ってみようとしたら、またまたない。
文芸本どころか、本の売り場自体が消えていた 

結局5軒まわったけどかすりもせず。
6軒目でようやく自著をみつけた時は幻かとさえ思った。
ここは先の5軒と比べて文芸本のスペースが倍以上あって、そのおかげで余分な本も置けたんだと思う。
「注目の本」というプレートまでつけて展開してくれていたので嬉しかったけど、同時に出版不況とやらの現実を目の当たりにして複雑な気分になった。
これからはネットではなく、書店で本を買うようにしよう。
この調子で本屋さんがなくなってしまったら、やっぱり寂しいもんね。

自著探しでこんなにも苦労するとは思わなかったけど、捨てる神あれば拾う神あり。
Xで嬉しい画像をみつけた。



オークスブックセンター南柏店プラスゲオ





うさぎや矢坂店




どちらの書店にも、足を向けて寝られません。
ありがとうございます。



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