にゃんこの置き文

行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず

自著をたずねて三千里

2023年11月04日 | 小説
誰だったかは忘れたけど、とある作家が、「一番嬉しかったのは受賞の電話をもらった時で、二番目は自分の本を書店で見た時だった」というエッセイを書いていた。
それを読んだ時はデビューなど夢のまた夢で、「そうだろうなぁ、いいなぁ、羨ましいなぁ」と思って終わりだった。
それがまさか、一番目どころか二番目の喜びもかなう日がくるとは。
いやもう、「生きてて本当によかった」とすら思いながら、刊行の日を待っていた私。

そして発売日を迎え、うきうきとして繁華街へ出向いたわけだ。
ところが一歩目から躓く。
本を探すときはそこと決めていた馴染みの本屋さんが、いくら歩き回っても見当たらない!
「え、なんで?」と思って調べたら、数年前に閉店したことが判明。
町の本屋さんが苦境にあることは知っていたけど、あれだけ大きかった書店も閉店するとは思わなかった。

そういえば昔は、用もないのに本屋さんに入って何時間も過ごしてた。
いつ頃からだろう。ネットで本を買うようになってからはとんとご無沙汰になっていた。
書店の苦境に私自身が手を貸していたのだなと、歩道に立つ尽くしたまま大いに反省。
でもその近くには新たに開店した書店もある。

気を取り直して、そこへ行くことにした。
美容院といっしょで、書店も初めての所は緊張するんだよね。
何がどこにあるのかわからないし、雰囲気が合う合わないっていうのもある。
結果からいうと、苦手な部類の書店だった。
フロア2階分に展開していてめちゃくちゃ広いんだけど、大部分は外国人観光客が好みそうな高級本で、普通の書籍のコーナーは一部分しかない。
この時点で悪い予感がしたんだよねぇ。
ようやくたどり着いた文芸本コーナーは、一畳ばかりのスペースにちょろっと置かれているだけだった。
すべての本を見渡すのに、一分とかからない。
ない。
もう一度隅から見てみたけど、一分とかからない場所を三分かけようと、ないものはない。
置かれているのは話題の本か大きな賞をとった本か有名作家の本だけだった。
「名もない新人のデビュー作なんかお呼びでないってことね」と、とぼとぼとそこを後にし、再び気を取り直してデパートの本売り場に行ってみようとしたら、またまたない。
文芸本どころか、本の売り場自体が消えていた 

結局5軒まわったけどかすりもせず。
6軒目でようやく自著をみつけた時は幻かとさえ思った。
ここは先の5軒と比べて文芸本のスペースが倍以上あって、そのおかげで余分な本も置けたんだと思う。
「注目の本」というプレートまでつけて展開してくれていたので嬉しかったけど、同時に出版不況とやらの現実を目の当たりにして複雑な気分になった。
これからはネットではなく、書店で本を買うようにしよう。
この調子で本屋さんがなくなってしまったら、やっぱり寂しいもんね。

自著探しでこんなにも苦労するとは思わなかったけど、捨てる神あれば拾う神あり。
Xで嬉しい画像をみつけた。



オークスブックセンター南柏店プラスゲオ





うさぎや矢坂店




どちらの書店にも、足を向けて寝られません。
ありがとうございます。




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