三田誠広さんというと、われわれの世代には、「僕って何」で、芥川賞を受賞(1977年)した頃の、青春小説のイメージの強い作家だが、随分以前から、相当数にのぼる歴史小説も書いておられる。
三田さんは、般若心経や相対性理論の解説書まで書かれている、思想家肌の方だから、
私は、ある歴史上の人物や時代について、興味をもった時や、疑問をもった時などに、
(正統派の ? )三田誠広さんは、どう描いているのだろう、という関心から、氏の作品を手にすることが多い。
先日、本ブログで御紹介した、後白河上皇を主人公にした、「浄土の帝」(安部龍太郎著)を読んで院政末期という時代に興味をもった際、その次に読んだのも、三田さんの「清盛」(集英社)という作品だった。
清盛 価格:¥ 1,995(税込) 発売日:2000-12 |
この時代、形式上は鳥羽上皇の子とされる祟徳天皇が、実は鳥羽上皇にとっては祖父にあたる白河法皇の子(鳥羽上皇にとっては叔父にあたる)であったり(→鳥羽上皇は、陰で、祟徳天皇のことを、叔父にして子供という意味で、「叔父子(おじご)」と呼んでいたとされる)、
平清盛が白河法皇の落胤であるとされたりと、
摂関家も含め、人間関係が実に複雑だから(そこが、この時代の面白さでもあるのだが)、それぞれの人間関係がどう描かれているのか、異なる作家の書いたものを読み比べてみるのも興味深かった。
待賢門院や、美福門院、祇園女御など、魅力的な女性が次々に登場するのもいい。