
あなたの慈しみに依り頼みます。
わたしの心は御救いに喜び躍り
主に向かって歌います
「主はわたしに報いてくださった」と。
「詩編」/ 13編 6節 旧約聖書 新共同訳
あなたは
この世にのぞまれて生まれてきた
たいせつな人。
あなたがなんであり
どこの国の人であろうと
金持ちであろうと
貧乏であろうと
それは問題ではありません。
あなたは
同じ神さまがおつくりになった
同じ神さまのこどもです。
マザーテレサ
(マザーテレサ『愛のことば』より)
★黒人の魂の歌…南アフリカ国歌に
◆読売新聞 2014年06月07日 08時10分

▲ソウェトの教会で開かれる日曜日のミサで、
ヌコシ・シケレリ・アフリカを歌う
住民と聖歌隊
南アフリカの黒人の魂の歌、それが「ヌコシ・シケレリ・アフリカ(アフリカに神の祝福を)」だ。
白人支配への抵抗の歌として知られ、アパルトヘイト(人種隔離政策)の廃止後は、南アの新国歌になった。
その源流を探ろうと、ヨハネスブルク郊外の旧黒人居住区ソウェトを訪ね、砂ぼこりの舞う通りを歩いた。ここで歌が生まれたのは1897年。ソウェトのキリスト教系学校の黒人教師で、聖歌隊の指揮者だったイノック・ソントンガが作詞、作曲した。
当時の南アでは、オランダ系の入植者アフリカーナーと、植民地拡大を狙う英国が支配権を争った。1899年に「第2次ボーア戦争」で衝突する両陣営の白人にとって、黒人は抑圧の対象でしかなかった。「南部アフリカ音楽著作権協会」のルロー理事長は「この頃、南アに黒人の音楽家はほとんどいなかった。『神よアフリカに祝福を その角を高く掲げられるように』と呼びかける歌は、黒人の自尊心を高揚させた」と解説する。

▲イノック・ソントンガ
(ウィンストン・ラポタピさん提供)
ソントンガは急病で32歳で早世したこともあり、その生涯を伝える記録はほとんどない。ひ孫のウィンストン・ラポタピさん(43)は、「ソントンガは教会に熱心に通ううちに聖歌隊の活動に夢中になり、音楽家を志したのだろう」と推測する。また、信仰心があつく、教育に熱心で、激情家の一面もあったという。
ヌコシ・シケレリ・アフリカを作ろうと思い立ったのは、黒人が作った「黒人の歌」を広めようという思いもあったのだろうか――。ラポタピさんは幼い頃、祖父母に「イノックおじいちゃんのように強く、優しい男になれ」と、何度も言われたと振り返る。
黒人解放を目指し、「アフリカ民族会議(ANC)」が設立されたのは、ソントンガの死去から7年後の1912年。白人の目が及びにくい教会で地下活動を展開し、秘密集会の締めくくりにヌコシ・シケレリ・アフリカを歌い、25年に「党歌」と定めた。
人種差別の山崩す

▲ヨハネスブルクの墓地に建てられた
ソントンガの慰霊碑。
今も多くの黒人らが訪れる
アパルトヘイト体制が崩れ、新大統領に就任したネルソン・マンデラは95年、ヌコシ・シケレリ・アフリカと白人政権時代の国歌を合わせて1曲にして新国歌にした。マンデラは、ソントンガが眠るヨハネスブルクの墓地に慰霊碑を建立し、「あなたの音楽により、私たちは山を動かすことができた」と業績をたたえた。
ANCが秘密集会を開き、弾圧の象徴だったソウェトの教会。今では毎週日曜日のミサに数百人が集まる。ヌコシ・シケレリ・アフリカの壮麗なメロディーが心を揺さぶる。教会のステンドグラスに描かれたマンデラが笑顔で人々を見守り、神父のサバスチャンさんは「南アが赦ゆるしと融和の国である証しだ」とほほ笑んだ。
なおもソウェトの黒人の多くは貧しいが、街に満ちていた「怒り」は消えたと住民は語 る。教会に響く歌声はアパルトヘイトという山を突き崩した人々の力強さを感じさせた。
◇イノック・ソントンガ(1873~1905)
南アフリカ東ケープ州の教員養成学校で音楽を勉強。卒業後は音楽教師を務める傍ら、多数の聖歌を作った。そのうちの1曲「ヌコシ・シケレリ・アフリカ」は黒人の間で歌い継がれ、アパルトヘイト廃止後に南アの新国歌となる。この曲は、白人政権時代に国外に亡命したANC党員を通じて広まり、タンザニアやザンビアの国歌にもなっている。
(文と写真 上杉洋司)
2014年06月07日 08時10分
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■ 南アフリカ国歌 歌詞
"Nkosi sikelel' iAfrika"
「神よ、アフリカに祝福を」
(Xhosa and Zulu) (コサ語とズールー語)
Nkosi sikelel' iAfrika, Maluphakanyisw' uphondo lwayo,
Yizwa imithandazo yethu, Nkosi sikelela, Thina lusapho lwayo.
神よ、アフリカに祝福を。汝の栄光を高く掲げたまえ。
我らの願いをかなえたまえ。神の子である我らを祝福したまえ。
(Sotho) (ソト語)
Morena boloka Setjhaba sa heso,
O fedise dintwa le matshwenyeho, O se boloke,
O se boloke setjhaba sa heso. Setjhaba sa.
神よ、我らのもとに介在し、全ての争いを終わらせたまえ。
そして我らと国を守りたまえ。南アフリカを守りたまえ。
South Afrika, South Afrika.
南アフリカ。南アフリカ。
(Afrikaans) (アフリカーンス語)
Uit die blou van onse hemel,
Uit die dieptevan ons see,
Oor ons ewige gebergtes waar die kranse antwoord gee.
蒼き空の彼方から、我らの海の深みから、
永久に変わらぬ山々から、こだまが響き渡る。
(English) (英語)
Sounds the call to come toghether,
and united we shall stand.
Let us live and strive for freedom,
in South Africa, our land.
皆を呼ぶ叫びが響く。やがて我らは団結して立ち上がる。
自由のために力を尽くし、共に生きていこう。
南アフリカ、この我らの地で。
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