空飛ぶ自由人・2

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映画『アラビアンナイト』

2023年03月03日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

古今東西の物語や神話を研究するナラトロジー(物語論)の専門家アリシアは、
講演のためトルコのイスタンブールを訪れた。


グランドバザールの店で、ガラスの小瓶を見つけて購入し、
ホテルで汚れた瓶を洗い始めると、
瓶の蓋が開いてしまい、
そこからジンと名乗る巨大な魔人が現れた。
囚われていた瓶から、何百年ぶりに解放されたジンは、
お礼のしるしに、願い事を3つ叶えてあげるから、言え、と迫る。
ところが、アリシアには、本気で叶えたい願いがない、と言う。
物語の専門家アリシアは、
願い事の物語はどれも危険でハッピーエンドがないことを知っていたのだ。
3つの願いを叶えてあげて、楽園に行きたいジンは困り果てる。
そこで、ジンは、彼女の考えを変えさせようと、
紀元前からの3千年に及ぶ自身の物語を語り始める・・・。

というわけで、
「物語」の有用性を巡る展開。
まず一つ目は、3千年前のシバの女王とソロモン王の恋愛劇。
このあたりまでは、
久しぶりに映画を観てワクワクする経験をした。

ソロモン王によって瓶に閉じ込められたジンは、
海底に沈んでいるが、
数百年後に魚の腹から出て再び解放され、
王位を巡る皇子同士の後継争いに巻き込まれ、
オスマン帝国対ペルシャの戦争を傍観する。


その数百年後、知識の虜となった老いた男に嫁いだ若き娘の物語を観、
そして、200年ぶりにアリシアによって蘇った次第。
そして、ジンと恋愛関係に落ちたアリシアは、
ロンドンにジンを連れて行き、
一緒に暮らすようになる。

200年の科学の進化に驚くジン。
しかし、電磁波と電波に満ちた都会で、
ジンの体はむしばまれていく・・・

最初の方ではワクワクしたジンの物語も、
あとの2つが、どうでもいいような話なので、
ワクワク感は次第にしぼんでしまう。
3つの話に関連性があり、
発展したらよかったのだが。

最後の方も微妙な終わり方で、
アリシアは子どもの頃から妄想癖があり、
それで物語論学者になったのだが、
ジンの存在自体が、
アリシアの脳内の産物であるかのような作り方。
少々消化不良感はただよう。

元々アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)といえば、
妻の不貞で女性不信になった王の怒りを鎮めるために、
大臣の娘・シェラザードが
毎夜毎夜面白い話を聞かせるという枠組みの物語。
本編の中でも、
物語の語り部と王の交流という形で描かれている。
この映画も、
孤独な中年女性を慰める、
語り部と聞き手の話、と見ると、面白い。

最初「願いはない」と言っていたアリシアだが、
まず、ジンに「私と恋に落ちて」と願い、
死に瀕したジンの姿を見て、
「もう一度口をきいて」、
「自由になって『ジンの楽園』に帰って」
と思わず3つの願いを口にしてしまう。
であれば、3つの願いを達成したジンは、楽園に戻り、
時々アリシアを訪ねて来る、
というラストもうなずける。

映像美は素晴らしく、美術も衣装も凝っている。
景色を含めて映像は極めて美しい。
エキゾチックな雰囲気満載で、
豪華な動く絵本を読んでいるという感じ。
そして音楽もいい

A・S・バイアットによる短編集を原作に、
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のジョージ・ミラーが監督・脚本を務める。
同じ監督とは思えない対照的な物語。
アリシアにティルダ・スウィントン


魔人ジンにイドリス・エルバ


二人とも良い味を出している。

最初のワクワク感が持続すれば、
大傑作になったと思われたが、残念。

5段階評価の「4」

TOHOシネマズ他で上映中。



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