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小説『君のクイズ』

2024年05月03日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

クイズ番組を舞台にした、新機軸のミステリー
小川哲(さとし)作。

生放送のクイズ番組『Q―1グランプリ』は、
最終段階を迎え、
三島玲央(れお)と本庄絆(きずな)という
二人の実力者がしのぎをけずっていた。
7問先取、
6対6でダブルリーチ。
次の問題を取った方が賞金1千円を獲得する。
その最終問題、異様なことが起こる
出題者のアナウンサーが
「問題」と読み上げた段階で、
本庄が早押しボタンを押したのだ。
問題がまだ読まれていない。
勇み足。
本庄は既に2問誤問しているので、
3問目の誤問で失格。
会場が凍り付く。
しかし、本庄の口から出たのは、
正解だった。
問題が出される前の正答
一応本庄の優勝となったが、
放送後は大混乱だった。

世間の疑問の沸騰に対して、
テレビ局の回答は通り一遍のものだった。
本庄は姿をくらまし、ただ、賞金を辞退してきたという。

まだ一文字も問題が読まれぬうちに
どうやって本庄が正答できたのか。
あらかじめ問題を知っていた、つまり、ヤラセ
それとも動物的カンで正答できたのか。
いや、十分な思考と推測によるものなのか。
そもそも、魔法でも使ったのか。
三島は、その謎に挑む。
それには、本庄の人生をたどってみるとともに
これまでの本庄のクイズ番組の録画と記録を集め、
どんな問題が出され、
どんな回答をしてきたのかを
探るものだった。

その三島の探索と共に、
『Q―1グランプリ』決勝戦の問題を
1問ずつ辿る、
という、凝った構成。
それは、三島自身の人生を辿ることでもあった。

謎が解かれた時、
言い知れぬモヤモヤが残る。
ああいうことでは、
クイズ番組制作者の自殺行為ではないか。
いくら放送されなかったとはいえ、
現場にいた沢山の人々が見ているのだから、
その声が沸き起こったはずなのに。

筆者の言いたいことは、
「クイズとは人生である」
ということだというが、
それほどご大層なものではあるまい。

ただ、クイズプレーヤーの心理や
思考プロセス、
テクニックは面白かった。

映画「スラムドック$ミリオネア」(2008)を想起したのは、
私だけではあるまい。

第76回日本推理作家協会賞、
2023年度本屋大賞ノミネート作。

 



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