空飛ぶ自由人・2

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小説『パッキパキ北京』

2024年05月28日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

主人公の菖蒲(アヤメ)の夫は商社マンで、
北京で3年の間単身赴任中だったが、
中国になじめず、精神的に追いい詰められて
アヤメを北京に呼び寄せる。
アヤメは東京で自由な一人暮らしを満喫していたのだが、
しぶしぶ中国に渡る。
北京はまだコロナ禍の最中で、
過酷な隔離期間をクリアし、
アヤメの北京生活が始まる。
現地の高級料理からローカルフードまで食べまくり、
極寒の中、新春お祭り騒ぎ「春節」を味わう。

主人公のアヤメは究極の自己中女で、
元は銀座のホステス
離婚歴ありの20歳年上の夫をつかまえて、
高給取りの金づるとして、贅沢暮らしを堪能する。
夫は前の妻との間に一男一女がいるが、
アヤメとの間にも子供が欲しいというと、


別に子ども嫌いなわけじゃないけど、
単純になんで産まなきゃんけなんか分かんない。
身重にならず、身軽なまんまでいたい。

と考える。

アサハカでもいま身体が軽くて、
いま何でも好きなことができて、
いまとにかく楽しいのが私にとって最重要だから、
楽しいの数珠つなぎで人生終わればサイコーと思っている。

という感じ。

ブランド品が大好きで、
その理由は、「持ってると勝てるから」と言う。

とても共感できない主人公だが、
見どころ(読みどころ)は、
コロナ禍での中国人と中国社会の描写
規制が緩和穂された時期で、
毎日のPCR検査もなくなり、
お店や公共交通機関を利用するのに必要だった
健康カードも要らなくなった頃だが、
コロナの影響はまだそこかしこに存在している。

北京市内を歩いていると人の多さを実感し、
暮らしていると人件費の安さを実感する。
あらゆる場所の細かいところで人が働いている。
住宅が集まっている小区の入口や
マンションの前には必ず門番の人がいる。
マンションの中にも荷物を届けたりする管理人が
常に二人くらいロビーに立っている。
道路では掃除する人をしょっちゅう見かける。
バス一台につき、必ず一人、運転手の他に、
席が空いているのに立っている人を注意するための係員が乗っている。
部屋の掃除をしてくれる人も一人ではなく、
床掃除の人、ベッドメイキングの人、
水回りを洗う人の計三人がいつもセットで来てくれる。
日本だとこれだけたくさんの人を雇うのに
どれくらいのお金がかかるのだろうか? 
この人たちのおかげで家の中や店の中、
街の主要な道路は清潔な状態が保たれている。
しかしひとたび裏通りに入れば
割れた窓ガラスやサッシなどの大型ゴミが道の脇に捨てられ、
歩道もフンだらけで
ずっと下を見ていなければ、
踏まないではいられないほど転がっている。

どこの本屋に行っても雑誌が売っておらず、
雑誌があるのは大き目のコンビニと駅前のキオスクだけ、
というのも、初めて知った。
雑誌は「本」ではないらしい。

また、中国の新年(旧暦)を迎える前夜の音楽番組を観ていると、
若い男女の歌手はきれいだが不健康そうで、
対して中年の男女歌手は、
魔法が解けたかのように、
健康的に見えた、というのも興味深い。
老いを受け入れている分、
しっかり肉をつけたという印象だという。

他に、結論がもう出ているのに悩むのが不思議だとか、
銀メダルを獲得したのに、
金メダルを獲れなかったといって
悔し泣きしている人間はコスパ最悪だ、
などという面白い見解も散見する。

作者の綿矢りさを読むのは、
芥川賞を受賞した「蹴りたい背中」以来か。
印象はあまり変わっていない。

コロナ禍の中国の姿を活写した小説は、初めてではないか。
あまりにも北京の描写が詳細なので、
まさか自伝かと思ったが、
2022年12月から家族の都合で
約半年間中国北京市で暮らしていたのは事実らしい。
ただし、夫は20歳年上の金づるなどではなく、
2歳年下のキャリア国家公務員。
子どももちゃんと出産しているので、
主人公と作者を同一視してはいけない。

 



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