[映画紹介]
夜のニューヨーク。
ジョン・F ・ケネディ空港から一人の女性が定額タクシーに乗り込む。
女性はプログラマーで、
オクラハマの故郷の姉を訪ねての帰り。
姉は11歳離れており、性格が悪いという。
母は娘たちを残して家を出、
6歳の時に父親とも別れた。
父との別れの日の記憶は姉と食い違っている。
運転手はタクシー歴20年の中年男性。
2回の離婚歴があり、
人生の辛酸を味わい尽くしており、
女性がスマホでやり取りしている相手が
既婚者だと見抜く。
こうして、二人は、それぞれの人生を語っていく。
運転手と客の交流を描くのは、
「パリ タクシー」 (2022)と同趣旨だが、
「パリ タクシー」は回想を交えての展開。
しかし、本作は、
マンハッタンの女性の自宅まで
渋滞に巻き込まれながらの100分間、
徹頭徹尾、二人の会話だけで終始する。
脚本と監督は、劇作家でもある、
クリスティ・ホール。
会話劇はお手の物だ。
最初は舞台劇を想定していたらしい。
優れた脚本が世界中から集まる
“脚本家専門サイト”「ブラックリスト」で
第3位にランクイン。
ダコタ・ジョンソンの製作会社「ティータイム」が獲得し、
脚本家を長編初監督にした。
会話は、シニカルなジョークを交えながら、
車内という閉ざされた空間で交わされる2人の会話は、
次第に本質に触れて来る。
二度と会うことのない関係だからこそ、
お互いの本音を打ち明けていく二人。
最初はバックミラー越しのやり取りで交わされた会話も、
渋滞に嵌った時、
運転手が仕切りの窓を開け、
乗客の方を向いて語り出す。
困難な恋愛を抱えている女性は
次第に心を開いていく。
最後に、女性は誰にも言わなかった
オクラホマでの人生の秘密を運転手に明かす。
ラスト、運転手との別れの際に差し出された手を握らず、
彼の頬に触れる。
父親との別れの際の記憶、
不倫相手に父性を求めていたことが分かる。
女性を演ずるのは、
「フィフティ・シェイズ」シリーズのダコタ・ジョンソン。
美人。
製作も兼ねる。
運転手を演ずるのは、ショーン・ペン。
「ミスティック・リバー」(2003)、「ミルク」(2008)で
アカデミー賞受賞歴2回の名優。
友人でもある二人が
完全二人芝居に挑戦。
冒頭、空港の配車係が行先を訪ねる以外は、
ずっと車内の会話に終始。
時間進行と映画時間が一致するワンシチュエーション劇。
その意欲と志を買う。
ニューヨークの夜景が
ぼやけて窓の外に写り込むが、
観光的な描き方はしない。
5段階評価の「4」。
シネスイッチ銀座他で上映中。
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