このところ、
少々憂鬱な思いになっている。
例の市川家の、恐ろしい事件ですね。
何が恐ろしいかって、
両親をひきずりこんで、死なせた挙句、
自分は死なないで、
それまでの隠していた悪行が、
すべて曝け出された。
歌舞伎の名家を背負い、
懸命に表の姿を飾りつづけてきたが、
それもすべては水の泡となった。
どんな思いで生き続けていくのだろうかと思うと、
もう一度自殺を図ろうと思わないはずがない。
どういう地獄だろうかと推察する。
私が恐れるのは、
多くの人の恨みを買って、
その報いが今後に及んでいくこと。
心中すると言い聞かせて、死なせた両親は
今もなお、
地獄の魔界で死の苦しみに悶えている。
悪夢以外の何物でもない。
そのおのれの犯した悪業が、何度も何度も、
寝てさえいても消えることがない。
とても眠れるものではないだろう。
この地獄の責め苦を逃れる方法は、
今のところ、彼にとっては無い。
死をもってしても償うことはできないし、
忘れることもできない。
それらのことを思うとき、
私は深刻な思いにとらわれる。
それを思うと、憂鬱なのだ。