1155♦️♦️『自然と人間の歴史・世界篇』商品管理から社会システム管理へ(ビッグデータとAIと資本主義、社会主義の未来)

2021-09-04 22:41:01 | Weblog

1155♦️♦️『自然と人間の歴史・世界篇』商品管理から社会システム管理へ(ビッグデータとAIと資本主義、社会主義の未来)

 21世紀になってからは、情報管理技術の発展のテンポが一段と速くなっているのではないだろうか。日々の生活に身近なところでは、スーパーやコンビニエンス・ストアなとでの買い物で、POSシステムで顧客管理の網に入ったり、出たりする(注)。スマートホンを取り出して道先案内を頼むと人工衛星との関係で位置情報なりが、またアプリをダウンロードすると新型コロナ感染拡大の現在がわかるという、それら以外にも、さまざまな情報が個人に、家庭に、職場に、社会全般の中を相当分自由自在に飛びかっているようなのだ。

(注)

 POS(Point Of Sales、「販売時点情報管理」)というのは、物品販売の売上実績を単品単位で記録し集計する仕掛けを指し、「パソコンPOS」「POSレジスタ」などとして、様々な現場や事務所で使われている。現在はPOSと様々形で連携する周辺機器を通信回線共々ひっくるめ、総称して「POSシステム」と呼ぶこともある。お馴染みのPOSとしては、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア、アパレルショップ、ホテルなど、全国のあらゆる施設で導入されている。

 


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 そんな中から、ここではまず、私たちの買い物を取り仕切られているかのようなものに、今や、POSシステムの採用でいろんなことができるようになっていることがあろう。これを用いることにより、次に掲げるような管理・運営ができるという。

○売り上げ管理
 商品が「いつ」「何が売れたのか」「決済方法は何か」など売り上げに関する情報を管理し、データベースに記録。顧客リストがあれば、顧客ごとの売り上げも管理の可能性あり。
 なお、決済時にはレシートを発行する他、店舗によっては顧客ごとに、ポイントに応じて割引券やクーポン、チラシを発行したり。

○商品情報の管理
 商品コード、名称、単価など、商品情報をPOSシステムに登録できることから、売り上げが発生する前に商品のバーコードと情報をPOSシステムに記録することで、その商品がPOSシステムで扱えるようになる。これにより、商品やサービスが売れると、直ちに同システムの中にデータとして反映されよう。

 ○在庫管理

 これだと、売り上げ登録と同時に、在庫数を更新することで在庫情報を管理できる。リアルタイムで在庫状況がわかり、在庫が規定値以下に減ると自動的に発注依頼をするものも見てとれる。

○顧客管理
 商品を購入した顧客に関する情報を管理。顧客の年齢、性別、来店日時など顧客の行動を分析し、次回来店時の接客に活かすこと可能性。顧客の持っているポイントや、ポイントシステムに登録した個人情報を売り上げ情報と紐付けて管理することも可能。

○顧客管理
 データベースや在庫管理とも連動し、顧客毎に売り上げ管理。発注管理や商品企画などのマーケティング。複数店舗の管理や分析。売り上げジャーナルを参照・発行することが可能となろう。

○従業員や出入りの業者など関係者の労務管理、契約管理など

 こちらは、関係者に対して、より細やかな、それていて大胆な管理を行うことごできるようになってきているのではないだろうか。

 これらをまとめると、このシステムは、商品やサービスの金額を時間刻みに応じる形で計算(集計など)するだけでなく、多種多様な情報を蓄積できる。POSから取得したデータを商品別、時間帯別、顧客別などの切り口で分析することで、店舗や企業のマーケティングツールとして活用できる。それのみならず、仕入れ先や各種サポートを授受している他業者などとも通信回線で必要な情報をやりとりすることも、技術的には可能だ。

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 次に移ろう。社会主義国は、現在はぐんと少なくなってしまった。それでも、ただ手をこまねいているのではなく、社会主義市場経済を標榜している。例えば中国では、公有セクターにおいて、「改革・開放」の中、個々の工場、事務所などにかなりの権限が与えられていることではかなり分権化が進んでいるようである。

 ここで「分権化」とは、これからの展開としては、各事業主は、過去の販売データと現在の売り上げ状況を組み合わせ、人工知能(AI)がアルゴリズムにしたがって販売の予測モデルをつくる。

 その際には、各々の業界に対応する共有データベース(各種事業者が共同して運営するのが望ましく、各々はこれに通信回線によりつながっている)にアクセスして、必要な部品や役務などについての業界レベルの情報をもらい、自らの供給量と価格を決めるのに役立てる。
 なお、ここでアルゴリズムとは、何らかの問題を解決するための数学的計算手順(算法ともいう)であり、これで得られた手順をコンピュータに理解させるように記述したものがプログラムである。

 それでも、そうして得られた予測が需給の変化や錯誤などで正しくないとわかった瞬間には、それまでのモデルに変更を加える必要が出てくる。その時は、AIが見通しを修正し、公有セクターは価格を改めることにもなりうるのだろう。

 なお、重要な物資・サービスについて、政府がそれらの企業に価格を示達するのはあり得て、その場合でも、市場メカニズムによる価格形成を否定するのてはなく、当該価格の上限と下限に留めるべきだろう。厳しめの誘導が必要な局面では、その幅を適宜調整すれば普通は足りると考える。参考までに、資本主義経済下のアメリカでは、1971年7月に金とドルと交換停止政策を打ち出した際時、賃金と物価の90日間凍結命令が出されたことがある。

 これだと、価格は過去の慣習や、業界内の暗黙の了解で決められるのではなくて、その時々の需給に応じて変化するものとなり、価格を決める過程が科学的で明快なものに近づけることが、これまで以上にできるのではないだろうか。

 顧みると、ソ連時代のゴスプラン(国家計画委員会)は、国の膨大な経済情報に収集と一元的処理を担う前提にて生産・供給計画を策定していた。しかし、短時間で多数の商品に関する生産情報(それに要する部材を含む)や消費者の多様なニーズを集めたり、それを分析、そして処理することでは、1970年代からは次第に遅れをとるように成り変わっていた。

 
 なお、国家の中央当局が出てくるのは、そのことが必要な状況、それには例えば、供給の隘路、競争激化による価格暴落や、カルテル結成による価格操作など、もっと大きく国民経済に好ましくない状況が起きている時などが考えられよう。

 それというのも、一方で、地方及び中央には格段ごとに記された経済発展計画があって、それぞれに見合った形で社会主義原則による管理が行われている。このうち後者には、最近は多分に民間のIT大手への独占禁止法絡みの規制が含まれよう。
 中でも、国家統計当局が総供給と総需要を把握するということでは、ビッグデータの、通信技術を用いての収集と分析は、計画経済を効率的に運営することでは、現状と比べると、大幅な前進の可能性を与える可能性が込められているのではないだろうか。

 なぜなら、一口に市場を使って国家・公共計画サイド(分権的な社会主義経済システムが前提)が、必要な情報を試行錯誤的に手にいれようとしても(注)、そうこうやりとりしている間にも市場での状況は変化していく、中には思わぬ展開で大幅な変化が生じることもありえよう。

(注)ちなみに、経済学者のオスカー・ランゲは、1936年の論文「社会主義の経済理論」の中で、完全競争経済を前提に、「効率的な資源配分をもたらす価格は、所有権の私有公有を問わず存在し、政府は試行錯誤なの末にその価格を探り当て、効率的な資源配分を実現する」とした。

 もしそうなれば、かつての社会主義計算論争などをわざわざ経由することなく、かつ、かつてソ連が取り組んでいたようなコンピューター管理による一極集中とは抜本的に異なる社会主義経済運営が可能になる、その下地が生まれるのではないかと期待されるのである(なお、ソ連での経験としては、さしあたり、当時のソ連の計画担当者の筆になる、日本語訳「コンピューターと社会主義」岩波新書を薦めたい)。


 (続く)

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