追記 1981年のジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラングの作品をNetflixで改めて観た。驚いたことにほとんどの細部を忘れている。そしてなんとエロい映画なんだと改めておもい知った。ジェシカ・ラングの匂いたつ色気とジャック・ニコルソンの悪の魅力に圧倒される。
初稿
今回帰国中にルキノ・ビスコンティ―の作品を7本連続してみた。貴族出身でバイセクシュアルの監督ビスコンティ―が描いた世界が見えて . . . 本文を読む
Netflix 「罠の戦争」一介の大臣秘書が息子の事件をきっかけにその犯人を探すためにひょんな事で国会議員になってしまう。息子を傷つけた犯人探しに熱中するうちに首相補佐官になり、本来の息子を傷つけた犯人探しを口実に権力を追い求め、そんな自己を正当化して全く顧みない男になる。
「弱い人を助けるためには力がいる」と権力を追い求めているうちにどんどん権力欲が肥大していく人間の恐ろしさを実に上手に描いて . . . 本文を読む
あざといといっちゃあざとい。まんまと泣かされる。でもいいじゃないか、キッチリ涙腺が緩むのは良く出来た映画の証拠だ。
不器用な男親が幼児を育てる筋だてだけで身につまされてしまう。
阿部寛が広島の粗野な男ぶりで好演しているがあまりに男ぶりが良すぎるのが玉に瑕か。
もうちょっと情けない風貌が演じられる役者だともっと良いのだろう。砂の器の親父役は極端すぎるが、さてだれがいいのかな。
それにしても身 . . . 本文を読む
第18作『男はつらいよ寅次郎純情詩集
綾(京マチ子)は晩年には不治の病に冒され亡くなる。マドンナが劇中で亡くなる唯一の作品だ。綾(京マチ子)はクリスチャンの設定なので教会で葬儀が行われる。
その場にはなんと御前様の姿が映し出され御前様はなんのこだわりもなく讃美歌を歌っている。御前様は帝釈天の住職で日蓮宗だがそんなことは全くお構いなしに参列して讃美歌を歌っている。
御前様は日蓮宗だが次のような . . . 本文を読む
人生は虚しいなと考えたことのない人はいないのではないか。頭をよぎることはあっても意思的に振り払っている人も多いだろう。わたしなども長い間生きてくると時折虚しいなと思うことがある。こういう時にどう対処していけば良いのかを寅さんは教えてくれる。
早くも人生に虚しさを感じ始めている思春期の満男に寅さんがさりげなく答える言葉は胸を打つ。
満男:伯父さん、人間てさ、 何のために生きてんのか . . . 本文を読む
「しょせん、この世は色と欲」井原西鶴 人間の持つこのような無明の自覚と自未得度先度他でありたいとの祈りの両岸からこの世の真っ当な生き方が仄見える。寅さんは我々を笑い転がしながらこのことを耳元でそっと教えてくれる。決して説教することなく。
この寅さんは最も克服することの難しい煩悩である性欲を完全にコントロールしている。あるいは相手に対する責任感や自らの生い立ちから完全に性欲が制御できる。天然に . . . 本文を読む
第39作 男はつらいよ 寅次郎物語より 寅さんにそこはかと二重写しになるホトケ様像はこの全シリーズを通しての白眉かも。
寅さんは哀れな孤児寸前の秀吉を助ける旅に出て母親を見つけ出す。いつもは寅さんに困ったを連発する御前様もこの時は寅をホトケの化身と思う。寅を褒めるのは全作品中でこの時だけだが、褒め方がすごい。日本仏教の本質をついた褒め方だ。
源ちゃんは愚者以前とされているのもおかしい。「善人な . . . 本文を読む
ドラマ「エルピス」をNetflixで見た。個々のストーリーは全く違うがしかし見るものに今起きている木原副長官妻元夫不審死事件を思い浮かべさせる力を持っている作品だ。長澤まさみの魅力で見せる。久しぶりにNetflixを夜中の2時まで一気見してしまった。
この作品は「マスコミはなぜ木原副長官妻元夫不審死事件を取り上げないのか」に一つの示唆を与えてくれる。
誤解のないように書いておくが事件そのものは . . . 本文を読む
ルーカス・クラナッハの作品を追っていたら偶然見つけたこの絵、絵画でここまで感情を描けるものかと感心してしまった。同時に当時のプロテスタント派の実に巧妙なイメージ戦略だとも。
ルーカス・クラナッハ父は私の大好きなデューラーと並ぶドイツルネサンスの巨匠で大規模工房を経営し多くの作品を印刷のように作り出した画家だ。多くの弟子に作らせて仕上げだけということなのだろう。
巨万の富を得たという大金持ち . . . 本文を読む
森村誠一逝去の報に接して
「母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね」
次の「麦藁帽子」西条八十からとったと森村誠一は書いている。
母と子の愛のバリエーションはひと筋縄では行かない、どうしようもない運命の波に攫われるとある瞬間から子よりも現実の我が身が大事になるのも現実だろう、
戦後の動乱期に育った我が幼い日に目の前にそこここにあった身につまされる物語だ。
「麦藁帽子」 . . . 本文を読む
先週神奈川文学館で小津安二郎展を見てきた影響を受けてNetflixで「秋刀魚の味」を観た。この映画が作られたのが1962年だから15歳の時か、まあこんな映画みるわけないよなと思いながらどんどん引き込まれていく。
笠智衆や岡田茉莉子、岩下志麻というキャスティングでは面白くない訳が無い、そんな感じにさせられる滋味の溢れる映画だった。老いた父と嫁に行く娘は永遠のテーマでいわば鉄板ものだなと思いつつもや . . . 本文を読む