まさおレポート

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ルキノ・ビスコンティ―作品 美と官能は退廃と背徳によって輝きを増す

2024-03-08 | 映画 絵画・写真作品含む

追記 1981年のジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラングの作品をNetflixで改めて観た。驚いたことにほとんどの細部を忘れている。そしてなんとエロい映画なんだと改めておもい知った。ジェシカ・ラングの匂いたつ色気とジャック・ニコルソンの悪の魅力に圧倒される。


初稿

今回帰国中にルキノ・ビスコンティ―の作品を7本連続してみた。貴族出身でバイセクシュアルの監督ビスコンティ―が描いた世界が見えてきた。美と官能は退廃と背徳によって輝きを増すが、しかし滅びによって罰をうけなくては完結しない、と物語っている。オペラの国のイタリア人らしい。「揺れる大地」や「ベリッシマ」は上のくくりには入らないが。これは彼が共産党時代の主義思想の色濃くでたものであって、他の後期の作品がやはり彼の本質が出ているのだろう。


「郵便配達は2度ベルを鳴らす」・・・オリジナルはThe Postman Always Rings Twiceで、1934年に発表されたジェームス・ケインの小説だという。ビスコンティ―はossesioneという題をつけてイタリアを舞台に作品を作った。この映画には郵便配達が出てこないので題名との関係が前から疑問であったが、元々ケインの原作も郵便配達が登場しないという。1981年のジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラングの作品も見ているが、ビスコンティ―版は流れ者と酒場の女との出会いを穏やかに描いている。ジャック・ニコルソン版は米国作品らしく過激に作ってある。ビスコンティ―版はモノカラーで、地味な俳優(マッシモ・ジロッティ 夏の嵐の中尉役 とクララ・カラマイ)を使い、イタリア語の響きと相まって、それらが一層悲愴感や田舎町の倦怠感、人々の体臭まで感じさせる。


「夏の嵐」・・・1866年イタリア・オーストリア戦争を舞台にリビア伯爵夫人(アリダ・バッリ)とマーラー中尉(ファーリー・グレンジャー)の物語で、中尉は戯れに伯爵夫人に近づき本気になった伯爵夫人を手玉に取るが最後は逃亡罪で銃殺される。筋の奥に「郵便配達は2度ベルを鳴らす」と似た悲劇の本質が見えてくる。


「白夜」・・・映画に入り込めなかったのでパス。


「揺れる大地」・・・シチリア島の貧しい漁村を舞台に、仲買人の搾取を描く。共産党のプロパガンダ用ドキュメンタリーとして制作されたという。重すぎて楽しめない。


「ベリッシマ」・・・庶民の銀幕スターへの願望とその華やかな世界の虚飾性とのずれを描く。オーディションを受ける女の子が最終審査で泣き出し、それを監督が好意的に笑うという、気にしなければなんでもないささいな出来事に焦点をあてて、感覚のずれを描き出すが、出来事が些細すぎて、母親が辞退するまで怒るほどのことか、ピンとこないがむしろそのあいまいなところが監督の描きたかった点かもしれない。


「家族の肖像」・・・孤独で静かな老教授(バート・ランカスター)の生活が、いきなりそれまでの生活と全く縁のない人々(シルバーナ・マンガーノ ヘルムート・バーガー)に突然乱されていく様子を描く。豪華な書斎を舞台に豪華な出演者たちが繰り広げる想定外の出来事の顛末を描く。老教授はハチャメチャだがどこか純粋なコンラッド(ヘルムート・バーガー)を当初は迷惑がり、やがて好きになるが、結末は予想通りコンラッドと老教授の死で終わる。


「ベニスに死す」・・・神経を病んだ老作曲家がベニスでタッジオに出会い、心奪われる。ペストが流行りだすがタッジオのためにベニスを去ることができない。やがてペストに感染して死ぬ。


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