ルーカス・クラナッハの作品を追っていたら偶然見つけたこの絵、絵画でここまで感情を描けるものかと感心してしまった。同時に当時のプロテスタント派の実に巧妙なイメージ戦略だとも。
ルーカス・クラナッハ父は私の大好きなデューラーと並ぶドイツルネサンスの巨匠で大規模工房を経営し多くの作品を印刷のように作り出した画家だ。多くの弟子に作らせて仕上げだけということなのだろう。
巨万の富を得たという大金持ちであり、その点から言えばルターに攻撃される側のようにも思うがルーカス・クラナッハ父はちゃっかりデューラーと並ぶルター派の賛同者でもある。
「不釣り合いな男女」の作品は多数作っている。時の富豪に人気があって人気のあるテーマだったのだろう。
そう思ってみるせいかルーカス・クラナッハ父はデューラーやラファエロに比べて少し品がない。だから上手なのだがあまり好きではない。だからこそ人間の欲望の醜い面をここまで風刺的に描けたとも言える。
同時にデューラーと並ぶルター派の賛同者でもある。ルターはプロテスタントでカソリックの免罪符販売などの腐敗を攻撃するためにこうした絵を多作したのかも知れない。おそらく50も歳の離れた教会の教皇などが若い女を金で買うと云う行為がカソリック教会トップに蔓延していてそれを腐敗の象徴イメージにしたのだろう。市民の最も反感を買う行為によく着目している。
イメージ戦略としては最高のできだ。若い女は男の財布に手を突っ込んでいる。