
第39作 男はつらいよ 寅次郎物語より 寅さんにそこはかと二重写しになるホトケ様像はこの全シリーズを通しての白眉かも。
寅さんは哀れな孤児寸前の秀吉を助ける旅に出て母親を見つけ出す。いつもは寅さんに困ったを連発する御前様もこの時は寅をホトケの化身と思う。寅を褒めるのは全作品中でこの時だけだが、褒め方がすごい。日本仏教の本質をついた褒め方だ。
源ちゃんは愚者以前とされているのもおかしい。「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」の論法でいくと愚者は往生の分類では漏れてしまうが実は最も往生に近い。愚者以前はどこに分類されるのか興味深い。
山田洋次はこの作品でベタではない仏の話を笑いと涙で包んで語りたかったのではと思いたくなるほどだ。
御前様:よかった ほんとによかった
仏様が寅の姿を借りてその子を助けられたのでしょうな
さくら:まあ もったいない 兄みたいな人間が仏様だなんて ふふふ バチが当たりますよ御前様
御前様:いやそんなことはない 仏様は愚者を愛しておられます もしかしたら私のような中途半端な坊主より寅のほうをお好きじゃないかと そう思うことがありますよ さくらさん
さくら:恐れ入ります
御前様:(源ちゃんを指して)あれは愚者以前です 困った