まさおレポート

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ヒューマニズムについてのメモ(空論とカラマーゾフの兄弟から)

2018-06-21 | 小説 カラマーゾフの兄弟

立川武蔵は「空の思想史」の中で、富の蓄積を是とする背景にヒューマニズムという語があることを指摘する。これはプロテスタントが富の蓄積を是とする背景になっていることと結果として同じことを述べているのだが、その思考経路はおそらく異なるのだろう。

それはさて置き、このヒューマニズムという言葉に我々は無条件にポジティブな意味を与えている。あの人は温かい人だというときにヒューマンな人だと言ってみたり、それはヒューマニズムに反すると言ってみたりする。しかしこのヒューマニズムという言葉は結構ネガティブな意味合いも持っている。

ヒューマニズムという語は、よき人間性の発露という意味にも用いられるが、人間のすることは何でも許されるという考え方をも指している。・・・この悪しき人間主義の根はキリスト教にあると思われる。 立川武蔵「空の思想史」p320

これは立川武蔵が仏教学者であり、特に草木成仏の観点からヒューマニズムつまり人間ファーストの世界観を批判しているのだが、ドストエフスキーも『カラマーゾフの兄弟』でイワンに「神がいなければすべては許される」と言わせている。このイワンの思想もヒューマニズムそのものだ。

ヒューマニズムは神の呪縛から離れる強力な武器となる思想なのだが両刃の剣としてのデメリットも持っている。ドストエフスキーも『カラマーゾフの兄弟』でイワンをヒューマニズムの故に狂死(おそらく)させ、その思想の危険性を体現させている。

 ゲーテも次の言葉でヒューマニズムつまり悟性に警鐘を鳴らし心情の大切さを述べている。

真の確信は闇から生ずるものです。悟性はもちろん多くのものを洞察し決定しますが、決して正しい点を射ぬくことはないのに対して、良心の本来の住み家である心情は悟性よりも遥か
に確実に許すべきものと許すべからざるものとを判断します。


ヒューマニズムつまり悟性に対して無意識の重要さを村上春樹は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」で強調している。

 


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