まさおレポート

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NTT法の功罪を通信事業史で振り返る 3 中国の脅威がNTT法廃止の後押しをしている。

2023-09-29 | 通信事業 NTT法廃止と課題

基本的にNTT法存続でNTT技術の情報開示を迫るのは米中摩擦からも日本の国益からも無理なご時世になっている。だから廃止でいいのだが少し深掘りして考えなければならない点もある。


NTT法第3条 会社及び地域会社は、それぞれその事業を営むに当たつては、常に経営が適正かつ効率的に行われるように配意し、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与するとともに、今後の社会経済の進展に果たすべき電気通信の役割の重要性にかんがみ、電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普及を通じて我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与し、もつて公共の福祉の増進に資するよう努めなければならない。


NTTには「あまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供」に加えて世界最高水準の研究開発力の推進及びその成果の普及という2大目標達成に極めて大きな期待がかかっていた。NTT法第3条に2大目標としてうたいあげているのは並大抵のことではない。

1985年のNTT会社法以来一貫して、世界トップレベルの日本の通信技術水準維持と普及が会社の主目的であると宣言している。そして世界トップ水準の維持を妨げるような結果になるNTT経営形体は絶対に避けなければならないとの主張が明確に盛り込まれている。1985年の時点で会社法草案作成者は普及という周到なNTT経営形体を防御する条文を仕組んでいたことになる。

中曽根康弘著の「自省録」でも「研究所もその優秀さは世界トップレベルなのだから、これもそのまま維持する。」とあり、当時の政権もこの意識を強く持っていたことがわかる。

1980年まで日本の半導体などハイテク産業が躍進した原動力は電電公社による疑似的軍産複合体によるものだったと当時の政権も識者も考えていた。だから民営化は促進だがハイテク産業の総本山の力を削ぐことは非常に恐れた。

そのためにわざわざ日本電信電話株式会社法の第一条に目的として書き入れたのだ。


第一条 日本電信電話株式会社(以下「会社」という。)は、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社がそれぞれ発行する株式の総数を保有し、これらの株式会社による適切かつ安定的な電気通信役務の提供の確保を図ること並びに電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うことを目的とする株式会社とする。


要は民営化させる代わりに研究開発力の推進及びその成果の普及という担保をとったのだ。しかし世界情勢は大きく変わり成果の普及などと言っていては極めて危険な状況になったので急遽成果の普及の大元であるNTT法を廃止しようとの動きが活発化したのだ。

中国の脅威がNTT法廃止の後押しをしている。


NTTの公表されている研究開発実績つまり研究開発力の推進及びその成果の普及が中国の脅威の対象になるものかは今ひとつよくわからなかったがしかしIOWN構想はそのような疑念を吹き飛ばしてしまうただならぬ凄みを帯びた様相を呈している。

NTT先端技術総合研究所のIOWNは日本の国運をも左右するほどの水準になりそうだ。NTT法は研究開発力の推進及びその成果の普及を担保するものだったが今やその担保が足枷になっている時代に入った。この法は実に数奇な運命を辿っている

 

平成テレコム讃歌 眞藤 稲盛 孫の系譜
 
宮本正男
 

 

 


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