猫のミルバが死んで１５年になる
かつて共に暮らした猫のミルバが死んで１５年になる。
親とはぐれた生後一月の子猫を温めるだけにしようと一晩泊めた。
それが間違いだった、一晩でその魅力に家族が手放せなくなった。
まもなく猫エイズと診断されて１３年生き、今頃の季節にひっそりと死んだ。
会社から帰宅すると押し入れの寝床で瞳を見開いて固くなっていた。
瞳から苦痛と恐怖は無かった。
「生けるものがこの世に遺せる最後のものは、いまわの際まで生き切るというそのプライドなのではないか」長田弘「三匹の死んだ猫」
を読みながら冥福を祈っている。
長田弘「三匹の死んだ猫」抜粋
三匹の猫が死んだ
一年に一匹ずつ、順に死んだ。
二十年、三匹の猫と、ともに暮らした。
中略
二匹目の猫は、毅然として死んだ。
最後まで四本の脚で立ち上がろうとし、
できなくなって、はじめて、
崩れおちるようにして、死んでいった。
三匹目の猫は、静かに死んだ。
中略
自分で横になって、目を瞑って死んだ。
この世に生まれたものは、死ななければならない。
中略
生けるものがこの世に遺せる
最後のものは、いまわの際まで生き切るという
そのプライドなのではないか。
雨を聴きながら、夜、この詩を認めて
今日、ひとが、プライドを失わずに、
死んでゆくことの難しさについて考えている。
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